Quiet talk 不可視の刃
※番外編です
「おい、なんか良い匂いしないか?」
ゴブリンの上位種であるゴブリンルーラーのジェネルは声を上げた。
「確かに……肉が焼ける匂いだな」
今度は別の上位種、ゴブリングラウザムのルジェアが呟く。
「腹が減る匂いだけどさ。
これからディルティーナ王国に潜入して召喚者たちを誘拐する手引きをするんでしょ? ボスに怒られるよ」
ゴブリンヴァリアントのアジェカナが注意をした。
「少しくらい遅れて平気だって。ボスからの指令は騎士たちの撹乱だろ? 俺たちなら余裕だって」
ルジェアがそう言い返した。
「僕は知らないですよ」
アジェカナがそう言葉を漏らす。
「この匂いの所に行ってみようぜ」
ルジェアがそう言い、ジェネルが賛成した。
アジェカナはため息をつきながら後を追った。
■ ■ ■
ゴブリンヴァリアント、ゴブリングラウザム、ゴブリンルーラーはゴブリンの変異種から進化した上位種である。
通常の進化とは一線を画し、より強く、より強力な存在へ進化を果たした個体。
Aランクを超え、Sランクに匹敵するとも言われている。
そんな彼らは今、死の淵に立たされていた。
匂いの元にやって来た彼らの前には、ゴブリンキング率いる群れとフォレストウルフの群れが一心不乱に火の中から肉を奪い合っている光景が広がっていた。
「みんな、匂いに釣られてやってきたのかな?」
アジェカナがそう述べた瞬間――
近くにいたゴブリンキングの首が飛んだ。
「……は?」
一瞬、誰も状況を理解できなかった。
「警戒!!」
ジェネルが叫ぶ。
その直後――ルジェアの首が飛び、地に落ちた。
「……っ!?」
血が噴き上がる。
だが、敵の姿は見えない。
「なに……これ? なにが起こっているの?」
アジェカナの声が震える。
視線を巡らせる。
だが、何もいない。
気配も、魔力も――感じ取れない。
「どこだ……?」
そう呟いた瞬間――
ジェネルの首が飛んだ。
「――っ!!」
理解が追いつかない。
考えるより先に、本能が叫ぶ。
(逃げ――)
その時だった。
一瞬だけ、“何か”が見えた。
空気を裂く、不可視の刃。
「風魔法……」
そう呟いた時には、自分の首が飛んでいた。
視界が回転する。
空を舞いながら、自分の体が遠ざかっていくのが見えた。
そのまま――意識は闇に消えた。
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