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フレインをかけた決闘

ヨルンガルドとの約束の時間に広場に行くとすでに多くの人だかりができていた。ほとんどは若い女性でその中心にいたのはもちろんヨルンガルドだった。

ヨルンガルドは俺とフレインに気付くとこっちに向かって歩いてくる。


「逃げずに来たことは褒めてやるよ」


黄色い声援を背にヨルンガルドが俺の前に立つ。腰に差していた剣を抜き、俺の眼前に突き出した。


「さあ、始めようか」


「キャー」と周りの群衆から声が飛ぶ。どこまでも画になる奴だ。

武器を持っていない俺は少しだけ魔力を高めるとそれを体に纏った。いくら決闘とはいえ手加減をしないわけにはいかない。相手はキングゴブリンじゃないのだから。


「カイルさま」といつになく心配そうに俺をみつめるフレイン。俺は「大丈夫」と一言。


「いくよっ!」


そう言うとヨルンガルドは真一文字に斬りつけてくる。


「!?」


思っていたより動きが早い。俺は紙一重で飛び退いた。


「つっ!」


よく見ると服がスパッと切れていた。そこから血がにじんでくる。


「まだまだっ!」


一方的に斬りかかってくる。なんとか見切ってかわすものの、ヨルンガルドの動きはどんどん早くなっていく。

おかしい。ヨルンガルドの魔法力は100だったはず。しかし今の奴の動きは魔法力100のそれではない。

俺は攻撃をかわしながら目を凝らしヨルンガルドをみた。


魔法力3400!?


ありえない数値に俺は一瞬固まる。その隙を逃さずヨルンガルドはフェンシングのように鋭くおれの喉元を突いてきた。


ぶしゅっっ!!


不覚。完全にはかわしきれずに首から血が噴き出る。

俺は魔法で傷を治そうとするが、その時間もヨルンガルドは与えてくれない。

みるとヨルンガルドの魔法力は3700に上がっていた。


その間も剣の波状攻撃が続く。俺は防戦一方になりながらも少しずつ体に魔力を集中させていった。そしてやっとそのからくりに気付く。

ヨルンガルドの後ろにいる大勢の若い女性たちは皆貴族だったのだ。


一時的に魔力を誰かに分け与えること。それ自体はそんなに難しいことではない。だがそのコントロールは難しく、一歩間違うと自らの魔法力全てを持ってかれてしまう恐れがある。それ故ほとんどの貴族(魔法使い)は他人に魔力を分け与えることなどしない。

しかしヨルンガルドに声援を送っている貴族の女性たちはそんなことを恐れず、自らの魔法力をヨルンガルドの体に送り続けていた。


「おいっ、卑怯だぞっ」


「さて、なんのことだい」


とぼけながらも攻撃の手は休めないヨルンガルド。

いいさ。そっちがその気なら――。


「ちょっとだけ本気を出すぞ」


俺は魔法で突風を作り出しヨルンガルドめがけて放った。ヨルンガルドはなんとか突風をこらえるが後退していく。後ろにいた女性貴族たちは風圧に耐えきれずに全員飛ばされる。

俺とヨルンガルドの距離が広がった。俺はさらに魔力を集中させ、全身に纏わせた。


「な、なんだいその魔力は!?」


俺の膨大な魔力を肌で感じ取ったヨルンガルドはたじろいで後ずさりする。


「きみは一体な――」


「はっ!」


俺は手から衝撃波を繰り出した。

衝撃波がヨルンガルドを襲う。

ヨルンガルドはその衝撃に耐えきれずに気を失って倒れた。


「カイルさまっ」


フレインが駆け寄ってきて抱きつく。


「いててっ」


腹のあたりが痛い。そういえば斬られてたんだっけ。俺が回復魔法をかけようとすると、


「わたくしにやらせてください」


とフレインが回復魔法をかけてくれた。みるみるうちに傷がふさがっていく。あたたかくていい気持ちだ。


「それじゃうちに帰るとするか」


「はい。カイルさま」


こころなしかいつもより優しい笑顔をみせたフレインだった。

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