32 謎が増える
楽しんでいただけると嬉しいです。
「真実の鏡、とやらには触れずに、別の道を行けってことだよな?」
「そうだろうな。」
レックが首をひねり、ケルディが頷く。
「まあ、よくわからないけどさ、真実の鏡ってやつがみつかったら触らなきゃいいんだろ?」
バーツのあっけらかんとした答えに、リリィが笑った。
「そうね。それでいいじゃない。ダンジョンの中を歩いてるだけで試練受けてるんだもの。」
「で、だ。とりあえずここに逃げてきたものの、どこから脱出するべきか。」
レックが話題を切り替えた。
「さっきのスケルトンフルコースはしんどいぞ。」
「ここはアビーの出番ね。」
「パージで蹴散らしちゃいましょう。」
ケルディの言葉に、リリィが笑顔でアビーを見た。アビーも笑顔で頷く。
「よし、じゃあ、アビー、行くぞ。」
レックが言うや否や、土魔法を解除する。
壁の前にいたスケルトンシュヴァリエをバーツとケルディが槍と剣で押し返す。
「ゲイルッ!!」
レックが風魔法で後続のスケルトンたちを翻弄し、ロディが弓で牽制する。
「いきますっ!パージッ!!」
アビーが唱えると、目の前にいたスケルトンシュヴァリエたちががらがらと崩れ、消え去っていく。後ろの方にいたスケルトンたちも消え去っていく。
「おお、すげー、圧巻。」
レックが感心して辺りを見渡す。
「綺麗になったねー。」
リリィも感心している。
「アビー、助かった。さあ、先に進もう。また出てこられたら困るからな。」
ケルディはアビーに礼を言うと、アビーを抱き上げる。
「きゃっ、何?ケルディ。」
アビーは驚いて固まる。
「休憩している暇はなさそうだ。居心地は悪いだろうが、我慢しろよ。」
「あはは、アビー、お姫様だっこね。いいじゃない。アビーのお手柄なんだから、ちゃんと休憩しないとね。ケルディ、アビーを落としちゃだめよ。」
リリィがにやにやと笑いながらもアビーをねぎらい、ケルディに注意する。
「ま、このままここで休憩してるわけにもいかないからな。移動ぐらいケルディに任せとけよ。」
レックも笑いながらアビーの頭をぽんとなでる。
「ここまでしてもらわなくても歩けるわ。」
「そういうなって、アビーがいないと俺たちクリアできないんだから、な。」
バーツもにこにこと笑ってねぎらう。
「アビーさん、大丈夫?」
ロディは普通にアビーの体を心配している。
「うん、平気よ。でも、やっぱり恥ずかしいわ。」
ケルディに抱っこされて、羞恥でアビーは頬を染めている。
「俺じゃなくて、バーツか、レックがよかったか?」
「ケルディ、そういう意味じゃないわ。」
ケルディが面白がって尋ね、アビーがふくれっ面で返す。
「まあ、アビー、最初にバーツに着いてきたんだものね。バーツの方がよかったんじゃない?」
「ちょ、リリィ!」
リリィが冷やかすと、アビーが顔を赤くして焦る。
「ん?おれか?代わるか?ほれ。」
バーツが全く気負いすることなく、両手を広げて見せる。
「もー、私で遊ばないでっ!」
アビーが怒ると、みんな「あはは」と笑う。
「アビー、かわいい~。」
リリィが笑ってアビーの額をなでる。
「もう、いつまでたっても子ども扱い~。」
アビーは怒りながらも笑顔だ。その間も一行は足をすすめている。
ロディはその輪の中にいながら、少しさびしく思っていた。
5人の中のよい姿をうらやましく思った。
またスケルトンシュヴァリエたちが現れ、戦闘になる。今回は2体だったので、危なげなく倒すことができた。その頃にはアビーもケルディから下してもらって歩いている。
「あれ?あれは何だろう?」
ロディが指さす先には文字が書いた大きな柱があった。
「ん?読めないな。」
バーツが見て首をひねる。
「神聖文字じゃない?アビー、読める?」
バーツの言葉に、リリィは文字を見ずに、アビーへ声をかけた。
「神聖文字じゃないわ。」
アビーは柱の文字を見て、首を振った。
「ああ、これは暗号だ。」
レックが文字を見て、楽しそうに笑った。
「暗号?」
ロディが目を瞬かせる。
「うん、バーツ、お前読めないんじゃなくて、意味がわからなかったんだろ?」
「おう。」
「レック、わかったのか?」
ケルディがレックに尋ねた。
「ああ。わかれば簡単だぞ。答えは、『右は真実の鏡、左は試練の扉』だ。」
「え~?どうしてわかったの?」
ロディが首をひねる。
「あはは、文字が一文字ずつずれてるんだよ。暗号でよくやるパターンだ。」
「そうなんだ~。」
レックの物知り具合に、ロディは感心する。
「で、その左と右とやらはどこのことなんだろうなぁ。」
ケルディは道の奥を見る。どこまで行っても一本道にしか見えない。
「確かに、どこだ?」
レックもさすがに首をひねる。
「とりあえず、進むしかないね。」
リリィが颯爽と歩いていくのにバーツとロディが続く。
「分かれ道だな。」
目の前に現れた分かれ道に、一行は首をかしげた。
「柱には、『右は真実の鏡、左は試練の扉』って書いてあったぞ。」
レックが思い出して声に出す。
「なのに看板が逆に書いてあるってどういうことだ?」
バーツが口に出したことが一行全員の謎だった。
目の前の分かれ道のど真ん中にある看板。
矢印の方向が『←真実の鏡、試練の扉→』となっていた。
設定32 神聖文字は神殿で使われている神から授かったとされる文字。
神官でも上級クラスでないと学べない。
そのため、一般の人は読めない。
神聖文字で書かれた聖書は魔よけにされている。




