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本土防衛戦開始 その1 第10章 陸軍三長官会談

 みなさん、おはようございます、、こんにちは、こんばんは、お疲れ様です。

 大日本帝国陸軍省。


 陸軍省庁舎にある会議室。


 小さな会議室であるが、室内の調度品は、かなり豪華である。


 その部屋に、3人の陸軍軍人が集っている。


 陸軍大臣の東条(とうじょう)英機(ひでき)大将、参謀総長の杉山元(すぎやまげん)大将、教育総監の山田(やまだ)(おと)(ぞう)大将といった、陸軍三長官が顔を揃えていた。


「連合国による、本土攻撃が始まった・・・」


 東条が、口を開いた。


「これらについては、彼らの予想通りであったが・・・事態は深刻なものだ」


 東条は、兵卒たちが用意した緑茶を飲む。


「ベルリンにいる大使館付陸軍武官を経由して、情報提供者からの情報では・・・彼らの太平洋・インド洋・南米大陸での作戦行動が、枢軸国に危機感を与えている・・・独国は、中立国を通じて英国や米国と会談を行っているそうだ」


「これも、彼らの予想通りですな・・・大臣」


 杉山が、つぶやいた。


「彼らは米国、英国、蘭国だけでは無く、ソ連、独国にも戦争を仕掛けるつもりのようです」


 杉山は、羊羹を一口サイズにした。


「いやはや・・・彼らが我々に接触する前は、独国及び伊国と同盟関係を結び、米英蘭と全面戦争をするはずだったのが、彼らと接触した状態で、米英蘭ソ独との全面戦争になるかもしれない・・・頭の痛い事ですな」


 山田が、額の汗をハンカチで拭いながら、つぶやいた。


「しかし、大臣、総長。陛下に対して、北樺太への侵攻を具申されたとは・・・」


「陸軍の若手軍人官僚どもが、うるさいのでな・・・」


 東条が、つぶやく。


「連合国に帝国本土が攻撃された・・・これは蒙古襲来以来の国家存亡の危機である。黒船来航以来の危機は、蒙古襲来と比べれば大した問題では無かった・・・鎌倉時代・・・軍備は貧弱であり、外敵に対して対抗出来る手段は無かった・・・たまたま蒙古が日本に対して侵略する気が無かっただけだ。黒船来航に関しては、軍備は不備であったが、各藩の軍は幕府の命令で、準備されていた。4ヵ国艦隊の襲撃もあったが、我が国が崩壊する事は無かった」


「大臣の歴史認識では、そういう事でしょうが・・・私としては、黒船来航以来も蒙古襲来も、日清戦争、日露戦争に匹敵する国家の存亡の危機だと思います。今の状況は、それらの記録とは比べ物にならないほどの危機です」


 山田が、一口サイズの羊羹を口に運ぶ。


「うむ・・・この抹茶味は、かなりいけるな」


「これも、彼らの和菓子店が作った和菓子です」


「ほぅ・・・我が国の食文化も軍事文化、警察文化と変わらず、侵略されている、という事ですな・・・」


 山田が、緑茶を飲む。


「陸海軍だけでは無く、警察、スポーツ、教育の世界が、彼らの侵略を受けている・・・そして、我々には、それに対抗する術が無い」


「まあ・・・その話は、追々にするとして、これからの問題について議論しなければならない」


 東条が、緑茶を飲み干す。


 すると控えていた兵卒が、空の湯飲みに緑茶を注ぐ。


「スヴァボーダ連合軍は、南樺太と千鳥列島を拠点に、カムチャッカ半島に侵攻しようとしている。その際に樺太統一のために、彼らのみで行わせていては、我々は、連合国との戦争に勝利しても、彼らの傀儡国家と叫ばれる」


 東条の言葉に、2人の陸軍大将が頷く。


「北樺太への侵攻計画ですが・・・」


 杉山が、樺太の地図を広げた。


 地図上に、駒を配置した。





「樺太の戦況です」


 杉山が、報告する。


「まず、ソ連軍は大規模な砲兵部隊による砲撃を実施しましたが、幽霊総隊陸軍砲兵部隊による精密砲撃で、沈黙しました。砲撃と同時に戦車、歩兵、工兵の連合部隊による威力偵察が実施されました。国境方面に展開した国境警察部隊と第88歩兵師団歩兵部隊による防衛線で、突破を阻止しました。しかし、彼ら及び警察要員に若干の死傷者が発生しました」


「捕虜になった者は・・・?」


「行方不明者の中に、いないとは申し上げられません」


 東条の言葉に、杉山が答えた。


「国境警備には彼らの警察機関も存在していた。彼らの中に捕虜が出た場合、厄介な事になるのではないか?」


「その辺に関しましては、彼らからの情報提供がありませんので、何とも・・・」


「ふむ・・・」


 東条は、口髭を撫でる。


「北樺太の飛行場からソ連空軍の戦略爆撃機及びアメリカ陸軍航空軍の戦略爆撃機が離陸し、南樺太及び北海道北部地方を空襲しました。しかし、陸軍航空隊と海軍航空隊、航空予備軍の迎撃戦闘機が迎撃しました」


