52 ルットステンの食堂にて
ちょっと休憩話が続いております。
長い時間があいてしまいましたが、楽しんでいただけると幸いです。
「よお、ロディ。飯食ったか?」
夕方の賑やかな食堂にロディが入ると,たまたまグリーたちが夕食を食べていた。
「ううん。まだだよ。」
ロディの返答に,グリーがにかっと笑って誘う。
「なら来いよ。」
「うん。」
ロディがグリージアの隣に座ると,グリーが店員に注文を頼んだ。
「今日は何してたんだ?」
ジェインが肉を手に取りながらロディに尋ねた。
「矢の補充をして、依頼を一つ受けてきたんだ。」
「何の依頼だ?」
フィズがスープを飲んでから尋ねる。
「食料狩猟の依頼だよ。近くの森にいたからちょっと行ってきた。」
「そうか。無事で何よりだぜ。」
「グリーたちは何してたの?」
「とりあえず、武器の補修頼んで町をぶらぶらしてた。」
グリーが答えていると,向かいに座っていたジェインがにやにやとロディに話す。
「こいつ,美人を見つけて声をかけたんだけどよ、傍に旦那がいてがっかりしたんだよ。」
「ちょ、言わなくてもいいだろうがよ!」
顔を赤くしてジェインに文句を言うグリーに、フィズが微笑む。
「まあ、あの声のかけ方では、道に迷ったかわいそうな人ですけどね。」
「フィズ!!」
「グリー、女の子に声をかけるなら、困っているときに助け船を出すのがいいと思うよ。」
ロディがくすくす笑いながらアドバイスすると、グリーはテーブルにつっぷした。
「ぐ、子どもにアドバイスされるとは・・・。」
「一応、女の子だからね、私。」
「そうだったな。すまん、たまに忘れる。」
「まあ、いいけどさ。」
けらけらと笑うロディに、グリーはテーブルに頭を乗せたまま謝った。
「ロディはうっかりすると、男装の麗人だからなぁ、もてるだろうなぁ。」
ジェインの言葉に、ロディは首をかしげる。
「そう?」
「君はどう見ても男の子にしか見えない。」
フィズの言葉に、ロディがつっこむ。
「いや、女の子らしい冒険者なんて危ないから。」
「そりゃそうだ。」
「まあ、ロディなら大丈夫だろうが、万が一のときは俺たちを頼れよ?」
「うん。頼りにしてるよ。」
ようやくテーブルから頭を起こしたグリーはロディの頭をがしがしとなでた。ロディは気持ちよさそうににこにこしている。
「おい、そこのぼうず共!!」
グリーたちが声のした方を見ると、よっぱらいらしき男が酒を片手に声をかけてきたようだった。
「なんだい?祝杯でもあげてるのか?」
グリーが明るく話をしようとする。
「はっはっは。祝杯、そうだな、祝杯だ。俺たち、魔晶石を掘り当てたんだぜ!!」
「魔晶石を?!」
「それはすごい!!」
ジェインもフィズも目を見開き、声をあげて驚いた。魔力が水晶の中に閉じ込められている魔晶石は魔力の純度が高く、純粋な魔力のみが込められているため、研究者に重宝され高く取引されている。とくに、ほかの魔風石などの属性の決まったものと違って純粋な状態を自然状態で発見することは希である。
ただ、やはりロディだけは、レイ兄ちゃんが持ってたような・・・と一人違うことを考えていた。
赤ら顔の男はグリーに振られた話で勝手に盛り上がっていく。
「魔晶石を見つけたし、すぐに高く買い取る奴もいたし、とんとん拍子にすすんで景気がいいぜ!」
「そりゃ、よかったな!そりゃ、祝杯あげたもくなるぜ!魔晶石発見にかんぱーい!」
グリーが男に乗って、杯をあげる。
「おまえ、いいやつだな。飲め、飲め~!!」
「あんたもいい男だな、かんぱーい!!」
「おめでとー!」
ジェインも一緒になった祝杯をあげると、
「おめでとうございます、よかったですね!」
にこにこと杯をあげるフィズ。
「おめでとー、おじさん!!」
にこにこと祝うロディの姿があった。祝杯をあげる輪がだんだんと広がり、食堂は笑顔に包まれていた。
バアン!!!
楽しげに過ごしてた食堂に、大きな音が鳴り響いた。いや、食堂の入り口の扉が勢いよく開けられた。
「魔晶石、見つけた奴、どこだー!!」
おおきな声を上げている男に、食堂にいた全員の視線が集まる。細身で眼鏡をかけ,魔術師らしいローブを着た男と大柄でバトルアックスを担いだ男がいた。大声を出したのは大柄な男のようだ。
「んん!トライドじゃねえか?魔晶石見つけたのはオレだが、何のようだ?もう、魔晶石は売っちまってここにはねえぞ?」
突然の横入りに気分を悪くしながらも、酔っ払っていた男が答えると,眼鏡の男が目を輝かせて酔っ払いに握手をした。
「あ、あなたが魔晶石を見つけた方なんですね!!わあ、よかった!!見つけてくれてありがとうございました!!僕が買った相手のクロイス=ヴェズレーです。あなたのおかげで僕の研究が進んだんです!!ありがとうございました!!」
「お、おう。」
クロイスのあまりの剣幕に、酔っ払いの男がたじたじとしていた。
「一言直接お礼に伺おうと思ったけど、ギルドを通して買ったから誰が見つけてくれたのかわからなくて、この町中の宿泊施設回ってでも見つけようと思ってたら、5件目で見つかるなんて運が良い!!本当にありがとう!!ぜひ、恩人のお名前を教えてください!!」
「ああ、よかったな。オレの名前はネウギウス=リートロットンだ。」
「リートロットンさん、本当にありがとう!!」
どうやら人捜しは落ち着いたようだった。
【設定52】
クロイス=ヴェズレー ルットステンの魔術師兼魔石研究者。
貴族に養われている技術者。人がいい。
ネウギウス=リートロットン ルットステンを拠点とする冒険者。
魔晶石を見つけた幸運の持ち主。




