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51 早風の矢 氷石の矢

楽しんで頂ければ幸いです。


ビュッ,・・・タンッ!!


ロディの放った矢は吸い込まれるように的の中央に刺さった。


「わあ!!ど真ん中!!」


アベスモリーが歓声をあげる。ロディはその声に全く反応せず,二射目を番える。ギーベルトはロディの腕前に低くうなりながらもじっとその様子を見つめている。


「ブースト。」


バシュッ!!ダーンッ!!


ロディは呟いて魔法を使ったことを二人に知らせた。その姿が見えないほど速く,気づいたらやはり二つ目の的の中央にめり込んでいた。速度を上げたため,威力が上がり,的を突き抜けていた。


「すごい!二射連続・・・。」


驚きのあまり,アベスモリーもつぶやくので精一杯だった。ギーベルトは弓矢の腕に加え,詠唱もなく軽々と魔法を使って見せたロディに戦慄を覚える。

ロディは,二射目も命中したことからほっとしながらも,矢自体の扱いやすさに感嘆を覚えた。今までの矢もさることながら,早風の矢はブーストの効きがよく,手から離れた後の加速がよかったように感じた。ロディは三つ目の矢を手に取り,的を見た。早風の矢は風魔法の強化が可能。すでにブーストをかけた。次にするなら・・・ロディは矢を番えた。


「ブースト,フリーズ!!」


バシュッ!!ダーンッ!!


ロディは魔法を発動させると同時に矢を放った。ブーストで加速していきながら,鏃から徐々に凍っていく。的を射貫くと同時に,的をも氷付けにしていた。


「す、すごい。二つの魔法を使っても命中・・・。」


あまりのすごさに,アベスモリーはつぶやくことしかできない。


「必中とは・・・。あの集中力と魔法の使い方・・・まさにケリーの弓だ・・・。」


ギーベルトは感嘆のため息をついた。


「ギーベルトさん,この矢,すごいね。とっても気持ちがいい魔法の効き具合と命中精度だよ。もう一つの方も試していい?」


ロディはわくわくしながらギーベルトに声をかけた。普通の矢より射やすく,効果も高い矢に,ロディは興奮していた。


「ああ,氷石の矢だ。」


ギーベルトに渡された矢を手に取り,ロディは矢を番えた。先程の早風の矢と違い,少し重く,太い。


ビュゥッ,ダン!


早風の矢よりわずかに速度が遅いが,命中したときの威力は少し強そうだ。ロディはわくわくしながら次の矢を番える。普通の矢と違って,戦い方を変えられるのがおもしろいとロディは楽しんでいた。口元を緩め楽しそうなロディを見て,ギーベルトは満足そうに頷いた。


「ブースト」


ビュッ,ダンッ!!


「4射連続・・・必中だわ・・・。」


アベスモリーはあまりのことに食い入るようにして見ている。ロディは,早風の矢よりは遅いが,威力は十分だなぁと思いながら最後の矢を番える。


「ブースト,フリーズ!!」


ビュッ,ダンッ!!


音だけ聞けば早風の矢に劣るが,先程は的が綺麗に凍っていたのに,的だけではなく,5メートル四方まで凍ってしまっている。氷魔法の威力を高めるという効果はロディの予想より遙かに大きかった。


「す、すごい。こんなに広がるなんて・・・。」


矢を放ったロディですら驚くほどの効果に,アベスモリーもギーベルトも目を見張っていた。フリーズで用いた魔力は変わらないはずなのに,威力が格段に上がっている。周囲への被害が甚大である。


「普通に矢を放ってもここまで氷魔法の威力は上がらねぇはずだが・・・そうか,お前が無詠唱で放ったからか!!」


あまりのすごさに,ギーベルトがぶつぶつといい,思いついたとばかりにアベスモリーを見る。アベスモリーもギーベルトの言葉に頷きながら言葉を紡ぐ。


「そ,そういえば,詠唱もなく軽々と魔法を使ってた・・・魔法のイメージ力と魔力操作に長けているってこと・・・それだけ魔力の無駄がなく伝達されてるのね!」


二人で合点がいったとばかりに頷き合う。その横でロディは目を輝かせていた。


「私のイメージよりかなり効果が大きいなぁ。矢に合わせてイメージしないと大きくなりすぎるね。使い方と細かいイメージをいくつか練習した方がいいかも・・・よし!矢をまずは買って練習だ!!ギーベルトさん,早風の矢と氷石の矢を売ってほしい!!」


「よし,いいぜ。確かにお前は英雄ロディアックの娘で,音速のケリーの弟子のようだ。あれだけの腕前を見せられたら,売りたくなるってものだ。商談は中でするぞ。」


ギーベルトがロディに応え,店の中に入ろうと歩き出す。その後をロディとアベスモリーがついていく。


「うん!!」


「アベスモリー,的の片付けをしろ!」


「えー?!あの氷どうやって溶かすの?的が燃えちゃいそうなんだけど・・・。」


ギーベルトに言われ,アベスモリーは足を止めて的を見て眉を下げる。


「大丈夫。氷なら私が。」


ロディは颯爽と的の傍まで走り,氷に手を当てる。


「ルヴニール!」


ロディは元に戻すイメージを魔力で氷に与え,氷を消した。ロディのイメージは細かくなって空気中に解けるイメージを氷に与えた。それは魔力制御の中でもかなり高度なものであるが,それは誰しもできるものではない。実践型魔術師レイウッドの魔術原理の知識と母であり魔法使いであるティエリーの魔力操作とイメージの教えを受けたロディだからこそできる芸当である。

 明らかに常軌を逸した魔法の使用に,ギーベルトとアベスモリーは開いた口が塞がらなかった。


設定51 

早風の矢 魔風石を鏃に使った矢。軽いが強靱。

     風魔法の威力が強化される。

氷石の矢 魔氷石を鏃に使った矢。柔らかく重い。

     氷魔法の威力が強化される。

魔風石 青みがかった鉱石。風の魔力を蓄えている。

    風魔法の威力を高めたり,風魔法への耐性を高めたりすることができる。 

魔氷石 銀色の鉱石。氷の魔力を蓄えている。

    氷魔法の威力を高めたり,氷魔法への耐性を高めたりすることができる。


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