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無気力系召喚者、覚醒する  作者: 火川蓮
第六章

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Quiet talk 辿り着けぬ獲物

※番外編です

森の奥――

昨日の戦場には、まだ濃く血の匂いが残っていた。

風に乗って広がるその匂いは、獣たちにとって抗えぬ誘いだ。


最初に現れたのは、ゴブリンの群れだった。

地面を這うように進み、鼻を鳴らしながら血痕を辿る。

確かにここで何かがあった――そう確信しながら、周囲を探る。

だが、どこにも獲物はない。


苛立ったような声が上がった、そのとき。

低く唸る気配と共に、森の影からフォレストウルフが現れた。

鋭い牙を剥き、迷いなくゴブリンへと飛びかかる。

悲鳴が上がる。

小柄な体が宙を舞い、地面に叩きつけられる。

血の匂いはさらに濃くなり、争いは一気に激しさを増した。


ゴブリンたちは数で押し返そうとし、

フォレストウルフは連携して一体ずつ仕留めていく。

だが――

その上空。

大きな影が、静かに旋回していた。

黒鷲――ブラックアクィア。


黄金の瞳が、地上の争いを冷たく見下ろしている。

その視線は、獲物を探しているようでいて――どこか違っていた。


血の匂いはある。

だが、本来そこにあるべき“肉”が存在しない。

一瞬、翼が止まる。

理解したかのように。

黒鷲は大きく羽ばたき、地上へ降りることなく、その場を離れた。


残されたのは、争い続ける魔物たちだけ。

奪い合い、噛み合い、喰らい合う。

だが、その中心にあるはずの獲物は――どこにもない。


ただ血の匂いだけが残り、

戦場は再び、無意味な争いに塗り潰されていく。

辿り着いたはずの獲物は、

すでにこの場から消え去っていた。

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