私なにも見えてなかったりする?
朝の食事を終えて少しした頃、キッチンに寮生のひとりが顔を出した。
ラベンダー色の髪をまとめた、いつも髪飾りを付けているおしゃれ代表のマーガレットだ。
「ヨシノさーん」
「あら? マーガレットちゃんどうしたの? 珍しいわね」
彼女は寮生の中でも中心的な人物で、さっぱりした性格が好かれる女の子だ。
そんな子が、私になにか用だろうか?
「あのさ、マホを街に連れて行っても良い?」
「え? いいけど……? どうして私に?」
寮生の外出は、学園に届け出があれば自由だ。わざわざ私に許可を取りに来る必要はないはずなのだけど。
「だって、ヨシノさんはマホの保護者でしょ?」
「……え?」
「違うの?」
首を傾げるマーガレットに、私はある意味ショックを受けた。
先日、真帆と自覚したばかりだったのに、それは周知の事実だったということだ。
(それだけ、私たちって一緒にいたのね)
時間は戻せないから仕方ないことだけれど、やはり少しだけ真帆に申し訳なさが浮かぶ。
「……前は、そう思われても仕方ないわ。でも真帆ちゃんと話して変わったの。真帆ちゃんは真帆ちゃんの道を。私は自分の道を見つけるわ」
言葉にしてしまえば呆気ないけれど、一字一句自分の胸に刻む。
「ふ〜ん? よくわからないけど、でもヨシノさん顔色良くなってよかった」
「ふふ、ありがとう」
大きな琥珀色の瞳が、陽の光を受けてキラリと輝く。まるで宝石みたいな光を宿している彼女が側にいてくれるなら、私も安心だ。
(あ、いけないいけない! さっき言ったばかりじゃない!! 私の馬鹿! 保護者は卒業でしょ!!)
自己嫌悪。やっぱりすぐには切り替えられないみたいだけど、それも徐々になくなるようになるだろう。だって、応援すると決めたのだから。
「そういえば」
マーガレットが思い出したように言った。
「ウールドリッジ先生には会った?」
「ウールドリッジ先生がどうかしたの?」
彼にはお世話になったけれど、倒れたあの日から顔を見ていない。しかし、そのあとに続くマーガレットの言葉に驚いた。
「あれ? 先生、毎日医務室に行っていたみたいだけど?」
「……え?」
あの厳しくて傲慢なウールドリッジが? 医務室に?
マーガレットの「じゃあ、マホと街に行ってきま〜す」と満面の笑みを見送って、私の中は疑問だらけだ。
(ウールドリッジ先生が、なんで?)
だって、私は医務室でウールドリッジに会っていないから、それが事実なのかも、いまは確かめようがなかった。
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