「戦略爆撃機の機種は、未確認情報では新型の戦略爆撃機という情報も・・・」


「いえ、B-29ではありません。戦略爆撃機は、B-17でした」


「B-17か・・・」


 杉山の報告に、東条がつぶやく。


「では、護衛戦闘機は?」


「P-38でした」


「彼らの話では・・・戦略爆撃機による大編隊の空襲は、彼らの陸海空軍及び、我が帝国陸海軍、航空予備軍だけでは絶対に迎撃出来ないと主張していました」


 山田が、つぶやく。


「教育総監」


 東条が、山田に顔を向ける。


「陸軍大学の研究生たちに、彼らの記録と、この大戦で登場する兵器を見てもらった。その研究結果は・・・?」


「はい、陸大研究生及び民間大学の研究生たちにも協力してもらい、研究しましたが・・・彼らの登場によって、兵器の進歩は、格段に早まるでしょうと・・・」


「では、独国、米国が研究中である原子爆弾については、登場が早まると・・・?」


「その件については、アメリカは少し早まりますが・・・独国は、早急に開発するでしょう・・・そして、インド太平洋の戦況と南米大陸の戦況を考えますと、独国は、ソ連に対して使うのでは無く、我が国に対して使うのではないか・・・と、予想します」


 山田が、緑茶を飲みながら、答える。


 正直、この研究結果は素面で言えるものではない。


 山田の苦い表情は、緑茶の渋みだけではないだろう。


「参謀本部でも、独国がソ連に原爆を提供する可能性があるのではと、危惧をしています」


「その理由は・・・?」


「ソ連は、モスクワまで攻略された事によって、独国と休戦条約を締結出来ないか、中立国及び米国、英国と交渉しています」


「・・・それで」


「独国では、ロンメル元帥によるモスクワ攻略で、ソ連との戦争は十分過ぎる戦果を残したと政府、軍部にも意見があるようです・・・それと、我が帝国と我々に手を貸している勢力に危機感を持っています」


「ふむ」


 東条は、杉山の言葉に口髭を撫でた。


「世界の情勢は、太平洋と大西洋で争いが行われているから、我々も事態を有利に進めているが、大西洋での争いが無くなり、太平洋だけになった場合、いくら我々が彼らの勢力を味方につけているといえども、戦争に勝つ事は困難だ」


「彼らは、元からその気ですが・・・」


 山田が、告げた。


「そのためにも、我々が樺太を統一するのは、急がなくてはならない」





 東条は、杉山と山田による陸軍三長官での会談をした後、陸軍省所有の公用車に乗り込んだ。


「自宅に」


 東条は、運転手につぶやいた。


「わかりました」


 前後を陸軍憲兵隊の自動二輪車と自動車に囲まれた状態で、自宅に向かった。


 恐らく見えないところで、国家憲兵隊の国家憲兵と日本共和区統合省法務局公安調査本部の調査官や悪霊団の公安警察官が、東条を監視しているだろう。


「まあ、裏を返せば・・・それは無実の証明になる訳だが・・・」


「は?」


 運転手である兵卒が、反応した。


「いやいや、何でもない」


「そうですか・・・」


「貴官は、私の運転手として勤務する前は、どこの戦地へ行った?」


「自分は、陸軍に徴兵されてから、ずっと内地の勤務です」


「ほぅ。戦地には、行かなかったのか?」


「はい、兄2人と父が、中国で戦死しました。母は病気がちで、弟と妹は、まだ幼いのです」


「働き手は、お前1人か?」


「そうです」


「手続きすれば、軍を辞する事が出来るぞ。祖国を守る事は、もちろん大事な事だが・・・家族を守る事も、それと同等以上に大切な事だ。小さな家族が寄り集まって国家となる。国家は無数の家族の支えがあってこそ、成り立つのだからね」


「前にいた隊の将校様にも、同じ事を言われました。しかし、私の生まれ育った村は小さく、貧乏です。働き手も少ない上に、戻っても貧しい農業だけで、飯を食っていかなければなりません。陸軍にいれば、給金もいいですし、3食の飯にもありつけます。とても離れる訳にはいきません・・・ですが、自分の任期もあと僅かです・・・下士官に昇進しなければ、陸軍を追い出されます」


「階級は・・・?」


「陸軍上等兵です」


「自動車の運転資格を持っているのだから、運輸省管理下の運送会社に就職すれば、給金もいいはずだ。伍長に昇進できなかった時は、復員省に顔を出すといい。今からでも復員省の窓口は受付をしている。話を聞けば、君のような人たちが給金に心配せず、家族及び集落の人が、衣食住を不自由しない生活を送る事が出来る」


「本当ですか!自分としては、兵役期間が終了したら、延長のために戦地に志願しようと考えていたのです。戦地に行かなくても給金に不自由せず、衣食住に困らない生活を歩めるのですか・・・?」


「ああ、戦いに行くのは家に余裕がある者たちに任せておけ、働き手が1人しかいない状況下で、親や幼い子供たちの面倒を見なければならないのなら、それが出来る仕事に就く事だ。それと・・・」


