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37 神秘の泉

楽しんでいただけると嬉しいです。

「おい、バーツ、大丈夫か?」


レックがバーツに手を差し伸べると、バーツはその手を取って立ち上がる。


「ぐうう、痛えけど、大丈夫だ。」


背中と頭をさすりながらバーツが立ち上がったので、男たち3人は次の扉の前に立った。


「アビー、起きなさーい。」


「ふぇ?あ、ゾンビー!!・・・あれ?」


アビーはリリィに起こされてパニックになりかけたが、ロディに説明を受けてどうにか落ち着いた。


「それにしても、アビーはゾンビだめなのねぇ。スケルトンは大丈夫なのに。」


「リリィはゾンビ、闘ったことあるの?」


「あるわ。確かにグロテスクだけど、魔物は魔物よ。」


「そんなに割り切れないわ、私。」


ため息をつくアビーの背中をリリィがバンと叩く。


「まあ、試練も終わったことだし、もう大丈夫よ。」


「おおい、そろそろ行くぞ。」


「はーい!」


ケルディの声に、リリィたちは駆け足で向かう。


「さあ、いよいよ神秘の泉の登場か?」


レックが楽しそうに言うと、バーツものってくる。


「よし、行くぜ!」


バーツが扉を開けると、その向こうには広い泉があった。奥の方には湧き出しているところもある。上から下から突き出るような岩がたくさん見える。鍾乳洞のようだった。神秘の泉の水は、アビーの松明で明々と照らされていた。


「これが、神秘の泉?」


ロディがつぶやいた。ひんやりとした空気の中で、ぴちゃりと水滴の落ちる音がする。


「依頼の泉だな。」


ケルディがつぶやくと、かばんからごそごそと依頼されていた専用の瓶を取り出した。そして泉の中に入れて水を入れる。その横でリリィが手で水をすくって飲む。


「ふああ、冷たくておいしー!」


リリィの声に、みんなも手ですくって飲み始める。


「うまい!」


「これはたしかにうまいなぁ。」


バーツは二杯目を飲み始め、レックはかばんからいくつか瓶を取り出して入れ始めた。


「おいしくて、気持ちいいね!なんだか元気がでてきたよ!」


ロディはきらきらと反射する水を手ですくいながら、アビーに話しかける。


「そうね。これはまるで聖水だわ。教会のものとは少し違うけれどやはり神秘の泉の水だから効能がすごいのでしょうね。」


「病を治せるんだから、かなりすごいものだろ。しかし、帰りも同じ道を帰るのか?」


ケルディが首をひねって言うと、


「ええ?あの落とし穴を登るのかよ!!」


バーツが叫ぶ。


「ううん、違うみたい。あそこに魔術陣が見えるよ!」


ロディは、泉の反対側にぼんやりとひかる魔術陣を見つけて指さした。


「魔術陣だと?すごいな!!」


レックは急ぎ足で魔術陣へと近寄る。


喉を潤したみんなもレックの元へと歩み寄る。一番にたどり着いたロディは目を輝かせた。


「わあ、大きな魔術陣だね!」


直径が3mほどありそうな魔術陣が青々と光っていた。幾何学的な模様が並んでいるが、ロディには、どれがどんな意味なのかさっぱりわからない。


「ああ。・・・おそらく移動用の魔術陣だろう。」


「なんだかわくわくするね。」


レックの言葉に、ロディは目を輝かせる。


「ケルディ、依頼された瓶にはもう入れたんだろう?」


きらきらと目を輝かせているロディの横で、レックは振り返ってケルディに確かめる。


「ああ、大丈夫だ。」


「なら、この魔術陣を使って帰るぞ。みんな、魔術陣の上に立つんだ。」


みんなが魔術陣の中に入り始める。


「よし、帰ったら、肉食べよう、肉!!」


バーツは楽しそうに腕を上に振り上げる。それを見て、アビーが呆れたように注意する。


「バーツ、ちゃんと野菜も食べなきゃだめよ!」


「もちろんだ!肉も野菜もうまいよな。飯屋に行くのが楽しみだ、な、ロディ。」


「うん!お腹すいたから早く食べたいー!!」


ロディを味方につけたバーツは肉、肉と騒がしい。


「わかったから、バーツ騒ぐな。」


みんなが魔術陣の中に入ると、レックが魔力を操作して魔術陣を起動する。魔術陣の青々とした光がさらに強まり、描かれている幾何学模様が勝手に動き始める。すると、天井が開き、どんどん体がふわふわと浮き始める。


「うわ!」


「わあ!!」


「きゃあ。」


バーツ、リリィ、アビーが突然浮き始めた体に驚きの声をあげる。その横で、レック、ケルディは落ち着いて状況を確認している。


「おっ。・・・こうなるのか~。」


「転移ではなく、浮遊、なのか?それにしても、だいぶ奥に入ってきていたようだな。見たことのない部屋ばかりのようだ。」


そんな中ロディはくるくると空中遊泳を楽しんでいた。一回転、平泳ぎ、二回ひねり。まるで体操の選手のようにくるくると回ったり、周囲へと目を向けて、始めてみる上からの光景に静かに感動してみたりと1人で大忙しだ。


そして、最後の天井を抜けると、遺跡の裏側らしき外へと出た。


「やったー。久しぶりの外だー。気持ちいい!!」


「空気がおいしい!!」


「解放感あふれるぜー。」


「風が心地よいわ。」


バーツが伸びをし、リリィは深呼吸、レックは座りこみ、アビーは瞳をつぶって風を感じていた。


ふわりと地面に降ろされたロディは嬉しそうにケルディを見上げる。ケルディはなんとなくロディの頭をなでてやると、ロディはくすぐったそうに笑った。


設定37 移動用魔術陣

空間魔術陣は物の移動や、出し入れに使う。基本的に生モノは扱わない。

転移魔法はイメージがかなり重要になってくるので、生半可ではできない。

そのために、転移魔術陣が開発されているが、これも術者のイメージがなければ上手く作動しないものなので、通常のダンジョンには転移魔術陣はない。

そのために、ダンジョンには大抵浮遊や落下によってスタート地点に帰る移動用魔術陣が用意されていることがある。しかし、稀。多くの場合、行きと同じ帰り道をたどる。

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