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9.経済の話

「今、なんと?」


 報告を上げると、ポプリはけげんな表情でそう訊き返してきた。確かに信じられないのも無理はない。彼女のやわらかな触角は傾げた頭にあわせてふわりと揺れている。

 フレスはもう一度同じ言葉を繰り返した。


「ザメル様が国境付近で戦闘をした結果、温泉地の守備兵が三百名から四百五十名に増えました」

「減るのならわかりますが、増えたのですか?」

「はい」


 理解できないというように顔をしかめて唸ってしまったポプリの横で、コロンも困惑している様子だった。だが、フレスは実際に現場に行って確かめている。確かに見知らぬ兵士が増えていた。


 城に戻った後、フレスはリッシュを連れて温泉地に足を運んだ。もちろん、様子を確かめるためである。


「オルガリア軍というのは、そんなに脅威なんですか? 我々に比べたら惰弱なのでは?」


 馬を並べて、何やら嬉しそうに話しかけてくるリッシュに応える。


「確かに我が軍に比べれば、個々の技量は劣るかもしれないな。だが、砂漠地帯や山岳での戦闘は得意としているようだ」

「そりゃあ、オルガリア領にはそういう地形が多いですからね。得意でなければ賊と戦えないでしょう」


 さすがのリッシュもオルガリア領の基本的な地勢くらいは把握しているようだった。フレスは満足して頷き、付け加えた。


「それを率いる将も侮れない。武名を聞いているのはガルチ将軍くらいだが……」

「誰です? それ」

「両手剣を得意としている武断派の将だとか。オルガリア領では随一の使い手だというから、おそらく本拠で守りを固めているだろう。もしも万一、将来的に我々がオルガリア領を攻め滅ぼすということになったなら、最も警戒すべき将だ」


 オルガリア軍の中でも最も高名な将軍の名をフレスは挙げて、説明した。ガルチ将軍はそろそろ年齢も六十歳ごろになるだろうが、魔界の住人の寿命から言えばまだまだ壮健で働き盛りだ。


「へえ、ガルチ将軍ですか。ぜひ手合わせ願いたいものですね」

「いや最高の将軍なんだ。こんな小競り合いに出てはこないだろう。そもそも、戦闘がない可能性の方が高い。ザメル様が守っていると知りながら攻撃を仕掛けてくるほど、愚かなこともない」


 そんな会話をしていたのだが、なんと予想に反してオルガリアは攻め込んできたようだった。当然、迎撃に出たザメルと戦闘になったが、結果はザメル率いる三百名の勝利。オルガリア軍は追い払われた。

 フレスたちが温泉地に到着したころにはすでに決着がついており、死体の片づけまで終えてザメルたちが酒盛りをしているところだった。


「残念ですが、もう終わった後みたいですね。間に合っていたら、私も戦えたのに」


 自分の護衛としてやってきたはずのリッシュがそんなことを言うのを、フレスは他人事のように聞き流した。

 敵も味方もなく、兵士たちが混然一体となって飯を食って酒を飲んでいる光景があらためて異常に思えたからである。倒したはずのオルガリア兵が降伏したか何かで味方に加わったのだろうということは予想できるが、それで勝利の宴に参加させて盛り上がっているのはやはりおかしい。

 ザメルはその酒宴の真ん中でなにやら笑っており、「結果は俺らの勝ちだったがよ!おめえらもなかなかの度胸だったじゃねえか!見どころあるぜ!」などとがなりたて、兵士たちの肩や背中を大仰に叩いていた。彼はフレスの存在に気付くと「おお!」と立ち上がり手を振って呼びつけた。


「フレス! こっちだ。ここはいい静養地だな! 温泉はなかなかいいし、トレーニング相手が向こうから来てくれんだ! その上、なかなか話せるやつらでよう、家族のとこに帰りてえってやつは返したが、後のやつらみんな、俺達の仲間になるってんだぜ!」


 一気にまくしたてるように言い、ザメルは見てくれよとばかりに右手で兵士たちを示した。確かにそちらには見知らぬ顔の負傷兵たち、おそらく元オルガリア兵が座ってこちらを見ていた。

