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村長と仲良くなったぞ。やれやれ。

「うう……これじゃあ足りないかも……」


 メイは暫く銅貨を数えていたが、やがて頭を抱えながらため息をついた。


 俺が拾いに行くことも考えたが、もう一度あの場所に辿り着ける保証もない。何より、俺とて今はあそこにあまり近づきたくはない。


「しょうがない……暫く借りるかあー」


 メイは諦めたように首を振る。なるほど、その手があったか。流石は田舎、横のつながりってやつだな。


 *


 村長の家はメイの家から数分程度歩いたご近所さんだった。

 敷地はメイの家の倍以上あり、決して大きくはないが村の中ではマシな方だろう。


「村長ー? いるー?」


 戸をノックして声を掛けると、中から人の良さそうな男が出迎えてくれた。歳は60くらいだろうか。白髪で顔にはしっかりと皺が刻まれているが、体格は良く足腰もしっかりしており、前世の俺よりも余程頑健そうである。


「おー、メイ。珍しいな。どうした? こんな真っ昼間に……って、うわっ!? なんだそいつは!」


 足元で蠢くスライムを見て村長が小さく跳ねる。


「この子はぷに太郎よ。私のペットなの。さ、ぷに太郎、挨拶なさい」


 それを見たメイはなぜか少し得意げだ。


 俺は男を刺激しないように少し距離を取って上下に動く。初めましてだぞ、やれやれ。


「お、おう……よろしくな……」


 村長は俺に釣られたのか、スライムにもきちんと頭を下げる。律儀なやつだ。いい奴そうで安心したぞ、やれやれ。


「そんな事より村長、今日はちょっと報告とお願いがあってきたんだけど……」


「なんだ、改まって。まあ、立ち話もなんだし入れよ。そこのスライム……は、うーんと」


「ぷに太郎、おいで」


 メイが手を広げると胸に飛び込む。飼い慣らされてるから安心だぞ、やれやれ。


「お邪魔しまーす♡」


「えっ、あっ……」


 呆気に取られる村長の返事を待たず、メイは堂々と戸をくぐった。悪いな。おっさんがスライムアレルギーじゃなければ良いが。


 メイは昨日あった事を村長に、知っている限りで事細かに報告した。俺はゴブリンの事はあまり知られて欲しくなかったが、こればかりは仕方ない。


 幸い、村長の関心はゴブリンより男の方に向いていた。


「成程……男は確かに催眠魔法《ヒュプノ》と言ったんだな。そうか、分かった。その男の事はこっちで対処しよう」


 村長の話によると精神魔法は生まれつきの素質がないと難しく、使い手は限られるらしい。話の比重から察すると、俺は昨日相当ヤバい相手と戦っていたみたいだ。そりゃそうだ、あんなのがポンポン居たら堪ったもんじゃない。


「それにしても、メイはよく無事だったな」


 村長は茶を啜ると、神妙な面持ちで息を吐いた。


「……この子のお陰だよ。多分、追い払ってくれたの」


 膝の上の俺をポンポンと叩きながら、メイの顔が緩む。なんだ、今日はやけに可愛いじゃないか。やれやれ。


「はっはっはっ、なんだこのスライム。褒められて照れてるんじゃないか。こいつは見れば見るほど面白いな」


 膝の上で蕩けた俺を見ておっさんが笑う。気に入ってくれて何よりだぞ。


「鎌については俺のお古で良かったらやるよ。報告のお礼と、無事に帰ってきたお祝いだ。飯も食ってないんだろ? 大したもんはないけど今日はウチで食ってけ」


「本当!? いいの!? やったー、村長大好きー♡」


 メイが村長に飛びつく。村長もデレデレして、まるで孫でも見る目だ。分かるぞ、何となく放って置けないんだよな。まったくお互い大変だな。


 そして、メイ。

 やはり俺はお前の将来が心配だぞ。やれやれ。


      *


 久しぶりに賑やかな食事だった。


 村長の家で出された料理は粥や漬物など、質素なものではあったが、俺の考える食事のイメージの範疇だった。


 やはり、メイの食生活の改善は必須だろう。この細い身体じゃ、万一病気でもしたら耐えられないかもしれない。


「ぷに太郎、ジャンプ!!」


 ご主人様からお声がかかる。やれやれ。こっちは今お前の心配をしてるんだぞ、まったく。ピョンピョンピョンピョン。


「はっはっは! こいつは凄いな!!」


 赤ら顔をした村長が笑う。ただ今、飯のお礼に絶賛サービス中だ。


「でっしょー? ぷに太郎、村長の周りをくるくるー♡」


 クルクル。クルクル。


「おいでー♡」


 はーい。胸元に出されたメイの手に収まる。やれやれ。我ながら完璧だな。村長も大喜びで嬉しいぞ。


「いやー、凄い凄い。このスライムがめちゃくちゃ頭が良いのは分かった。しかしな、メイ。お前にも凄い才能があるかも知れんぞ?」


「才能?」


「うむ。まぁ、さっきの話を聞いた手前、少し言いづらいが……魔物使いの才能だな。モンスターを操る、いや、心を通わす、と言った方がいいかも知れんな。俺も実際に見たわけじゃないから詳しくは分からんが。……要はその力を、何のために使うかって事だ」


「うん……そうだね。ありがとう、村長」


 村長は本当にいい男だな。


 才能の話はさておき、そういう事にしてくれた方が俺にも都合が良い。便利スライムとして村の雑用係にされるのはゴメンだからな。


 そうして村長に俺の存在を知られた事で、それから数日の間、俺はこの村の人気者になった。やれやれ。

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