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050_山脈の主たち3 火竜、風龍


 山脈に住むという竜、残りはあと4匹。

 内訳は戦闘狂と自由人と引きこもりが2人。

 ここからはどれも手ごわそうだ。


 簡単そうな順番にいく。

 説得するならまずは戦闘狂。

 他の3体は龍に進化しているそうだから、竜を相手にかるほうが難易度は低いだろうという思惑もある。


 火竜のねぐら近くに転移する。


 そこは山の頂上。

 ずっと前に噴火した後のある火山地帯。

 まだ所々で煙が立ち上っている。


 凄い数の竜が上空を旋回している。


 こちらの接近に気付き、唸り声などを上げて威嚇をしてくる。

 頭上のスレスレを竜たちが飛び去っていく。

 こちらの数が少ないから、挑発でもしているのだろう。


 セシュレーヌが大きな声を出してボスの居場所を問う。

 するとすぐに向こうからやってきた。


 目の前で大きな咆哮を上げる。

 今にも火を噴きそうだ。


 ザ・ボスという感じである。


 目一杯怖がらせようとしているのだが、俺たちには全く通じない。


 いつも通り、セシュレーヌが交渉を開始する。


 あとは待つだけかと思いきや、1分もしないうちに、


「ご主人様、こいつ、挑発するだけならまだしも、侮辱するようなことを言っています」


「少々お待ちください。その役目、私が」


 そう言って、供回りの1人が前に出て跪く。


 ドラゴンアーマーをフルフェイスで被っているので、顔は見えないが、とても美人そうな女性だった。

 えっとこの子は誰だっけ。

 確か……


「ご主人様、ここはフレアに任せてみてはいかがでしょう」


 そうか!

 フレアだった!!