 どこか不安げな目でフレスを見る者もあれば、酒を片手に照れ笑いのような表情の者もある。

 ザメルが味方に引き込んだということだが、軍師の立場としてはすぐに全員を信用するというわけにはいかない。


「わかりました、ザメル様。しかし、戦いでお疲れでしょう。もうしばらくご静養いただければと思います」

「ああ! わかってる、わかってる」


 ザメルは大きく頷いて、フレスの肩を叩いた。


「引退したからって、身体をなまらせるなっていうんだろ? 大丈夫だ! 温泉はいいし、飯はうまい。その上敵が勝手にやってきてトレーニングに付き合ってくれるんだぜ! いいとこを選んでくれたな」

「お気に召していただけて何よりです。オルガリア卿からお借りしている兵士たちの訓練も、お願いいたします」


 まったく何もわかってくれていないザメルにフレスは迂遠な言い方をしたが、もちろん通じるはずもなかった。ザメルという男は、酒を酌み交わし本心をもって語れば誰とでもわかりあえると信じているふしがある。彼はオルガリア兵たちをもはや味方と疑っていない。


「おう! 任せとけ。せっかく俺のとこにきたんだからよ、こっちのやり方の楽しさを知ってもらわなくちゃなあ!」


 そう言われてはもはやどうしようもない。フレスはあきらめた。仮に彼らがスパイであり、いざというときに裏切るつもりであるとしても、ザメルは彼らを近くに置くだろう。

 とはいえ、ザメルがそうたやすく命を取られるとも思えない。フレスはひとまずこの問題を棚上げにし、話題を変えることにした。


「はい。ところで、敵の司令官は敗走しましたか?」


 もしや敵の司令を捕らえるなどはしていないかと思い、一応確認しておく。するとザメルはよくぞ聞いてくれたとばかりに手を打ち、生き生きと語り始めた。


「そうだ、そいつのことを忘れてたな! なかなかの手練れだったぜ。ぶっとい両手剣を構えてきてよ、俺の殴る先に器用に切っ先を置いて防いでくるんだぜ! おまけにちょっと気をそらそうものならノドもとにピュッと切れこんできてよ! あいつ、もうちょっとのところで俺の首に届くところだったぞ。世の中スゲエやつがいるもんだよな!」

「両手剣? その手練れの司令官は、打ち倒されたのですか?」

「まあな。俺の拳の方がちょっと先に入って、顔面に穴が開いちまった。久しぶりに気合いの入ったやつと戦えたな!」


 といいながら指で遠くを示している。目を向けてみれば藁束の山があるが、手足がはみでていた。死体である。

 まさか、と思って確認してみるとつけている鎧が豪奢だ。決して使い捨てにされたような新米武将がつけるようなものではなかった。嫌な予感が背筋を伝い落ちていく。


「ガルチ将軍……?」


 そんなまさか、いやまさか。フレスは目をそらして、深く息を吐いた。


「司令官のお身体は、どうされるおつもりですか?」

「このまま葬ろうかと思ったんだが、いいところがなくてよ。フレス、どうしたらいいのか教えてくれ」

「では、こちらでひきとります。おそらく彼はそれなりに身分のある者でしょう。オルガリア卿に返還を打診してみましょう、彼も故郷で葬られる方がいいかと」

「いわれてみりゃそうかもな! じゃあいいようにしといてくれ」


 そう言われて、フレスとリッシュは敵の司令官の遺体を引き取った。返還といってもこのままでは腐敗してしまうが、彼がどのような方法で埋葬されるべきかわからない。念のため遺髪と爪をとってから火葬し、遺骨とあわせて箱に入れて持ち帰ることにした。彼の着ていた立派な鎧の装飾は、努めて見ないようにした。

 だが、遺体が骨になるまで半日ほど。フレスとリッシュはその間ザメルの宴会に付き合わされてしまった。リッシュは平然としていたがフレスは酒でふらふらになり、帰り道のほとんど、彼は馬の上で声を出すこともできなかった。


