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今更助けて欲しいと言われても愛人にどうにかしてもらえばいいと思います。他人なのですがらないでほしい  作者: リーシャ


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06少し寄りかかる

 彼は赤みがかった茶色の髪を持ち、真摯な眼差しで馬と向き合う若者。


「はいっ!申し訳ありません、シャーリン様!」


 額の汗を拭いながら、すぐに体勢を立て直した。


 真面目な姿勢は目に留まっている。


 訓練が終わり、シャーリンが疾風のたてがみを梳いていると指導していたリトアムが近づいてきた。


「シャーリン様、今日の訓練ありがとうございました。馬との呼吸、少しは掴めた気がします」


 はにかんだように微笑んだ。


「まだ甘い。あなたの学ぶ意欲は評価する。馬の気持ちを理解しようとする姿勢は、騎士にとって最も重要な資質」


 珍しく穏やかな口調で答える。彼女はリトアムの真摯な人柄に、どこか居心地の良さを感じていた。


「恐縮です。シャーリン様の指導は本当に分かりやすいです。それに、シャーリン様と疾風殿の絆は見ていて胸が熱くなります」


 憧れの眼差しでシャーリンと疾風を見つめ、純粋な言葉に少しだけ心が和む。


「そうかしら。これは長年の積み重ねの結果よ」


 小さく笑う。訓練に熱心に参加するだけでなく、休憩時間にも元を訪れるようになった。


「シャーリン様、もしよろしければ訓練について少し質問してもよろしいでしょうか?」


 いつも真剣な顔で質問を投げかけた。


「わ、かったわ」


 熱意に根負けし、時には訓練が終わった後も指導を施した。


「馬の目を見て。彼らが何を訴えたいのか、感じ取ることが大切」


 馬に優しく触れながら、リトアムに教えた。丁寧に教えれば、手応えはやってくる。言葉を真剣に聞き入れ、すぐに実践する。教えがいのある生徒。


「ここをこう、あっ」


 ある日、訓練中にシャーリンが不注意で馬から落ちそうになった。心臓が痛くなるほどのストレスが、体をこわばらせる。


「危ない!」


 その瞬間、リトアムが素早く反応し、シャーリンを支えた。


「シャーリン様!大丈夫ですか!?」


「う」


 リトアムの腕が体をしっかりと支えていた。


「あ、だ、大丈夫……」


 顔には心からの心配が浮かんでいた。


「ええ、大丈夫。助かったわ、リトアム」


 少し驚きながらも感謝の言葉を口にした。自分の殻にヒビが入る。ビスカイと出会って以来、誰かに助けられることをどこかで拒絶していたのだ。


 しかし、リトアムの自然な行動に彼女は心の壁が少しだけ緩む。


「とんでもないです!シャーリン様が無事で何よりです!」


 心底安心した様子。彼の目はシャーリンへの深い敬意と、かすかな心配の色を帯びていた。目元を伏せる。共に過ごす時間が増えるにつれて、リトアムの別の側面を知るようになった。


 彼は馬に対して深い愛情を持ち、騎士としての職務にも真摯に向き合う。気が合ったし、何よりも言葉を真っ直ぐに受け止め、決して過去に踏み込もうとしなかった。


 別の日には、訓練場に残っていたシャーリンに、リトアムが温かいハーブティーを差し入れる。優しい香りがした。


「シャーリン様、まだ訓練されていたのですね。少し休憩されませんか?」


 心配そうな声で言われる。


「ありがとう。少し疲れたわ」


 珍しく素直にハーブティーを受け取った。温かい湯気が冷えた指先を温める。


「シャーリン様はいつもお一人で抱え込みすぎだと、皆心配していますよ」


 押し付けがましさがなく、純粋な気遣いが感じられる。


「そう。私はもう誰かに頼ることはしないと……決めているから」


 言葉には過去の苦い経験が滲み出ていた。何も言わず隣に立つ男。


「シャーリン様は本当に強い方です。ですが、時には誰かを頼ることも、弱さではありません」


 リトアムの言葉は心の奥深くに響いた。ビスカイに裏切られて以来、誰にも頼らないと心に決めている。自身を守る唯一の方法だと信じていたから。


 でも。


「そう、かもしれない、わね」


 初めて本心を吐露した。彼は何も言わず優しく微笑む。


「私はシャーリン様の隣で、いつでも支えになります。もし、シャーリン様がそれを望まれるなら」


 リトアムの言葉は澄んだ泉の水のように、心を洗い流した。純粋で、何の打算もない言葉。ハッとなるとリトアムの顔を見上げた。


 また数ヶ月が経った、シャーリンとリトアムの関係は着実に深まると訓練場で共に汗を流し、時には夜遅くまで馬のことや王国の未来について語り合う。


 過去を知っても決してそれを詮索したり、同情したりしなかった。シャーリンという人間をありのままに受け入れてくれるそれが、とても心地よかった。リトアムと共に休日を利用して郊外の牧場を訪れる機会ができる。


「見て、リトアム!あの仔馬なかなか良い資質を持っているわ!」


 生き生きとした表情で仔馬を指差す。


「本当ですね!シャーリン様が育成すれば、きっと素晴らしい馬になるでしょう!」


 言葉に目を輝かせる。彼の顔にはシャーリンへの純粋な賛同と、愛情が溢れていた。隣にいると心が安らぐ。

 ビスカイへの許さないという感情は心の奥底に深く沈んでいき、彼女の人生を支配するものではなくなっていた。過去を消し去ることはできなかったが未来に、新たな光をもたらしてくれるばかり。

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