「わかった。任せる」


「ありがとうございます」


 俺の許可が下りると、フレアは立ち上がってドラゴンと向き合う。


 火龍の族長は大きな唸り声を上げてフレアを威嚇する。


 次の瞬間、空高く跳躍し、そのままドロップキック。

 火竜の族長の頭に炸裂。


 竜のボスは一発ケーオーとっなった。


 回りで見ていた竜たちがすぐに一斉に平伏した。


 フレアがボスの竜に最低限の回復術を施し、気絶している状態から意識を回復させる。


 火龍のボスは、気が付くとすぐに自身の状況を悟ったのか、同じく頭を垂らした。


 話をするためにドラゴンフルーツを出す。


「ラシル様が下賜されたものだ。有り難く思え」


 逡巡しているボスを見て、「いいから食べろ」というフレアの恫喝に急かされ、ボスは急いで食べて進化した。


 男かな、女かな……


 どっちかな。


 このイベントがちょっと楽しみになってきていた。


 でも薄々分かってたよ。


 オスだってことは。


 だって馬鹿なんだだもん。


 人型になった見た目も馬鹿っぽかった。


 肉体はがりがり。

 赤いモヒカンの髪の毛に深紅の目。

 ピアスでも開いていそうだ。

 チンピラとか不良という言葉が似合いそうな奴だった。

 とりあえず服を与えた。


「ボス、俺はボスについて行きやすぜ!!」


 付いて来んな。


 火竜の話を聞くと、意外なことが判明した。

 各方面に喧嘩を売り、戦闘行為をしている理由は、ただ単に覇権を求めているのではなく、強くなりたいのだそうだ。

 そのために他の竜とのバトルを所望しているのだが、水竜と木竜には相手にされず、土竜は属性の関係で火が利かない。

 風龍は自分たちより強く、何度かコテンパンにされている。

 闇と光については居場所が不明。

 これはアプローチ方法が間違っていると思う。

 他の竜からは、喧嘩を売ってくるただの馬鹿としか認識されていないからだ。


「私が徹底的に鍛え直します」

 レンジャーのリーダー、赤のフレアがそう進言した。

 赤だからといって本当にリーダーかはは分からないけど。


「ああ、よろしく頼む」


 一切の妥協はなしでいってもらおう。


「お前たち、今日からラシル様の部下として、恥ずかしくないドラゴンにしてやる。覚悟しろ!!!」


「はい!! 姉さん!!」


 これはあれだな。

 肉体や技術よりも、数と火という破壊力で戦ってきたな、こいつら。

 全然強くない。


 戦闘を繰り返しているはずなのに、進化したのは水竜や木竜の数と同じ程度。

 むしろ土竜のほうが多かった。


 はぁ。

 なんか残念だ。


 周りを見渡すと、燃えるような赤髪をした、気の強そうな美女が何人か。


 お、これはこれで……


「ダメです」


 はて、なんのことだろう。


 俺は水竜のアクアちゃん一筋だ。


「もっとダメです」


 だから、何も言ってないし。


 アクアちゃんに後で名前があるのか聞かなくては。


 もちろん儀式はなし。

 あったとしてもこちらから願い下げだ。




 いったん拠点に戻ってお昼ご飯にした。


 龍王城前のフィールドでは、建設資材をせっせと調達している仙人や悪魔、ドワーフがいる。

 働いている彼らを労いながら、テキパキと指示を出している現場監督のミイの所へ行く。


「ミイ、進捗はどうだ?」


「はい、ラシル様。極めて順調です」


「それはよかった。引き続き頑張ってくれ」


「畏まりました。ラシル様のほうはいかがですか?」


「順調だよ。もう水竜、木竜、土竜、火竜を仲間にした」


「もうそんなにですか?」

 ミイが驚いた表情を見せる。


「セシュレーヌのお陰だよ」


「ぼ、僕はなんにも……」


 セシュレーヌか恥ずかしがって俯いてしまった。

 フードの上からセシュレーヌの頭を撫でてあげた。


 ミイがムッとしたような顔をした。


「私も頑張っているのですが」


「ああ、ありがとう」


「では」

 ミイはそう言って頭を差し出す。


「ご飯にしようか」

 俺はスルーすることにし、龍王城への転移ゲートを開いた。


 憮然とした表情で頭を上げたミイに、セシュレーヌは勝ち誇ったような顔した。

 


