第十九話 雑魚VS獣人&エルフ
第二回戦予選初日。
遠矢は予定の時間よりもかなり早くコロシアムに入ると、そこにはすでに見物人が何名かおり、平だったステージに多くの柱状の仕切りが立てられていた。
皆が遠矢の四角柱のテントを見て真似をしたのだ。
しかしそれも遠矢の考え通り。いや、他の輝天祭参加者の行動などどうでも良く、対戦相手のグルガとラフラースが同じように仕切りを作ったことが重要だった。
後ろで黙って控えているりりあの姿を見て、遠矢は満足そうに笑みを浮かべてステージに上がり自分に割り振られた数字の前に座り時が過ぎるのを待つ。
これからどうなるのか。それを想像していれば時間はすぐに過ぎて行った。
様々な想定をしていると誰かが前に立った気がして、遠矢が顔を上げれば狼のような顔をした厳つい獣人と、すらりとした体格に綺麗で白い肌のエルフがいた。
「あー。初めまして。グルガさんとラフラースさんですよね? 天城遠矢と後ろにいるのが悪魔のりりあです。お手柔らかにお願いします」
よいしょと立ち上がり、遠矢は手を差し出す。
「……これがあの竜人を倒したやつなのか?」
「グルガ、見た目で侮るのは止めなさい。失礼しました、私はラフラース、こちらはグルガ。互いに全力を尽くしましょう」
差し出された手を見てグルガはついそう漏らした。何せその手は綺麗で武器を扱った時に出来るタコはなく非常に柔らかそうだった。魔法を主に使っているのであれば、それはそれで何かが残るもの。
そのため疑わしそうに遠矢を見るグルガをラフラースは頭を叩いて制し、遠矢の手を握る。
どんな手をしていようが、どんな姿をしていようが竜人を倒したのは事実。侮って良い理由にはならない。
そんな警戒感が伝わってきて、遠矢は笑いそうになるのを必死にこらえる。
遠矢はもう全力を尽くした。まだやれることはあるが、別に出来なくても大勢に影響はない。
「あー、集まったかニャ。毎日これをやるのは面倒ニャが仕方ニャー。……何で天幕がこんなにあるニャ? まあ良いニャ。それでは第二回戦初日を始めるニャ。ペアと手を繋ぎ持ち込む荷物にも触れて置くニャ。でないとバラバラの場所に転移されるニャよ。……準備は出来たニャ。それでは、第二回戦初日。始めニャ!」
周りが布越しに持ち込む道具に触れているのを見て、遠矢も真似するように左手で四角柱に触れて右手でペアのりりあに触れている振りをする。
そして猫の開始の合図と共に目の前が暗くなり、すぐに明るくなったと思えば周りはコロシアムからどこかの森へと変わっていた。
「まあ、当たりだな」
火山や雪原など遠矢が想定していた環境の中で大分マシ。動くのにも待機するのにもこの環境なら過ごしやすい。
これで遠矢の役目はほぼ終わった。遠矢のすぐ後ろにいたはずのりりあの姿はなく、布を取り払った四角柱の中身も空。
遠矢が持ち込んだのは最初から持っていた僅かな食料と水のみ。
「……程良い丘があるな。早く見つけてくれよ」
退屈、とばかりに遠矢は大きく欠伸をして見渡しの良さそうな丘へと向かった。
「森か。これはかなり運が良いな」
「ええ。相手がどんな環境が得意なのか知りませんが、ここなら全力で戦えます」
転移された場所が森だと分かり、グルガもラフラースも一気にやる気に満ちた。
大森林に住み、そこで戦うことに特化した二人。得意な環境で戦うのであれば相手がだれであろうと負けない自信がある。
「まずは荷物を隠しましょう。森の中でそれは目立ちますからね」
「そうだな。洞窟や、でかい木のうろとかが良いか。ラフラース、頼めるか」
任せなさい、と言うとラフラースは弓を構え、天高く矢を放つ。
「風探!」
高く飛んだ矢は途中で大きな音を放って弾け、矢じりが粉となってキラキラと光りながら地に落ちる。
「……見つけました。洞窟が、近くにあります。かなり大きいと思います。運が良い。あちらです。グルガ、運ぶのは任せますよ」
「便利だよな。その風に周囲の地形を探らせる奴。人の形だって分かるんだろう。良くこんな種族と戦えていたもん、だっと!」
グルガは荷物の下に敷いておいた分厚い木の板を持ち上げることで、大小さまざまな木の箱を一気に持ち上げてラフラースに指示された方向に運ぶ。
「その力の方が脅威だと思いますけどねえ。荷物を隠したら探しに行きますよ。すぐに見つけますけど、決して油断しないでください」
相手は竜人を手早く倒した相手。更に一回戦に勝っているのでポイントに余裕があり、荷物を隠すことをすぐに考え付く程度の頭はある。
ラフラースは遠矢とりりあのペアを自分たち以上の強者と考えて挑む。
そして。
「ぐえっ!」
簡単に、本当に簡単に遠矢を見つけて、捕縛した。




