デート
俺はつくづく流されやすい性格なんだなと我ながら情けなくなる。
「デートってどういうことですか!?」
と問いかけるも、ミレイさんは俺の腕をがっしり掴むと寄りかかって歩き続ける。
「彼女はいる?」とか「休みの日は何してるの?」とか質問攻めにしてくるが俺の質問はガン無視だった。唯一答えてくれたのはなぜ姉妹そろって独特な格好をしているのかということだけ。それに対してはミレイさん曰く「家の決まりごと」なのだそうだ。
周りの視線が気になる。
ミレイさんは、
「あっそうだカイルっち。元彼追い払ってくれたお礼に何か一つだけなんでもしてあげる」
とウィンクをしてみせた。
男なら誰もが羨む魔法の言葉も今は耳に入ってこない。
「おーい。聞いてるカイルっちー?」
ミレイさんが下から覗きこんでくる。顔が近い。声がでかい。胸もでかい。
この人にはパーソナルスペースってものがないのか。っていうか会ったときから呼んでるカイルっちってなんなんだ。
もともと目立つのが苦手でコミュ障だった俺にとってこの状況は拷問に近い。衆人環視の中きれいなお姉さんにいいようにもてあそばれているようだ。キングゴブリンよりよっぽど手強い。
ミレイさんにしなだれかかられながら二十分は歩いただろうか。ひたいの汗をぬぐっていると、
「じゃーん! デートっていったらやっぱここっしょ」
ミレイさんが両手を前に広げ、とある店を見上げた。
そこにはカラフルな店構えをした雑貨屋があった。
ミレイさんは俺の手を取ると俗にいう恋人つなぎにして店の中に入っていく。自然と俺も店の中へ。
女性客ばっかりだな。
店の中は原色しか使ってないような目がチカチカするつくりになっていた。置いてある小物も無駄に色が鮮やかだった。
俺の目からは悪趣味な物ばかりに見えるのだが、ミレイさんは言葉を一つしか憶えていないオウムのように「チョーかわいい!」と連呼している。
結局その店には一時間半もいた。後半は俺も店の一部のようにフリーズして固まっていた。
ミレイさんが「お腹が減ったし~」と言うのでファストフード店で昼食をとることにした。そこまでの移動中もずっと恋人つなぎのままだった。皆がこっちを見ているような気がする。モテてこなかった男の性だな。
ファストフード店では俺の口についたソースを「もうしょうがないなぁ」と言いながら紙ナプキンでふいてくれたりもした。付き合うってこういうことなのかなと思い始めた矢先、
「もういいかな」
ポツリとミレイさんが言った、ような気がした。すると、
「カイルっち今日は楽しかった、ありがとー」
とミレイさんは席を立ち俺にキスをすると店を出て行った。
こうして俺の初デートは終了した。




