chapter38 王を失った群れ
side:ゴブリン
キングとジェネラルは、今後の方針について話し合っていた。
「ボス、これからどうしますか?」
ジェネラルが問いかける。
「そうだな……食料の確保も兼ねて、人間の国を襲うか。女も連れて帰る」
キングは当然のように言い放った。
「そいつはいい」
ジェネラルが下卑た笑いを上げた――そのときだった。
「……なんだ、あれは?」
ふと、ジェネラルが空を指差す。
「どれだ?」
キングが振り向いた瞬間――
風が走った。
次の瞬間、キングの首が宙を舞い、隣にいたジェネラルの身体が真っ二つに裂けた。
血飛沫が遅れて噴き上がる。
「――敵襲!! 敵襲だ!!」
残ったジェネラルが絶叫する。
「サージェント!! ゴブリンたちを纏めろ!! 急げ!!」
ナイトの一体が怒鳴る。
だが、すでに遅い。
ボスを失った群れは、一瞬で混乱に陥っていた。
逃げ出す者。
その場で立ち尽くす者。
状況を理解できず、叫ぶだけの者。
そして――敵の姿が視認される。
「人間……だと?」
ナイトの一体が目を見開く。
それは――空を駆ける“人間のガキ”だった。
「ふざけるなッ!! 叩き落とせ!!」
サージェントが怒号を飛ばす。
ゴブリンたちは石や棍棒を必死に投げつける。
だが、そのどれもが届かない。
空を駆ける人間は、逃げようとするゴブリンを正確に撃ち抜いていく。
一方的だった。
「逃げるな!! 隊列を崩すな!!」
サージェントが必死に叫ぶ。
ナイトもまた、崩れかけた陣形を立て直そうとする。
だが――恐怖が、それを上回る。
逃げ惑うゴブリン。
無理やり押し留める上位種。
空から降り注ぐ、見えない死。
統率は保たれているはずだった。
それでも――その戦場は、すでに地獄と化していた。
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