 龍王城は大きい。

 中世ヨーロッパの城をイメージして作ったもので、城の周りは堅牢な城壁があり、6つの太い煙突のような塔がある。

 塔の屋上では竜が離発着できるようにデザインされている。

 4大属性プラス2竜ということで数が6つ。

 6つの塔に守られるようにして、城がある。

 6つの塔と城は渡り廊下で繋がっている。

 壁の色は茶色。

 横に長く、竜が離発着できる屋上がある。


 転移でダイニングに行く。

 長いテーブルと長いイス。

 何人も座って食事ができるようになっている。


 食料は禁城から輸入している。

 禁城の倉庫にしまえば、どの拠点からでもアクセス可能で、取り出すことができるのでとても便利なのだ。

 セシュレーヌの部下に専用のコックがいる。

 レストランでよく見かける、白い料理服と長い帽子。

 龍は感性が鋭いのか、美食家が多い。

 お昼はお任せにしたら、カレーライスが出てきた。

 セシュレーヌの大好物である。


 美味しい。

 ゲームの世界ではほとんど味を感じなかったものだが、味覚が複雑になっている。

 それをちゃんと感じ取ることができている。

 食事を取るといつも考えてしまう。

 やっぱり本物の世界に来たのではないかって。


 ミイとセシュレーヌと3人での食事。

 ミイは進捗を、セシュレーヌは今日これまでの出来事をそれぞれ話した。

 護衛の龍たちは少し離れた所でまとまって談笑している。


「ところでラシル様」


「ん? なに?」


「護衛の数が少なくなっているようですが」


「そういえばそうだね。各竜族のところにレベリングの教官として置いてきちゃったから」


「では仕方がありませんね」


「ん?」


「私も行きます」


「え、なんで?」


「危ないからです」


「大丈夫だって」


「ダメです」


 押し問答を繰り返した後、結局ミイが付いて来ることになった。

 資材調達の監督は他の者に任せて。



 お腹もいっぱいになったところで、残りの龍たちだ。

 残るは3匹。

 自由人1人と引きこもり2人。

 これは結構難しいかもしれない。


 自由人から先に片付ける。

 風龍がいるという海の近くに転移。


 大地の裂け目、その場所を見た瞬間、その言葉が思いついた。

 東は海、西は大地があり、切り立った崖になっている。

 その海岸線の一角が、亀裂が入ったように裂けていた。

 何かイライラしたことがあった巨人が、大剣で大地に八つ当たりをしたような裂け目。

 そこに巣を作り、上空を竜たちが飛んでいた。


 竜は薄紫色の鱗をしていた。

 この色と属性の関係性は、ゲームの世界と一緒らしい。


 近づいていくと、気付いた竜たちが寄って来た。

 敵意はないようだ。

 というよりも、フレンドリーな雰囲気だ。

 回りを旋回しているのは歓迎されているような気がする。

 気のせいだろうか。

 セシュレーヌに確認すると、「お見込みの通りです」という答えだった。


 セシュレーヌが族長に会いたいと伝えると、案内してくれるそうだ。

 裂け目の、現在ちようど陰になっている場所に広い足場がある。

 そこに族長がいた。


「やぁ、歓迎するよ」

 族長は両手を広げた。

 族長は事前の情報通り、人型をしていた。


 性別は男。

 好青年風。

 綺麗な淡い紫色の目をしていた。


 ちょっと残念。

 そう思った瞬間、ミイに鋭い視線を向けられた。


 嘘だろ?

 ギルメンはギルドマスターの心が読めるとか、そういう設定はなかったはずだ。


「君たちはいったいここに何をしに来たんだい? 観光かい? と言っても見る場所は少ないけどね。そうだ、海は見たことがあるかい? 僕はこの海が好きでさ。どこまで続いているんだろうといつも考えているんだ」

 放っておけばいつまででも話していそうなので、こちらの事情を説明した。


 セシュレーヌが傘下に入らないかと提案した。


「あまり乗り気じゃないな。僕たちは誰かの下で働きたくはないんだ」


「何か目的はあるの?」


「あるさ! 世界を見たいんだ。旅をして、色んな国を見てみたい。人の世界に関わりたい」


「へぇー」


「だからまず人型になろうと思ってね。ドラゴンのままいったら警戒されるし、運が悪いと退治されちゃうし。竜たちのレベルが上がって、人型になるのを待ってるんだ」


「そうか。なるほど」


 セシュレーヌは説明した。

 こちらにおわすお方、ラシル様こそ、様々な国に拠点がある。

 そして人型になれる方法と手段を持っている。

 それに近々世界を掌握する予定だから、部下になれば何処へでも旅行し放題だ。


 ん?

 いつから世界征服路線になったのだろう。

 それはもう規定路線なのか。


「本当かい?」

 風龍は期待と共に目を輝かせた。


「それに、他の国に行くだけで満足なの? そこに住んだり働いたりすれば、より様々な人間と深く関われる」


 セシュレーヌは更に欲望を突いて畳みかけた。


「それは素晴らしいね。決めたよ。部下になる」


 風龍はそう言って跪いた。


「忠誠を誓います」


 ドラゴンフルーツを与えると、更に進化した。


 また、他の竜たちも数体人型になった。


「この果物が必要だったんだね」


 どうやら知らなかったようだ。

 どこかで食べて1人だけ進化したのだろう。


 セシュレーヌに何か言われる前に、進化した龍に服を渡した。

 龍たちは感謝し、服を興味深げに眺めた。


 そしてうちの風龍を残し、レベリングをして人型に進化してもらうことにした。


 他龍の情報について。

「闇と光はシャイな龍だよ。あまり人前に姿を現さないんだ。レアだから個体数も少ないしね」

 だそうだ。


 儀式は無かった。


 今まで最初の水竜だけだった。


 結局あれはなんだったんだろう。

 




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