第十一話 雑魚の目標
遠矢が自エリアに戻ると、そこにはすでにグミのようなものを食べているりりあがいた。
「トーヤ、遅い。りりあはちゃんとポイントの獲得方法を調べたのに!」
「そうか。お疲れ様。それは知りたいがその前に教えてほしい。そのグミは誰かから貰ったのか?」
りりあがグミを食べている。しかし遠矢はグミを買った覚えはないし、メッセージも来ていない。ならばりりあが誰かから貰ったのが妥当と考えたが。
「ふっふっふ……。これはりりあが自分で購入したんだよ! ポイントは少しだからあんまり買えなかったけどね」
そう言ってりりあは遠矢にグミの入った瓶を見せつけてきた。
赤や黒、紫など重く暗いばかりのグミを見て遠矢の食欲が一瞬で失せた。
ただりりあが遠矢に知られずにグミを購入できたことは非常に重要なこと。念のために遠矢は腕輪のポイントが減っていないことを確認しようとしたら、右上にあったポイント表示が二つに増えていた。
「……上のは、今までのと同じか。となると下の少ないポイントはりりあ用か?」
「その通り! ダンジョンって魔物以外にも使えるアイテムが出るんだって。でも絶対に使えるアイテムってわけじゃなくて。翼があるのに空を飛べるアイテムを貰っても困るでしょう? そういうアイテムをね、ダンジョンから帰る人がたまにその場に捨てていくから、それを集めて不要アイテム処理に持って行って百ポイントゲット。そうやってりりあが一人で手に入れたポイントは全部りりあのになるってわけ。凄いでしょ」
悪魔王の娘が、つり銭口を漁るかのような行為に胸を張って言う姿に逞しいと思いつつポイントの移動などは出来るのかなどを確認。
結果としてりりあにポイントを与えることできても、りりあのポイントを貰うことは出来なかった。
「なるほど。それでその悪ガキ……じゃない。回収業者の真似以外にどんなポイントの獲得方法があった?」
「いくつかあったよ。商業エリアで店を出す。これはそもそも店を借りるポイントがないから無理。野試合でポイントを賭けて戦う。勝てるはずがないから無理。公式戦で勝つ。ファイトマネーって奴? 勝ったら百万ポイント。勝てないから意味ないけど。他の人からポイントを恵んでもらう。出来るかもしれないけど、したくはないね。そして最後、これが一番ポイントを稼げると思う。それはコロシアムで誰が勝つかを予想する! つまりギャンブル。コロシアムでシャッターが閉まっていた場所があったでしょ。そこで公式戦で誰が勝つか予想して賭ける場所があるんだって! トーヤはコロシアムに行ったんでしょう? 見てないの?」
遠矢がコロシアムに行ったのは朝で、その時はまだシャッターで閉ざされていた。その後は一回戦の様子を見て、アラミタマたちと話をしていて帰る時もそこを見ずに帰ってきた。
輝天祭参加者を賭けの対象にするとは、と運営の肝の座り方に驚く遠矢だがコロシアムなどは元々娯楽施設。そんな所があってもおかしくはないと納得し。
「…………?」
「どうしたんです、トーヤ?」
「いや、何でもない。それを利用するなら参加者たちがどんな理由で英雄になったのかを探れば勝ちやすいだろうな。今日見て来た限りでは戦闘に優れた英雄もいれば、戦闘ではない方法で英雄になった者もいたからな」
「おお、流石トーヤ。りりあは対戦相手に賭ければ良くね、としか考えてなかった。りりあたちが勝てるわけないんだしねー」
その通り、と遠矢はりりあの言葉に頷く。
勝てるはずがない。砦に単身で挑み、防衛兵器を弾き、圧倒して勝つような化け物の英雄に。おそらく、その化け物の英雄側にいるリザ・クローケンに。
だからこそ、遠矢は何故と考えてしまう。
何故自分を選んだのか。それにディックのような戦闘向きではない英雄を集めたのか。もっと戦闘向きなのは多くいるのではないか。
選ぶ。それが出来るとすれば誰か。遠矢は考え、輝天祭に関わる最も古い記憶に答えを見出した。
「りりあ、お前は輝天祭の受付、で合っているのか? あの空間で何に出会った」
「はい? あそこでですか? 邪神像ですけど、それが何か?」
その答えは遠矢が欲した答え以上に、遠矢の望みを叶える答えだった。
見出した可能性に遠矢は意識の全てを思考に回し、それを邪魔するかのようにりりあが遠矢の顔の前で手を振る。
「……トーヤ? 頭が壊れちゃった? まあ、性格と人格が腐ってましたから仕方ないか」
「失礼な。……りりあ、俺は勝ち組が嫌いだ。あいつらの養分と化すのは断固として避けたい」
「リザ・クローケンのこと? まありりあも個人的に言えばあの性格は好きでじゃないけど。無理、勝てるわけない」
勿論そんなことは遠矢だって分かっている。リザ・クローケンは強いだろう。戦って勝てる相手ではない。百回戦っても百回とも手も足も出ずに負けると。
しかしならば、と勝ち組を汚泥に引きずり落とすために遠矢の頭は全く別の答えを見出す。
「ああ、勝てない。それに勝っても、リザが他の戦いに全勝し、本選出場して優勝されてしまうと勝っても無意味。優勝を阻止しなければならず、優勝を阻止するためには、なあ」
「……優勝する気? トーヤ、自分とりりあの弱さを侮ってない? 何をしたって無理だよ?」
「ああ、分かっている。そもそも俺たちは強い、弱いを語れる土俵にいないってことも。だが少し試したいことがある。その前に運営事務所に行って聞かなければならないことがある。帰ってくるまでにりりあが優勝したいかどうかだけは決めてくれ。かなり無謀なことをする。無謀なことに付き合いたくないなら、そう言って欲しい。俺一人でやる」
「りりあは無謀なことは嫌い。でもね、優勝すれば父に怒られないってことでしょ。むしろ褒められちゃう。怒られず、むしろ褒められる可能性がほんの少しでもあるなら、多少の無謀ならりりあは付き合うよ」
悩むまでもない、とりりあは遠矢の問いにすぐに答えた。
遠矢は勝ち組の足を引っ張り汚泥に引きずり落とすため。
りりあは父に怒られないため。
完全な私欲私情ではあったが、二人は同じ目標を目指す。
その日、本当の意味で遠矢とりりあはペアとなった。




