07 初依頼
ようやく旅路へ。
「ユーファちゃん、遅くなってごめんね!」
「ううん。大丈夫よ。」
防具屋からロディたちがギルドに戻ると、すでにユーファは仕事を終え、のんびりと紅茶を飲んでいた。
「ケルディさん、今日はありがとう!」
「おう、また縁があったらな。」
「うん。またね!」
ケルディはあっさりとギルドを出て行った。さきほどまで一緒に酒屋にいた男の一人が仲間だったらしく、来た道を引き返していった。
「ケルディさん、いい人なんだけど、言葉の選び方が下手なのよ。」
「うん、そう思う。でも、それで縁ができたんだ。私にはありがたかったよ。」
「なんでも前向きに考えるのがロディのいいところだと思うけど、ね。」
呆れた様子を見せるユーファに、ロディはかまわず手を伸ばした。
「さあ、久しぶりにユーファちゃんの家に行くんだ!楽しみだな!!」
「腕をふるっちゃうわ!!」
二人はにこにことギルドを出て行った。
仲良く話をして、仲良く寝て次の日。二人は一緒にギルドにやってきた。
「おはようございます、デイビッドさん。」
「ああ、昨日はユーファのところに泊まったのか。」
「うん。」
ロディはユーファが仕事に向かうと、依頼カウンターのデイビッドに挨拶にいった。
「買い物は無事済んだんだな?」
「まあ、武器と防具の用意は借りに。」
「なら、さっそく仕事を頼まれないか?」
「え?何?」
依頼と聞いて、ロディは目を輝かせる。初めての冒険者としての仕事なのだ。とても期待してしまうのも仕方ないだろう。前のめりになって聞いてくるロディに、デイビッドはくすくす笑いながら話した。
「そんなに楽しいものじゃないぜ?なにせ、断れ続けているからな。」
「いったい何の仕事?」
「幻惑解除の高度な魔法陣を込めた魔石が欲しいと依頼されていてな。それも賢者様が作ったものをだ。」
「賢者様って、スーニャ様?」
ロディは驚いて目を見開いた。
「そう。」
「えー!!スーニャ様に依頼したら大変な仕事させられるんでしょ?!父さんがすっごく大変だったって言ってた!」
思わず大声を上げたロディの頭を、デイビッドはぽんとチョップをする。
ロディは叩かれた頭を抱えてデイビッドを見る。
「いたっ。」
「声が大きい。そういうことで、なかなか頼める人がいないんだよ。ロディちゃんなら英雄ロディアックの試練を受けてるんだからある程度大丈夫だろうって思ってな。」
デイビッドの無責任な仕事の振り方に、ロディはしぶい顔をする。
「えー?スーニャ様には1回しか会ったことないよ?この空間魔法のかばんをもらいに行ったときだけ。あのときは父さんが試練を受けてくれたからよかったけど。無理だよ―。」
「そう言わずにさ。」
「だって父さん、苦手なのに、レーシュ草とウィレッド石を見つけてくるっていう仕事を受けてたんだ。父さん、母さんに手伝ってもらったから二日で見つけてたけど、絶対一人だったらみつけられなかったと思うよ。スーニャ様の試練は本当に無茶なんだよ。・・・とはいえ、依頼されて引き受けないのも、冒険者としてはよくないよね。・・・うん、がんばって受けてみるよ。」
嫌そうな顔から、ぐっとこらえた表情に変えて、ロディはデイビッドに答えた。
「おう、がんばれ!!ロディちゃんならきっとできるよ。で、さすがに俺も冒険者初めてのロディちゃんに無理言ってるのはわかってるから、これくらいは融通しよう。」
と、デイビッドがカウンターの上に置いたのは、治療用の薬箱だ。
「え?薬?」
「魔法ばかりに頼ってたら魔力が減るだろ。いろんな治療薬が入った薬箱だ。酔い止め、腹痛、頭痛、痛み止め、睡眠導入剤とかなんでもござれ、だ。うまく使えよ。」
「わあ、ありがとー!これはすごいね!!いろんな薬がある!!」
ロディはデイビッドが中身を説明すると、目をきらきらさせた。
「ということで、頼むよ。」
「がんばる!行ってくるねー!」
ロディは気合いを入れて、元気よくギルドを出て行った。
設定7 魔法による回復、治療はできるが、緊急性を要するときに使われる。
通常の怪我や病気には治療薬などを使い、自然治癒力を高めることで
体を整えていくのが普通。魔法を使うのはよほどの大病か、戦闘時。
そのため、冒険者は戦時用の治癒魔石を持って行くこともあるが、
今ひとつ信頼性に欠けるため、最後の手段につかわれるものである。




