44 罠と精霊
なんだか時間があいてしまって話がずれていたらすみません。
楽しんで頂けると嬉しいです。
「どんな罠をつくるの?」
森の中を歩きながら、ロディはグリーに尋ねた。
「まずは普通に落とし穴にするか。」
「落とし穴なら魔法で作れるよ!」
嬉しそうに話すロディに、グリーはきょとんとして、にかっと笑う。
「そうか、ロディは魔法も使えるんだったな。でも、そうそう使ったらもったいないだろ。」
「でも、時間かからない?」
グリーの言葉に、ロディは首をかしげる。グリーは誇らしげに説明し始めた。
「かからないぜ。なんたって、別に穴じゃなくても、へこんだ土地でいいんだからな。」
「へこんだ土地?」
「窪地とか、木の根っことかな。ああいうところを隠しちまえば即席の落とし穴になるんだよ。」
「へえ~!!」
ロディが目をきらきらさせてグリーを見る。グリーはそばの木に巻き付いていた蔓をはぎとると,蔓の柔軟性を見ながら,輪を作ってみせる。
「で、こういうつるを使って、輪を作る。一度木にひっかけて,反対側に重石になりそうなものをくくりつけて、落とし穴の中にシーソーを作って、これでこっちを踏み抜くと、重石が落ちて自動的につり上げられる。」
「へえええ。」
ロディがグリーを尊敬のまなざしで見つめるが、グリーは苦笑して説明を続ける。
「まあ、人間がかかるのは最初の一回だけだろうけどな。」
「なんで?」
ロディがきょとんとして首をかしげる。
「誰かがひっかかったら、注意するだろ。」
「そうだね。」
「今回は魔物だからな。ひっかかるだろ。ついでにあいつらの餌をまく。」
「餌?」
「お前がさっき言ってたレックルヴァルクンの骨だ。」
グリーがにやっと笑って作った落とし穴の中に入れる。
「え?もしかしてたくさん持ってきてるの?」
「おう。俺もお前と同じことを考えてたんだよ。ジェインたちのはおとりでどっかにおいておいたらいいさ。ただ、後で俺もにおい消さないとまずいんだ。とりあえず、俺が持ってきた分だけ落とし穴と罠仕掛けるぞ!」
「うん!」
ロディは元気よく頷いた。少しの間にグリーが準備していたことに、ロディは感心していた。
そこからはグリーとロディは森の中を走り回って罠を仕掛けた。中には崖に落ちるようなものから、つり上げた先が茨の中などもあったが確実に仕留めるような罠を仕掛けることはできなかった。
「くそっ、そろそろまずいな。」
「うん、遠吠えが近くなってる。」
グリーは遠吠えの声に顔を上げ、空を見上げた。月の動きからそろそろ時間がないことを知り、ロディに声をかけた。ロディも魔物たちの遠吠えがどんどん近くなっているのを感じていた。
「引き上げるぞ、ロディ。」
「うん。」
「ロディ、においを頼む。」
「分かった。アネモス。」
ロディの風の魔法でにおいを拡散させると、二人は駆けだした。
急いで村へ戻ると、村は赤々と松明をつけ、戦闘態勢を整えていた。それでも、数少ない護衛と村の若い衆なので、どう見ても少ない。女子どもはすでに避難しているようだった。緊迫した雰囲気の中、ノワールウルフたちの遠吠えがどんどん近くなっていく。
「グリー、ロディ!!」
森から帰ってきた二人の姿を最初に見つけたのは、ジェインだった。
「ジェイン、そろそろくるぞ。」
「村の風下の離れたところにレックルヴァルクンの残りを放置してきた。あっちに流れてくれたらいいんだが。」
「風下か。流れて来にくいが、こっちに来られても困るな。」
グリーとジェインが話していると、フィズもやってきた。
「とりあえず、それぞれで闘うしかなさそうだ。協力体制は怪しいな。」
村人とは話ができたが、護衛たちとはうまくいかなかったらしく、フィズは肩を落とす。
「俺たちは俺たちの連携があるが、ロディ、お前はどうする?」
「私はまずは弓で援護するよ。みんなといる!」
「わかった。うまく合わせろよ!」
「うん。」
グリーに頭をなでられ、ロディはにこっと頷いた。
村の中から護衛たち、村の周囲に冒険者が森を臨む。村の若い衆は護衛たちとともに中にいる。そんな中ロディは弓を構えて呼びかけ始めた。
「精霊よ、共に生きる我が友よ。この地において、我が魔力を糧とし、手を貸しておくれ。偉大なる世界に住まう精霊よ。私の友よ。私に手を貸しておくれ。優しき、我が友よ。」
ロディの呼びかけと共に、弓が光り輝いていく。弓に描かれた小さな魔術陣がきらめくと、ロディの目の前に小さな小さな精霊が現れた。淡く光る精霊は宙を漂っている。美しく優しい光を纏いながら、いたずら好きな笑顔でロディを見ている。人の形を成したその精霊は,にっこりと笑ってみせた。
「わが友、ロディスティルリー=アポロス。久しく呼ばぬ間に大きくなったようだな。・・・おや、ロディアックもレイウッドもおらぬのか。・・・そうか、旅立ったのだな!」
精霊は周囲を見回しながら、ロディに矢継ぎ早に話を進めていく。相変わらず自由だなぁと思いながら、ロディはにこりと微笑んだ。
「ウーディさん、もう少ししたら魔物が来るんだ。手伝ってくれる?」
ロディの言葉に、精霊はロディの見つめる先の森を見た。
「おや、本当じゃのう。よいよい。ロディの手伝いをしようではないか。まずはブースト、ほい。そして、ホーミング。ほほいのほい!」
気の抜けるようなかけ声だが、確かにロディの体、そして矢に魔法がかかり、ぼんやりと光る。
魔物のうなり声はもう目の前に迫っていた。
設定44 精霊
世界のいろいろなものに宿る神秘の生命。そこら中にいる。精霊によって力が違うが、長く生きていて力があるものは天変地異を起こすことができる。
たまに、気に入った人間と交流する。
魔術師を嫌う精霊もいれば、好んで関わろうとする者もいる。気まぐれな精霊ならではの、気まぐれな手伝いなので、魔術師が呼んでも現れないこともある。人間に拘束できるような精霊はいない。たまに契約を結んで手伝ってくれる。でもやっぱり気まぐれ。
ロディの場合、レイウッドが契約した精霊が魔術陣を通して手伝ってくれているだけ。これも好意と好奇心のたまものでしかない。




