これからのこと
更新遅れてすみません!
「そこまで!」
試験場にフェルミナの声が響く。
その声を聴いて俺とソフィアは互いに魔術を止める。
「ふぅ。フェルミナ、最後の撃ち合い、どっちが先だった?」
肩の傷を治癒魔術で、削れた服は『修繕』で直しながら、フェルミナに聞きに行く。
「うーん、先に撃ったのは多分、ウェネスかな。先に当てたのはソフィアさん」
「あー、やっぱり?」
風を放つ『烈風』と雷を放つ『紫電』では、同じ練度であれば、『紫電』の方が速い。さっきの感覚的に着弾はほぼ同時だ。だから、俺の方が先に撃てた感じはしていた。
まぁ、実戦だったら、互いに致命傷を狙ってるだろうから、先に撃てても、当たったのが先じゃなければ、意味無いんだけど。
そんなことを考えていた思考が、拍手の音で途切れる。
見ると、ソフィアが手を叩きながら、こちらへ歩いてきていた。
「見事じゃ! いやはや、初めて見た時に面白そうな奴じゃと思っておったが、ここまでとは。お前、本気を出しておらんじゃろ? なんなら、魔力測定試験の時にも、魔力を抑えて記録を小さくしていたじゃろ?」
「まぁ、普通に量ったら、魔測晶、壊れちゃいますし。そう言うあなたも手を抜いてましたよね?」
というか、互いに本気出したら、ここが壊れる。これから入学しようっていう所の一部を壊すほど、俺は酔狂な奴でもない。ソフィアだって、ここを自分の実験室と言っていたし、壊したくはないだろう。
「まあな。ま、何はともあれ、二人とも合格じゃ。おめでとう」
その言葉に、フェルミナが驚いたような声をあげる。
「え、ウェネスはともかく私まで合格ですか?」
「ん、そりゃ、不意を突いたとはいえ、イグニス・ロートに勝利できる程の実力者なのは分かっておるしの。あいつ、お前ら二人を除けば、受験生の中では多分、一番強いぞ」
その言葉に、フェルミナは嬉しそうにしみじみと言う。
「そっか、私、ちゃんと実力ついてるんだ」
「そうだよ。いつも言ってることだろ。まったく、フェルミナの謙遜しがちなところは美徳だけど、欠点でもあるからな」
「ま、そういうわけじゃ。じゃから、学園はお前たち二人を歓迎するぞ」
手を大きく広げて言うソフィア。
それに対して、恭しく頭を下げるフェルミナ。
「歓迎、ありがとうございます」
「んや、そういう堅苦しいのは良い。肩の力抜いて良いぞ」
ソフィアが軽く手を振って言う。
そう言われて、フェルミナは頭をあげる。
「ああ、そうじゃ、ウェネス。お前を特待生認定する予定なんじゃが、何か問題あるかの?」
ふと、思い出したように、ソフィアが聞いてくる。
「ん、特待生ってなんですか?」
「ああ、説明がまだじゃったな。この学園のいくつかの学部では、生徒が一般生と特待生に分けられるんじゃ」
指を二本伸ばしながらソフィアは言う。
「一般生は、普通の生徒じゃ。そこそこの実力のある者たちが、授業を受けて、試験を受けて、課題に取り組んでと、まぁ、普通に生活してもらうことになっておる」
「特待生ってやつは違うんですか?」
「うむ、特待生は、それぞれの学部の学部長――魔術学部だと儂が、ある一定以上の優れた実力があると認めた者が選ばれる。特待生に選ばれたら、授業や試験が免除、学園の施設に立ち入り自由、とまぁ、簡単に言うと自由にやれる。その代わり、特別な課題が課されるがの。ちなみに、魔術学部は、月に一度、魔術についてのレポート提出じゃ」
なるほど。ようは、実力のある奴がそれを伸ばす為に、自由に研究とかができるようにする制度か。授業がないのは良いな。魔術の研究に没頭できる。
「ま、分かりました。じゃ、特待生認定お願いします。ところで、フェルミナは特待生認定されないんですか?」
「騎士学部には特待生制度は無いからの。特待生制度は主に座学を減らすものでな。実践がメインの騎士学部とは合わないという考えじゃ。フェルミナ、それで良いか?」