「他にも何かあるのですか・・・?」


「親や子供の面倒を見て、困る事があれば復員省又は厚生省に相談するといい、生活保障を受ける事が出来る。何か困った事があれば、まず帝国の省庁の窓口に相談する事だ。きっと何かの助けを得る事が出来る」


「ですが・・・それで、いいのでしょうか・・・?」


「何か、気がかりな事があるのか?」


「はい、陸軍関東訓練所で、共に過ごした同期たちは、皆、戦地に志願しています。確かに自分のように、安全な内地で勤務する者もいますが、米国や英国、蘭国のような悪魔と戦っているのに、自分だけ、安全な職について過ごすというのは・・・」


「何を、馬鹿な事を言っておる!」


 東条は、声を荒げた。


「戦で苦労しているのは、兵士や軍人だけだと思うか?そんな事は絶対に無い。もしもそんな事を言っている輩がいるのなら、意見箱に密告してくれ!戦は軍人、官民が一体となって戦わねばならない。確かに、内地で軍務から離れていれば敵の銃弾は、飛んでこんだろう・・・しかし、空襲はある。そして、民の生活を保障するために尽力する。臣民が一致団結し、この戦を乗り越えようとしているのだ。そのような考えは持つ必要は無い。いや、むしろ捨てるべきだ!」


「は、はい!申し訳ありません」


「それで、よろしい」





 陸軍省の近くに、東条英機大将の私邸があった。


 私邸の正門には、陸軍憲兵隊の憲兵と国家憲兵隊の国家憲兵が左右に配置され、私邸の隣に衛兵所が設置されている。


 衛兵たちは、九九式手動装填式小銃を肩にかけた状態で、常に私邸周辺を警備している。


「ご苦労」


 東条が挙手の敬礼をすると、陸軍憲兵と国家憲兵が挙手の敬礼をした。


 国家憲兵隊は、陸軍大臣、陸軍参謀本部総長、陸軍教育総監、海軍大臣、海軍軍令部総長、聯合艦隊司令長官と言った陸海軍三長官の私邸を警備する任務があり、陸軍憲兵隊、海軍特別警察隊と共同で私邸及び家族の警備・警護を行う。


 衛兵所は、陸軍参謀本部直轄の衛兵隊が陸軍軍人の高級士官の私邸に配置される。


 その任務は、私邸周辺の警備であって、陸軍憲兵隊及び国家憲兵隊と違って、家族の警護を行うものでは無い。


 海軍衛兵所は、海軍軍令部直轄の海軍衛兵隊が担当し、各鎮守府及び各艦隊の海軍陸戦隊から志願者を募り、海軍衛兵訓練所で訓練された海軍陸戦兵が任命される。


 陸海軍衛兵隊は、任務の特性上、陸海軍の高級士官の世間体を悪くしてはならないため、基本的には穏やかな者が選ばれ、威圧的な態度で接する事は禁止されている。


 国家憲兵隊は、行政警察権を内務大臣の監督下で行使出来るため、私邸及び個人を襲撃した者は、軍民を問わず逮捕する事が出来る。


 ただし、陸軍憲兵隊又は海軍特別警察隊は、国家憲兵隊の国家憲兵若しくは内務省警保局に属する国家地方警察・自治体警察の警察官吏がいない状況下で、やむを得ない状況の場合のみ行政警察権を行使する事が出来る。


 あくまでも陸軍憲兵隊は陸軍軍事警察権・海軍特別警察隊は海軍軍事警察権のみを行使出来るだけである。


 因みに衛兵隊には、特別司法警察員としての権利は与えられていないため、逮捕権を有しない。


 東条は門を通過すると、玄関に入った。


「帰ったぞ」


「お帰りなさいませ、旦那様」


 使用人の女性が、座礼する。


「半休をもらったから、朝食を食べる」


「かしこまりました。すぐに用意いたします」


 使用人の女性が、立ち上がった。


 東条は、長靴を脱いだ。


 そのまま寝室に移動すると、陸軍の制服を脱ぎ、着物に着替える。


「妻は?」


「奥様は、集会の集まりに参加しています」


「そうか・・・」


「旦那様。お食事の用意が出来ました」


 若い使用人の女性が、座礼した。


「わかった」


 部屋に移動すると、テーブルの上に麦ごはんと味噌汁、焼き魚、漬物が置かれていた。


「では、いただきます」


 東条は、味噌汁を啜る。


「うむ。いい味だ」


 陸軍省の食堂での食事もいいが、我が家で食べる食事の方が一番美味い。


「すまないが、ラジオをかけてくれ」


「かしこまりました」


 使用人が、ラジオの電源を入れる。





『大本営陸海軍発表。帝国本土に上陸した連合軍は、陸海軍の反撃によって、相当な被害を被っている模様。帝国本土に空襲を行った連合軍の戦略爆撃機部隊は、陸海軍及び航空予備軍の最新鋭迎撃戦闘機によって、すべてを撃墜しました・・・』





 この報道の裏に潜む事実に気が付いている、帝国国民は、ほんの少数だ。

 本土防衛戦開始その1 第10章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

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