53 アワカビゴケ
休憩のような・・・
楽しんでいただけると幸いです。
ネウギウスとクロイスがにぎやかに話している間に、もう一人の男はカウンターに座った。
「ご主人、酒、くれないか?」
「ああ。トライド、おめえあの男の用心棒してんのかい?」
店主がトライドというらしい男に問いかける。
「ああ。ギルドでうるさくしてたもんだから、どうせ町のどっかにいるだろって、ギルドマスターに案内しろって仕事投げられたんだよ。」
「トライドにふるって、ギルドマスターからの扱いが酷いな。」
「そうでもねえ。ここの飯代やらなにやらは金出すって言ったからな。」
「それにしたって、おまえを道案内に使うって・・・。」
「ねえねえ、お兄さん、強そう!あのバトルアックス、お兄さんのなんでしょ?」
話を隣のテーブルで聞いていたロディが話しかけた。
「ん?なんだ坊主。めずらしいのか?」
「ううん。だってこの武器、おじーちゃんが作った武器みたいだったから。」
「おじーちゃん?」
「うん、王都の武器屋ルーベイで作ってもらったものじゃない?」
「なんでわかるんだ?」
ロディの言葉に、トライドが視線を鋭くさせた。
「だって、おじいちゃんの印がここにあったから。」
「そこからじゃあ見えねえだろ。」
「さっきお兄さんが武器を置いたときにちらって見えたんだ。」
「よく見ていたな。」
「だって、すごくかっこいい武器だったから。ずっと見てたんだ。」
「そうか。それにしても、おじーちゃんってあの爺の孫か?」
「ううん。孫じゃないけど、よく遊びに行ってたから。」
「そうなのか。」
「うん。お兄さんはフリーの冒険者なの?」
「ああ。おまえはああ、四人パーティなんだな?」
ロディの座っているテーブルのメンバーの数を数え、トライドが確認する。
「ああ、今はロディを入れて4人で組んでいるが、いつもロディはフリーの冒険者だぜ?」
ロディの代わりに答えたのはグリーだ。
「ガキが一人で?」
「だから今は俺たちが誘っているんだ。あんたみたいな人がフリーなら気にしないけど、ロディがフリーなのはこっちも心配だろ。」
「というか、依頼内容が女性の護衛だったので、女の子のロディに来てもらったっていうのが正しいんですよ。」
グリーがへらっと答えるが、フィズが付け足しをする。トライドはフィズの言葉に目を丸くした。
「へ?おまえ女の子なのか?」
「うん。」
「それはすまん。坊主なんて失礼だったな。」
トライドは神妙な顔をしてロディに謝るが、ロディはにこにこと答える。
「ううん。そう見えるようにしているから気にしないで。私はロディスティルリー=アポロス。お兄さんは?」
「おれはトライド=エンバース。よろしくな、アポロス。」
「ロディでいいよ、トライドさんって呼んでもいい?」
「いいぜ、ロディ。で、あんたは?」
「オレはグリージア=フォーレ。で、こっちはフィリディーズ=ゴウシェン、そっちはジェイワイエイン=スタミュロデイア。オレのことはグリー、こっちはフィズ、そっちはジェインって呼んでくれよ、トライドさん。」
「グリーとフィズ、それからジェインだな。よろしく。」
「あ、ロディ、明日はギルドで仕事一緒にできるやつ探さないか?」
「うん、それで今日ギルドで見ていたら、ボワリゾンっていうダンジョンの奥に生える、アワカビゴケっていうのを採ってきて欲しいっていう採集依頼があったんだけど、行かない?」
グリーが提案すると、ロディがさらに提案してきた。
「なんだ?そのアワカビゴケって。」
「アワカビゴケっていうのはヒカリゴケの一種で、泡の様なものを出して発光している。素手で採るとアワが消えやすいから、試験管とかで挟んで採ることが多いぜ。」
グリーの問いに、トライドが答えてくれた。
「へえ、ここら辺のダンジョンに多いのか?」
「ああ。この辺りの研究者がよく使うんだ。知らないってことは、最近この町に来たんだな?」
「うん、来たばっかりなんだ。」
「だが、ボワリゾン指定なのか?」
「たぶん、そうだったと思うよ。」
「ならやめておけ。あそこは初めて行く奴が採集するようなところじゃない。採集するならほかにもリリットの滝の洞窟にたくさん生えているからな。他の依頼にしておけ。」
「初めてで採取できないような所なのか?」
「一番奥は、スライムや植物のモンスターがうようよしているんだ。だが、火を使うと採集する植物まで燃えてしまうからな。扱いが面倒なんだよ。」
面倒くさそうにトライドが話すので、ロディが首をかしげて尋ねる。
「凍らせたら?」
「アワが消えるだろ。」
「じゃあどうやって採るの?」
「全部斬って捨てるか、潰す。」
「スライムもか?」
グリーが尋ねると、トライドは酒を手にとって答えた。
「核を斬れば死ぬだろ。」
「それはかなり大変そうだな。」
「だろう?」
「ロディ、まずは明日ギルドに行って、どんなのがいいか聞いてみようぜ。」
「そうだね。トライドさん、ありがとー!!」
「まあ、気をつけて行ってこいよ。」
「トライドさん、教えてくれてありがとう。ってことで、いっぱいおごりますよ。」
「いや、ここの酒はさっきのやつがもってくれるはず・・・」
「まあまあ、お近づきの印ってことで!」
グリーとジェインがトライドに酒をおごりはじめ、食堂はさらに賑わっていた。
【設定53】
アワカビゴケ ヒカリゴケの一種。泡のようなものは胞子。
ダンジョンの中や洞窟などで光っている。
ルットステン近郊で生息している。
最近の研究ではその泡が洗浄効果もしくは癒しの効果が
認められ、活用方法へ向けての研究がなされている。
特にボワリゾンから採れるものは活性化作用が高いらしい。
ダンジョン 『ボワリゾン』 スライムや植物系の魔物が多いダンジョン。
意外と出てくる魔物が多く、手間取りやすい。
リリットの滝 アワカビゴケがよく取れる洞窟がある。




