ソフィの決意
「いい加減あたしも依頼に参加させてほしいっス!」
とソフィが詰め寄ってくる。さらに一週間も前の話を持ち出してくる。
「エレナさんは師匠と依頼やったんスよね」
「エレナは成り行き上仕方なくだ。まあ適当な依頼があったらな」
と言いくるめる。ソフィには出来ればずっとアイリスさんのホテルの手伝いをしていてほしい。アイリスさんも喜ぶし、俺も厄介ごとが少なくて済む。
夕食を済ませた後自分の部屋でくつろいでいたところに、ソフィがドアを突き破らんばかりに入ってきたのがついさっきのこと。
「本当っスね、約束っスよ師匠」
うー、とまだ不満ありげなソフィはなかなか部屋を出て行こうとしない。なんなんだ。
「……師匠、あたしに嘘ついてないっスよね? ホテルで働かせるために弟子にしたんじゃないっスよね?」
ジトッとした目で俺の目を見てくる。やばい、ばれてる?
俺は取り繕うように、
「そ、そんな訳ないだろたまたまいい依頼がみつからないだけだって。もしあったらすぐにでも――」
「カイルさま新しい依頼ですっ!」
フレインがくしゃくしゃにした依頼書を握りしめて部屋に飛び込んできた。
「依頼っスかっ!」
ソフィが即座に反応する。ソフィが猫だったら耳がピーンとなっていることだろう。
「そうです。実は……」
フレインによるとギルド直々に依頼を申し渡されたのだそうだ。なんでもこれまでの実績を評価してのことらしい。しかもブロンズランクにギルドが直接依頼をするということはかなり稀なことなのだそうだ。
でもだとしたら……。
「けっこう大変なんじゃないのかその依頼」
と俺が当然の疑問を口にした。
「全然そんなことありません。カイルさまはギルドに認められたのですよ。カイルさまならばどんな依頼でも問題ないはずです」
「いやそういうことを言ってるんじゃなくてだなぁ……」
「師匠あたしもやりたいっス!」
ソフィが目を輝かせて訴えてくる。
「……いや、だから……」
「カイルさまっ!」「師匠っ!」
二人がぐいっと距離を詰めてくる。
顔が近い。息がかかるかどうかというところまで近づいてきて……。
「…………あ~~~、わかったよ。その依頼受けるよ、ソフィも一緒にな」
「カイルさま」「やったーっス!」
ソフィはこれでもかというくらい何度も何度も飛び上がって喜んだ。下の階にお客さんがいるんだからやめなさい。
「これでいいんだろ」と俺は小さく吐き捨てた。いつもながら押しに弱い性格が悔やまれる。
「あっそういや依頼の内容聞いてなかったな。どういう依頼なんだ?」
「ゴブリンの群れの討伐です。近くここレンゼン市内にゴブリンの群れが侵攻してくるという情報があり、手練れの冒険者たちに声をかけているようです。なので今回の仕事はゴールドランク、シルバーランクの方との合同任務になります」
「それって危険なんじゃないのか。やっぱりソフィは――」
「あたしは行くっスよ。この依頼はアイリスさんたちを守ることにもなるっスから」
とソフィの決心は揺るがない。仕方がない。俺の魔法で一時的に身体強化してやればいいか。
ぎゅっと拳を握りしめるソフィを見ながら俺はそんなことを考えていた。