「と、いったことがありました。こちらが司令官の遺骨です」


 フレスは温泉地での事の次第を、宴に参加させられたことを除いてポプリたちに報告し、小さな木箱を見せた。


「そうですか。その、敵が攻め込んできたとはいえ死人が出てしまったのですね」

「はい。それと、その、降伏した兵士たちの話によると、やはりこの司令官はかなりの地位にあったようです。剣の腕ではオルガリア領内でも屈指の者だったと……」

「そうなのですか?」


 ザメルが「なかなかの手練れ」と評価した司令官は、認めたくはないがガルチ将軍だった。降伏した兵士たちによれば、「自分たちを率いていたのはガルチ将軍に間違いない」ということだったが、オルガリアがなぜこのような用兵をしたのか、さっぱりわからない。もしかするとガルチ将軍本人ではなく、子や兄弟であるという可能性も捨てきれないが、それであったとしてもいきなり半ば捨て駒のようにしてしまうにはあまりにも勿体ない人選だ。

 合理的な説明を求めるのであれば、オルガリアは寡兵のザメルを侮って、「ガルチ将軍の指揮なら倒せる」と見込んで襲い掛かってきたと考えるしかない。そうであったとすれば、確かに一理ある作戦だった。実際にザメルは「もう少しで俺の首に届いた」と言っていたのだから、まかり間違っていればポプリ軍最強の戦力であり声望のある英雄を討ち取れていた。そうなっていた場合、ポプリ軍は半壊していただろう。しかしザメルは常識を超える猛将だった。

 ただの小競り合いが起こったというだけのはずだったが、実は敵味方の最強武将が激突していて、知らないうちに敵の最も恐るべき将を討ち取っていたのだ。

 いずれにせよ、フレスはその対処を考えなければならない。帰り道にずっと沈黙していたのは酒のせいだけではなかった。二重の意味での頭痛をこらえながら、非現実的な現実をどのように受け止めるか、そしてどのように対応するかを考え続けていたのだ。


「これほどの者を討ってしまいましたが、我々はオルガリア卿とは不可侵の約束をしていました」

「しかし、オルガリアのほうから攻めてきたのでは?」

「もちろんです。その点を含め、オルガリア卿が何か連絡をしてくるでしょう。そうしなければ国内の支持を失いかねませんから。それまでは我々のやり方で丁重にこの御仁を供養します。そうするよりありません」

「わかりました……、ではオルガリアはこれ以上攻めてくることはない、ということですか?」

「はい。直接的な軍事力で、という意味ではそうです。ですので、今のうちに財政を立て直します」


 きたか、とばかりにポプリの顔が曇った。非常に面倒な収支計算があるのだろうな、という不安が透けて見えるようだった。フレスも彼女が嫌がるのはわかっていたが、避けることのできない議題だった。


「今、どうなっていたのでしたか? その、収穫祭に向けて……」


 ポプリはそれでも背筋を伸ばして、コロンを見た。財政に関しては宰相であるコロンに聞くのがいいと考えたからである。


「はい。ザメル様がこちらの城を落としてからだいぶになりますが、ロンシャロンが重税を課して得ていたほとんどの資産は官僚たちに持ち逃げされてしまっています。接収できたのは、極一部でした」

「しかし、今この時期に徴税することはできません。そんなことをすれば、ロンシャロン軍をせっかく倒した英雄ザメル様への声望にさえ影響しかねませんから。なので、ロンシャロンの個人資産を差し押さえていますが、これが現在の我が軍の資産のすべてです」


 フレスがコロンの言葉を引き継いで説明した。絶望的な財政状況だが、仕方がない。

 そもそも、ザメルは豪商でもなんでもない。ただのごろつきに近い人物であり、大した資産などなかった。そこからロンシャロンを倒せたのは、ただ戦闘でロンシャロン軍から略奪しつづけたからである。糧秣も武器も、果ては人員まで、すべてを敵から奪うことでまかなってきたのがザメル軍であり、今となってはもう奪う先がない。こうなってしまっては、兵士たちを食わせていくことすらあやしくなっている。


