私刑大作戦
「なんですかこの格好はっ!?」
俺はフレインにバニーガールの格好に着替えてもらった。ちなみに衣装はアイリスさんの私物だ。
「よく似合ってるじゃないか」
本当によく似合っている。恥じらう姿も最近は板についてきている。普段からこの格好にさせていれば、押しの強い性格も少しは直るかもしれない。
エレナの姉の元彼(浮気男)はかなりの女好きだという。だったらバニー姿のフレインに目を奪われないはずがない。
「こんなの、ただの変な人だと思われるだけですっ!」
「セクシー」
「ほらエレナも褒めてるぞ」
「嬉しくありません!」
作戦はこうだ。
まずバニー姿のフレインが浮気男を人気のないところまで誘い出しエレナがそいつと対峙する。そして俺は物陰からエレナに魔法で力を貸す。あとはエレナが自ら制裁を食らわせるという筋書きだ。
今日は浮気男は男3女3の飲み会に出席している。俺が生前縁のなかったいわゆる合コンてやつだ。
おーおー楽しそうに自己紹介なんてしちゃって、これからどうなるかも知らないで。
俺たちはそれぞれの持ち場についた。ここからの会話は魔法を使っての念話でやりとりする。
「準備はいいな?」
「いい」
「良くありません」
浮気男は真ん中の席に座り、両隣にはいつも一緒にいる取り巻きのような奴らが座っている。対面には派手目な化粧の女子が三人席についている。
俺はそんな六人が見える位置に席を取っている。取り巻き(大)がボタンを押し従業員を呼ぶ。よし、今だ!
「ゴー! フレイン、ゴー!」
「んもう」という声がしてフレインは、身を隠していたトイレから出てきて注文票片手に六人のテーブルへ向かった。
「お、お呼びでしょうか?」
フレインがウエイトレスになりきる。
突然あらわれたバニー姿のウエイトレスに六人は目を丸くしている。とりわけ男どもの視線が熱い。
「あのう……」
「やっぱり無理ですっ!」
女子の一人が声をかけようとしたところでフレインは退場してしまう。
「さっきのなにあれ……」「ヤバくない?」「ヤバいよね」と女子たちがざわめき立つ。
使えない奴め。……と思ったら取り巻き(小)が「ちょっとトイレ」と言い、男どもが三人同時に席を立った。トイレで作戦会議でも開くつもりか。
俺は男子トイレの前の通路に先回りした。
この居酒屋のトイレまでの通路は奥ばっているので何か起こっても周りからは気付かれにくい。
おっ来た来た。鼻の下を伸ばした男どもが「えっろ」「はははっ」とか言いながら歩いてくる。前から浮気男、取り巻き(小)、取り巻き(大)の順番だ。
俺は浮気男が男子トイレに入るのを確認してから取り巻き(小)の首に目にもとまらぬスピードで手刀をくらわす。
トンッ
取り巻き(小)が倒れそうになるのを俺が支えてやると、取り巻き(大)が「どうした?」と不思議そうに取り巻き(小)の顔を下から覗き込む。その瞬間、俺は取り巻き(大)のあごに膝蹴りを繰り出す。もちろんかなり手加減してだ。
取り巻き連中を掃除箱に押し込んでいると男子トイレの中から浮気男の悲鳴が聞こえた。ドアのガラス部分から覗くと、エレナが浮気男を魔法で宙に浮かせていた。
「なんだお前っ、なにしやがるっ!」
「お姉ちゃんのかたき」
と言ってエレナが浮気男に魔法弾を放った。威力はなかなかのものだ、だが。
バシュゥゥ
と浮気男に当たる前に消滅してしまった。浮気男がバリアを張ったのだ。
俺は目を凝らしてみた。浮気男の魔法力は150。だてに有名貴族のボンボンじゃないな。
浮気男がゆっくりと着地すると、
「さっきは不意をつかれて驚いたが、オレはマイアー家のコンラッドさまだぞ。女に負けるわけないだろボケ」
といやらしい笑みを浮かべる。
「お前綺麗な顔してるな」
コンラッドがエレナの頬を撫でる。エレナは微動だにしない、というより魔法で動きを封じられていて出来ないのだ。
「んっ」
いやそうに目をつむるエレナを執拗に撫でまわすコンラッド。さすがに見てられないな。
俺はコンラッドよりも一層強い魔力をエレナに飛ばした。途端にエレナが動けるようになりコンラッドから離れる。
「なにっ! 俺の魔力がはじかれただとっ!?」
驚くコンラッドを尻目に俺はエレナの体に魔力を分け与えた。エレナの魔法力が40から500に膨れ上がる。
「!?」
「エレナ今なら勝てるぞ」
俺の声で我に返ったエレナがコンラッドに渾身のビンタを――。
「お前の攻撃なんて俺さまのバリアでぶぶふぃぃっっ!!」
お見舞いした。
コンラッドは個室の扉に顔を打ち付け泡を吹いて倒れた。
俺はドアを開けエレナに向かって拳を突き出してみた。するとエレナはトンと拳と拳を当てると何も言わずそのまま男子トイレを出て行った。




