吉乃
今日の昼休み、私は寮生からランチを一緒にしようと誘いを受けていた。
(ふふ、嬉しいな)
この世界で慕ってくれている寮生たちとは姉妹のように仲良くしてもらっている。
学校の悩みだったり、恋愛のことだったり。
園児とは違うけれど、子供なことには変わりなくて、私はいつも彼女たちの話に耳を傾けている。なにより、妹がたくさん出来たみたいで嬉しい。
「あ、ヨシノさーん! こっち!」
庭園の東屋には誘ってくれた寮生が座っていた。
(あれ?)
大きく振っていた手をピタリと止めた。
「真帆ちゃん!」
「えへへ」
「マホも誘ったの。いつもここでお昼を食べていたんですって。私たちも混ぜてもらったの」
「そうなの?」
「う、うん。えへへへ」
頬を赤らめて照れくさそうに笑う真帆に、私は胸の奥がジーンとする。一ヶ月ほど前まで孤独で壊れそうになっていた彼女に友人ができたことに、私は寮に帰ったらケーキを焼こうと決めた。
集まった中にはマーガレットもいて、彼女は私の分のランチボックスを渡してくれる。
中身はサンドイッチにサラダ。シンプルだけれど、この学園の食事は絶品だ。寮母だというのに、私にはこの味は出せない。
「マホ、さっきの授業わかった?」
「えっと、ちょっとここが分からなくて……」
「どこ?」
「あぁ、そこは難しいのよね」
真帆が開いたテキストを覗き込むマーガレットたち。その光景は女子高生のそれで。
「あと、飛行魔法が苦手で」
「あれはね、バランスゲームみたいなものよ」
「バランスゲームって」
くすくす笑う真帆に、私は目尻が下がっていく。そして同時に、私だけがこの中で魔法が使えないことを思い出した。
(当たり前だけど、校内では魔法の話しばかりね。聞いていて楽しいけれど)
(でも、私には分からない世界……)
話に入れないことに嫉妬なんてしない。だってそんな年齢でもないし、むしろ彼女たちの熱心な姿は微笑ましい。
生活の面ではサポート出来る。でも学業面は無理だ。そこを補う努力を真帆は孤独な中でも頑張っていた。それが、今は周りに助けられていて、そして素直に助けを求められるようになっている。
(嬉しいことだわ)
聖女という現実に向き合い始めた真帆。頼りなかった背中には翼が生えたように軽くなり、今では外の世界に飛び出している。
(……真帆ちゃんが聖女として立派になっている)
素晴らしいことなのに、心の何処かで寂しさと不安が滲んでる。
(この気持ちは、なに?)
本当は気付いているのに、それから私は目を逸らした。考えてしまえば、もう笑えなくなってしまうから。
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