08 賢者に会う
ようやっと依頼らしくなったような・・・
「よしっと。」
最後の一匹を仕留めたロディは汗を拭った。賢者の住む山へ向かって五日たった。賢者が住んでいる山はロディが育った村に近く、来た道を引き返してきていてなんだかすごく損をした気分になっていたが、目の前に襲ってくる魔物は待ってくれない。来たときと同じように出会った魔物を倒しながら進んでいた。
賢者の住む山は魔の山と呼ばれるほど魔物が強く、さすがのロディも少なからず怪我を負っていた。デイビッドにもらった道具で手当をしながら、ロディは6日目を迎えていた。いつもより強い魔物に、魔石などを使いながらうまくいなしていた。
そろそろ家が見えてくる頃だとロディが顔をあげると、頂上で爆発が起こった。
「え?え?」
ロディは何が起こったのかわからなかったが、急いで賢者の家へと駆け上がった。
「スーニャ様っ?!」
ロディが頂上の家にたどり着くと、庭先に大きな穴が開いていた。
爆心地らしきところには傷一つ無い丸い青い玉が転がっていた。
爆心地らしいのに傷一つ入っていないように見える。
その前には、ローブを着た少年が立っていた。
その反対側には髭が地面に着くほど長いローブを着た、年老いた魔法使いが立っていた。その男はロディの声を聞き、顔をちらりと向けたがすぐに目の前の少年を見た。
「まだまだじゃのう。制御が甘いわ。」
「ちっ。まだだ。」
少年が片腕を前にすっと伸ばす。とたんに爆心地らしきところで爆発が起こる。
「だめじゃ。大きすぎるわい。もっと小さく。」
手を下ろした少年の後ろから、ロディは魔法使いに声をかけた。
「スーニャ様ですよねー。ギルドの依頼できましたー。」
「ほう、どんな依頼かのう。」
スーニャは穴を避けてロディの所へ向かってくる。
「イシュレイ、その穴を片付けよ。」
「ちっ。」
少年は舌打ちをしながらも、また腕をかざし、魔法で穴を埋めていく。
その様子を「おお。」と眺めていると、目の前にスーニャがやってきた。
「で、おぬしは・・・この間来たのう・・・ロディアックの娘じゃったか?」
スーニャは近づいてロディの顔を見ると、思い出したらしい。
「あ、はい。ロディスティルリー=アポロスです。」
「ロディスティルリー、か。かばんの使い勝手は良いか?」
「はい!とっても助かりました。王都までの獲物が多すぎて、全部かばんで転送したら、結構なお金になりました。」
にこにこと返事をするロディに、「ほう。」とスーニャはひげをなでた。
「王都まではどうやって行ったのじゃ?」
「一人で歩いて行きました。」
「魔物が多かったじゃろうて。」
「多いけど、これぐらいこなさないとって父さんが。」
「ほっほっほ。ロディアックもよくいうのう。で、何の依頼じゃ?」
「コレです。幻惑解除の高度な魔法陣を込めた魔石がほしいんだそうですよ。」
ロディは依頼書をスーニャに渡した。
スーニャは依頼書を読み、ふむふむと考えると、ロディを見た。
「ふむ、ではおぬしには特殊な回復薬に必要な材料を取ってきてもらおう。」
「やっぱり。」
「なにかいったかの?」
「なんでもないよ。何をとってきたらいい?」
「ドクラクソウとヨウメイソウ、イタドリソウ、を5株ずつ取ってこい。」
「どの辺りにあるの?」
「ドクラクソウは水辺に。ヨウメイソウは鍾乳洞に。イタドリソウは竹藪にある。」
「がんばって、探してくる!」
ほっほっほっと笑ってスーニャは家の中に入っていった。
話が終わっても少年はまだ穴を埋めていた。
ロディは、さっそく薬草とりに向かった。
設定8 賢者の名前
コストレア=ゲルマニウム=ターニャ=ファレスプシス=
デ=カテルト=スーニャ
やたらと長い。賢者と言われるだけあってすごい人。
ほぼ全ての魔法が使えると言われている。
若い頃は宮廷魔術師筆頭だった。
いまは地面につくほど長い髭を三つ編みにしてリボンでくくった変な爺。
結構強い魔物がたくさん住み着く魔の山と言われる山の頂上に住む変人。
強い人にしかこない自然の要塞状態。
よけいに変なのしか来なくなった。