「はい。私の場合、魔力が無い分、人一倍、努力しないといけないので。特待生制度があっても、辞退させてもらうつもりでした」
「そうか。なら問題ないの」
そして、手を軽く叩く。
次の瞬間、俺達は先程の学園長室にいた。
「さて、これから、お前たちはこのアステナ王国総合学園『セレスティア』で学園生活を送っていくわけじゃが、何か質問はあるかの? 学園長の儂が直々に答えてやるぞ」
ソファに腰かけながら、ソフィアが言う。
それに対して、フェルミナが手を挙げて質問する。
「はい。学園生活を送っていくうえで、心構えなどはありますか」
「んのものは無い。好きにやれ」
俺も手を挙げて聞く。
「はい。学園外への外出って許可いりますか?」
「日を跨がないかつ、王都から出ないのであれば基本的に自由じゃ。日を跨いだり、王都から離れる場合は届け出が必要じゃな」
「了解でーす。あと、この実験はダメとかってありますか?」
「特にない。ただ、学園の設備を壊した時は、どういう実験をして壊したのかとかの報告書の提出が義務じゃ」
「はーい。ちなみにそれって、学園長の趣味ですか?」
「当たり前じゃろ」
さも、当然のことのように言う学園長。
いや、当たり前ではないだろ。薄々、といううか結構そんな気はしてたけど、やっぱりソフィアって魔術ヲタクだろ。
「他に何かあるかの?」
「んや、特にないですね。フェルミナは?」
「私も大丈夫かな」
「そうか」
そう言ってソフィアは手を叩く。
次の瞬間、俺達は魔術学部の入学試験場前の廊下にいた。
「それじゃあ、儂から話は以上じゃ。他の受験生はまだ試験中じゃが、もう合格出したし、お前たちは寮に行って良いぞ。あ、学内の地図はこれじゃ」
そう言って、おそらく魔術で空中から取り出した、一枚の紙をフェルミナに手渡すと、手を振ってソフィアは消えた。
ソフィアがいなくなった廊下にしばらくの静寂が満ちる。
それを破るように俺は口を開いた。
「……変わった人だったな」
「だね。でも、なんだか、ウェネスに少し似てた」
少し首をかしげながらフェルミナが言う。
「そうか?」
「うん。何というか、実技試験をしてる時に、どっちの目もキラキラしてた。ウェネスもソフィアさんも、魔術がすっごく好きなんだなって感じがしたよ」
「ふーん。ま、良いや。折角早く終わったんだ。寮、行こうぜ。騎士学部と魔術学部の寮は別なんだっけ?」
「そうみたい。ここからだと、魔術学部の寮の方が近いね」
「じゃ、騎士棟まで送るよ。学園も見て回りたいしさ」
「ありがとう、ウェネス」
笑ってお礼を言うフェルミナ。
「ん、どういたしまして。それじゃ行こうか」
そうして、騎士棟まで歩きながら学園を見て回る。
「いやー、それにしても広いな。敷地面積どれくらいだ?」
「えっと、この地図によると、敷地面積約15キロ平方メートルらしいよ」
「広っ!? え、迷子になる奴とかでないのかな?」
そんな話をしながら、十分くらいで、騎士棟の入り口に着いた。
「じゃ、ここからは別々だね」
「だな。あー、寂しくなるなぁ」
敢えて、棒読みで言ってみる。
「もう、ホントに寂しいって思ってるの?」
「まぁ、同じ学園内で生活するんだから、普通に会えるだろ」
「それもそうだね。それじゃ、バイバイ」
「ん。またな」
そう言って、転移魔術を発動させて、魔術棟の入り口まで移動する。
転移魔術は、行ったことのない場所には転移できない。だから、今回も、寮の前まで直接移動することはできない。
「転移魔術も改良しないとなぁ」
独り言を呟きながら、寮へ向かう。
そして、寮の前に着いた。
レンガ造りの巨大な建物。側面の壁にはいくつもの窓が見える。
「おっきいなぁ。流石は王国最大の学園といったところか」
そんなことを言いながら、寮に入ろうとした時――
轟音が響いた。