「その資産も、日に日にかなりの勢いで減っています。食べ物も、薬も、お金もです」


 コロンが付け加えた。


「フレス殿、あなたのせいですよ」

「そうですね」


 自分のせいにされてしまったが、フレスは否定できなかった。確かに自分の施策が自軍の資産を減らしていることは間違いない。


「ああ、城下で食べ物を配っていますよね。それに、たしか城の一角を診療所にすることを許可しました。原因はそれですか?」


 ポプリも思い当たったのか、それを口にした。フレスは重税と内戦の末に貧困に苦しむ人々を放置できなかったのだ。彼らが生きるためには、まず食べ物と治療が必要だった。


「そうです。食べ物は人々に与えており、診療所はロンシャロン軍にいた軍医を雇用して、病気の人々を診察させています」

「気持ちはわかりますが、少し規模をおさえるべきではないですか? このままでは我が軍そのものが持ちこたえられません」


 腕組みをして、コロンは不安げに指摘する。


「かもしれませんが、これについては今の規模を維持します。かわいそうだからという理由だけではなく、弱者を見捨てるような政権と思われてしまうと、我々がこの地を支配する大義名分が揺らぎます」

「大義名分、ですか?」


 両目を閉じて、首を傾げるコロン。


「それと破産を引き換えにするのは問題でしょう」

「いえ、我々はロンシャロンという三貴族から力で政権を奪い取った勢力です。これは苦しむ民衆を救うためという大義を掲げて成し遂げたものです。であれば、今まさに引き続き苦しんでいる人々を見捨てて、自分たちの命を長らえることを選んでしまっては、元も子もありません。我々はただ財産と名誉を求めて戦った簒奪者になってしまいます」

「では、どうすればいいのですか?」


 フレスが折れないことを見たポプリが、善後策を訊く。それがなければ、もはや終わりなのだ。


「いくつか考えはありますが、まずは税以外の方法で収入を確保します。それができなければ徴税の時期までもちません」

「税以外の収入といいますと。そんなものがあったのですか?」

「あります」


 用意していた資料をポプリに差し出し、フレスは説明を始めた。


「まず、郊外にある農園で耕作します。こちらはロンシャロンが接収したようですが、今は荒れ果てています。このように、接収したのはいいが利用されていないロンシャロン時代の直轄地があります。これを我々が利用します。これは絶対に必要です。兵士たちを食わせるために」

「つまり、我々が使える農地があったのですね?」


 全く知らなかった、という顔でコロンがまじまじと資料を見つめる。


「はい、ありました。ですがこれだけでは足らないので、現在の資産でルシアン領と交易します。得た物資はポプリ様の名義の専売とします」

「何か、売れそうなものがありましたか? 先の巡察でわかりましたが、みんな重税で生活が壊されていました。贅沢品を買うような余裕はないと思いますが」

「まず、古着です。今現在衣料を扱っている商家の方には申し訳ないですが、ルシアン領から古着を安く譲っていただいて、安価に放出します。こちらはどちらかといえば、お金よりも着るものにも困っている方々への救済です。最低ランクのものは無償でもいいでしょう。こちらはルシアン領の民間商店との交渉で手に入りそうですから、ルシアン卿との同盟を待つ必要はありません。今すぐにも始められます」

「他には?」

「本来的には塩を専売化すべきですが……」


 フレスは言葉を濁した。ポプリとコロンは顔を見合わせる。


「塩、ですか?」

「はい。塩は生活必需品であり、誰もが必要とします。これを専売化できれば安定した収入が見込めます」


 フレスは資料の別のページを開いて見せた。そこには塩の流通経路と価格の推移が記されている。


「塩は生活必需品です。しかし、我が領での産出量は限られています。岩塩に頼っている上に、その採掘量も年々減少しています。ルシアン領から買い付けなければ、領内の需要に追いつきません」

