16 二人の戦い方
まともな戦闘になるといいのですが・・・
二人は山の中を歩いていた。
祠があるだけあって、道ができていた。
「もうすぐだね。ウォークウッドはまだしも、ポイズンフラワーはやっかいだけど・・・イシュレイが抑えてくれる?」
ロディの問いに、イシュレイは頷いた。
「ああ。毒は風で抑える。この森の中では、炎はあまり使いたくない。」
イシュレイはロディへ返事をしていても周囲の警戒は解いていない。
魔力を察知できるよう密かにさぐっている。
「私はウォークウッドを剣と弓で抑えるつもり。」
ロディも普段通りに歩いているが、わずかにかかとをつけずに歩いている。
「つるに捕まるなよ。」
「ふっ、英雄になるんだから、そんなへまはしないよ!」
ロディは胸をはって答えた。とたん、ロディは弓を前方右斜め前に構える。
「イシュレイっ!」
「ああ、そっちはまかせるぞ。」
イシュレイはロディの声と弓の方向を確認すると、左斜め前に杖を構える。
森の木々の向こうに魔物の姿を認識した瞬間、二人は攻撃を開始した。
ロディは無言のうちに弓を何本も射る。木々の奥で動いているウォークウッドへと弓が刺さっていく。が、固い幹にはあまり効果は無いようだ。
「イシュレイ、どうする?!」
「二つの距離が遠すぎる。こっちを先に片付けるぞ!」
「わかった!」
イシュレイが相手をしていたポイズンフラワーへ二人は駆け寄る。
木々の間を駆ける二人の足は、全く滑る様子がない。
「ヴォルテックスサークル。」
ポイズンフラワーへ風の魔法を放つイシュレイだが、風の渦で花から出る毒の拡散は抑えきれても、攻撃に乏しい。
「行くぞっ!」
ロディがポイズンフラワーへと駆け寄り、ポイズンフラワーのつるに斬りつける。
ポイズンフラワーはつるでロディを捕まえようとするが、
「フリーズ!!」
イシュレイがつるの先から凍らせていく。
「やあっ!」
イシュレイが凍らせたつるを、ロディがショートソードで切り払っていく。
その間もイシュレイの風はポイズンフラワーの花の周囲を取り囲んだままだ。
「ちっ!アイシクルっ!!」
イシュレイは追いついてきたウォークウッドの気配に気づき、ウォークウッドへと放つが、外れも多い。いくつか当たって枝を砕いているが、あまり効いていない。
イシュレイは風の魔法を維持しつつ、ロディの援護をしているのだ。
手が回っていない。
「ロディ、急げ!!」
「わかってるっ!!」
ロディはようやく全部のつるを斬り、本体の茎へと迫る。
「おりゃあっ!!」
ロディのショートソードが3閃する。
ポイズンフラワーの茎が3つに斬れて、どさりとその場へ落ちた。
イシュレイが駆け寄り、かばんから小瓶を取り出した。
「インヘイル」
風に包まれたまま、毒素を小瓶に封じ込める。
「すっごー。」
イシュレイの魔法の手際の良さに、ロディは思わず魅入っていた。
「あほ、こっちはいいからウォークウッドだっ!」
「うん。」
イシュレイに怒鳴られながら、ロディはウォークウッドに向かって斬りつける。
枝を伐り、根を切り、しなる枝をかいくぐり、まるで踊るように幹へと向かう。
「フリーズ!」
イシュレイは再び、ロディを援護しながら、自らももう一体のウォークウッドに向かう。
イシュレイはローブの中から金属製の杭と金槌を取り出すと、ウォークウッドに打ち付ける。
襲って来る枝は全てフリーズで凍らせていく。
打ち付けるとイシュレイはぱっと離れて呪文を唱えた。
「トニトリス。」
金属の杭に描かれた魔法陣が起動して、雷のような電圧がウォークウッドに与えられ、ウォークウッドは黒こげになって倒れた。
隣ではロディはウォークウッドの枝という枝を刈り取り、根を切り取って、ウォークウッドを横倒しにしていた。
イシュレイの闘いぶりを隣で見ていたロディはふと腰の短剣を手に取った。
「ボルトッ!」
ロディは幹に短剣を突き刺すと、ぱっと離れながら雷のような電圧を魔法で流す。ウォークウッドは黒こげになった。
「へへん、イシュレイのまね。」
「ほう、意外とやるな。」
闘いながらロディの戦い方を見ていたイシュレイはふっと微笑んだ。
「っていうか、杭なんて持ってたんだ。」
不思議そうにロディが尋ねると、イシュレイは素直に答えた。
「空間魔法で取ってきた。」
「家から?」
「いや、武器屋。」
「泥棒じゃん!!」
イシュレイの言葉に、ロディが目を見開いて叫ぶが、イシュレイはうるさそうに答える。
「一応使った分だけ支払いはしている。」
「便利だなぁ。」
「アーヌベルグ家が懇意にしている店だ。お前が軽々しく使える店ではない。」
「別にいいよ。自分で必要なものは用意してるから。」
ロディとイシュレイは黒こげになったウォークウッドとポイズンフラワーを空間魔法で片付けると、祠へと向かった。
「祠には異変はなさそうだな。」
「う~ん、しばらく人が入っていないみたいだから、掃除しようよ。」
「は?俺たちは討伐依頼を受けただけだ。掃除なんか頼まれていないぞ。」
「祠ってことはここに神様が奉られてるんだよ。だから、ちゃんときれいにしないとね。」
ロディはさっさと祠の周りの埃を払い、草を抜く。
その様子をイシュレイは眺めて休憩を取ることにした。
「イシュレイも手伝ってよー。」
「俺は依頼以外のことはしない主義だ。」
「えー、まあいいや。」
ロディはイシュレイを誘うのはあきらめ、さっさと掃除を続ける。
元々長期間人が来てなかったわけではないので、すぐにきれいになった。
「うん、一仕事したら気持ちいいね。」
「お前、損してそうだな。」
「そうかな?さ、お待たせ。掃除もできたし、討伐もできたし、帰ろうか。」
「ロディ、水くらい飲んでいけ。それくらい待ってやる。」
ロディはイシュレイに言われて、腰につけていた水筒から水を補給する。
「あー、おいしっ!ありがと、イシュレイ。」
にこっと笑うロディをちらりと見て、イシュレイが歩き始める。
その後ろからとことことロディは追いついて、二人は王都へと帰って行った。
設定16
森の中で炎系の魔法は使いがたい。山火事につながりやすいからだ。
よほどの火力でなければ山火事になりはしないが、冒険者の用いる火力は結構なものになるため、魔物が木に倒れかかったり、火の粉が舞ったりしたときに乾燥していると手がつけられなくなる。
たいてい水系の魔法で消してしまえば問題ない。
ただし、雨のように降らせることのできる魔法使いは多くはない。
雷の魔法が使える者は少ない。雷のイメージがしにくいからである。
イシュレイが使えるのは賢者から、ロディは母が使っていたからである。