「それなら、ルシアン卿から買って、売ればいいのではありませんか」


 コロンの素朴な疑問に、フレスは首を横に振った。


「問題は価格です。重税と内戦で流通が滞り、領内の塩の価格は暴騰しています。直接ルシアン卿から買い付けてそのままの価格で売れば、確かに莫大な利益が出ますが」

「それなら問題ないのでは?」


 「じゃあ早くそれをしましょう」と言わんばかりにコロンが笑う。しかしフレスは「とんでもない」と切り返した。


「今の値段は異常です。おそらく、これはロンシャロンが行う予定だった施策です。彼はわざと塩の価格を吊り上げていました。ですが、庶民にとって塩が買えないということは命に関わります。保存食も作れませんし、体調も崩します。塩の価格は民衆の生活を直撃するのです」

「塩、塩ですか……」


 ポプリはあまりしっくりきていない様子だった。当然である。自分で料理をしたこともなければ、そこまで貧しい生活をしたこともないのだ。

 そこでコロンが言葉を付け加えた。


「ポプリ様、塩がなければお料理が作れません。水のような味気ないものばかりになりますし、冬に備えた干し肉や塩漬けも作れません。なにより、塩は体に絶対に必要なのです。このままでは領民が病気になり、冬には彼らの食べるものが完全になくなってしまいますよ」

「そ、そうなのですか? それはいけません」


 焦った表情のポプリを見て、フレスは苦い表情で続けた。


「ひとまず水、次になんでもいいから食べるもの、その次あたりに塩が必要です。塩を買うことは避けられないのです。その価格が暴騰している今の状態は、なんとかしなければならないのです。私は塩の値段を下げたい。それも、すぐにです」

「値下げをしたいのであれば、専売化してしまえばいいのではありませんか?」

「強制的にそうしてしまうと、塩商人を完全に敵に回してしまいます。それでもかまわないと言えばそうですが、もう少し穏便な手をとりたいところです。例えば、塩商ギルドの設立を認める代わりに、価格を切り下げさせるとか」

「それでは専売になりませんよ」

「はい。塩を専売にするということは、塩商人が現在得ている利益を奪い取ることに等しいのです。強制的に奪い取るか、粘り強い話し合いが必要です。塩の専売は将来的には視野に入れていますが、今の段階では値段を下げさせることが限界でしょう。このようなことを頼むのは申し訳ないのですが、我が兵士たちを塩商人の護衛に出します。それと引き換えに値下げを要求していきます」


 そうしておいて恩を売って、次第に軍の影響力を強めていく。それがフレスの狙いだった。


「護衛ですか……、儲けている彼らにそんなものが必要なのですか?」

「必要です。以前の我々の巡察で特に危険がなかったのは、五百名の兵士がいたからです。こんな部隊を襲いに来る盗賊はまずいないでしょう。しかし、商人たちの行商はそれほどたくさんの護衛を連れてはいません。彼らの持っている売上金や商品は賊が常に狙っています。最終的には、塩商人たちをギルドにまとめ、彼らの行商を保護し、我々で護衛する代わりに塩の値段には融通をきかせてもらいます。こうすれば、お互いにとって大きな損にはなりません」


 なるほど、とポプリは手を打った。

 話が一段落したところでコロンが先ほどの話題に戻す。


「減り続けている食料や薬については、大丈夫なのですか。今の施策だけで来期まで持ちこたえられるのですか?」

「このままでは無理でしょう。民衆に立ち直ってもらわねば、いつまでも食料提供、炊き出しが止められません。幸い、接収した農地は広大です。我が軍で管理しきれないものは小作農地として貸し出します。収穫から小作料として税を少し割り増しにすれば、現状で農業をされている方も納得されるでしょう」

「薬はどうするのですか?」

「これはどうしようもありません。ルシアン卿から買います。どうしても資金が足りなくなってしまったら、ツケにするしかないでしょう。あるいは、来期の収穫物を先売りします」

「…………」


 コロンは押し黙って、それから目を閉じてドッと背もたれに体を預けてしまった。思わずポプリがそちらに目を向けても、まだ目を閉じたままだ。


「コロン? どうしましたか?」

「いえ、その。経済って大変なんですね。こんなことは私が言ってはだめなのかもしれませんけど、フレス殿、あなたはいつ寝てるんですか?」

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