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本土防衛戦開始 その1 第9章 サハリン逆侵攻前夜

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れ様です。

 菊水総隊陸上自衛隊第11機動旅団第11戦車隊本部。


 指揮官である古鬼は、幕僚たちと共に朝食をとっていた。


 パックメシを、アルミ製の食器に盛り付けられた状態で、陸士たちが配膳した。


 朝食のメニューは、白米、味噌汁、煮魚、デザートとしてプリンがある。


「ソ連軍の動きは・・・?」


 古鬼が聞くと、第2科長(情報担当)の1等陸尉が報告した。


「砲兵部隊の榴弾砲及び歩兵部隊の歩兵砲による砲撃のみで、戦車部隊による大規模侵攻はありません・・・特科隊による自走榴弾砲による精密砲撃が効果大だったのでしょうか・・・?」


「それは、わからないな」


 古鬼は白米の入ったアルミ製食器をトレイに置き、紙コップを手に持った。


 そのまま緑茶を飲む。


「第11特科隊が保有する対砲レーダーは優秀だ。重砲及び軽砲による砲撃はすぐに探知し、99式自走155ミリ榴弾砲が火を噴く・・・自走であるため、陣地転換が素早い。ソ連軍は重砲、軽砲、歩兵砲を失うだけだ。第18普通科連隊には、本部管理中隊麾下に重迫撃砲小隊がある120ミリ迫撃砲による砲撃も強力だ・・・」


「ですが・・・敵が攻めてこないと、麾下の戦車中隊の隊員たちが、不満を暴発する可能性もあります」


 第3科長(運用担当)の3等陸佐が煮魚を食べながら、つぶやいた。


「ふむ・・・うちの戦車隊は、他の戦車部隊、機動戦闘車部隊と違って、血の気が多いからな・・・」


 古鬼が、味噌汁を啜る。


「だが・・・ソ連軍の物量戦になれば、3個中隊の戦車部隊だけでは足りない・・・3個中隊を交代で、ソ連軍戦車部隊に対抗させたとしても1個中隊14輌だけでは、1個大隊の戦車部隊が攻めてきたら、数で後退を余儀なくされる・・・」


「第18普通科連隊麾下に対戦車中隊が新設されていますが・・・それでも足りないでしょうね・・・」


「・・・・・・」


 古鬼の箸が、止まった。


「何か、気がかりな事でも・・・?」


 副隊長が、尋ねる。


「ソ連軍の偵察部隊は、我々の配置を把握しているはず」


「ええ、隠密偵察だけでは無く、威力偵察も確認されていますから、我々の部隊規模、配置等は筒抜けです」


「なのに、攻めてこない・・・どうなっているのか・・・?」


「若しかしたら、ソ連軍部隊に何かあったのではありませんか・・・?」


「何か・・・とは?」


「確証がある訳ではありません。言わば私の勘です」


「ふむ・・・」


 古鬼は、顎を撫でた。


「これは・・・連隊本部に、問い合わせてみなければならない・・・な」


「確かに1佐クラスであれば、私たち以上に情報が届いているかもしれません」


「第11通信隊及び第11情報隊は、ソ連軍が行動を開始してから忙しく、行動しています。それに第11偵察隊の87式偵察警戒車は、ソ連領のサハリン島に進出しています」


「うむ・・・第11通信隊及び第11情報隊の先発部隊が、我々と同行しているな・・・彼らは、ある程度には我々以上に情報を把握しているだろう・・・」


「我々の後方で、ソ連のゲリラ部隊及び空挺部隊による後方攪乱については、帝国陸軍北部軍第81歩兵師団が鎮圧したとの事です」


「我々の後方が脅かされる事は無かった・・・樺太南部の沿岸部にソ連海軍歩兵部隊が急襲上陸しているが、第10即応機動連隊と第81歩兵師団歩兵部隊が内陸部への進出を阻止している・・・それどころか、ソ連海軍歩兵部隊は沿岸部の防衛線を維持するのがやっとだと聞く」



 菊水総隊陸上自衛隊第18普通科連隊・連隊長の栗原は、司令部天幕で、幕僚たちと会議を行っていた。


「在日米軍及びスヴァボーダ連合軍ロシア連邦軍極東軍からの情報によりますと、サハリン島駐留する第16軍及び赤軍が、樺太に南下しようとした段階で、スヴァボーダ連合軍ロシア連邦軍特殊作戦軍と、新世界(ニューワールド)連合軍多国籍特殊作戦軍アメリカ陸軍特殊戦コマンドで、共同編成された合同特殊任務部隊が、サハリン州に設置された兵站司令部及び兵站拠点を襲撃・同司令部と同拠点を破壊・無力化しました」


 第2科長の3等陸佐が、報告した。


「兵站司令部及び兵站拠点の破壊・無力化によって、ソ連軍極東軍が計画したサハリン島統一計画を妨害しました。現在、ソ連軍極東軍第16軍は、混乱しており、攻勢の時刻を迎えても攻勢出来ない状況下になっています」


「ソ連軍極東軍第16軍は、4個狙撃師団を南下させようとした。4個師団・・・8万人規模の兵力が南下すれば1個戦車隊、1個特科隊、1個普通科連隊だけでは、どうにもならない。兵站拠点と兵站の指揮系統を無力化したとなれば、8万の軍勢は、事実上機能しない」


 栗原の言葉に、幕僚たちが頷いた。


「サハリン及び樺太の国境線に展開しているソ連軍の先発部隊は、どうなっている?」


「第11偵察隊だけの情報では無く、本部管理中隊麾下の情報小隊を偵察に出したところ、かなり混乱しているとの事です」


「第11特科隊及び北部方面特科連隊派遣部隊による榴弾砲、ロケット弾攻撃によって、砲兵部隊の重砲、軽砲及び歩兵部隊の歩兵砲が壊滅したのも要因になっています」


 第3科長の2等陸佐が報告した。


「しかし・・・帝国大本営陸軍部の計画をどうしますか・・・?」


 幕僚の1人が、つぶやいた。


 大本営陸軍部は、スヴァボーダ連合軍ロシア連邦軍及び新世界(ニューワールド)連合軍多国籍特殊作戦軍共同で編成された合同特殊任務部隊の後方攪乱工作の成果で、樺太に駐留する部隊を持って樺太を統一しようと具申してきたのだ。


「大本営陸軍部は、兵站拠点と兵站司令部が無力化された事によって、サハリンに駐留する陸軍8個狙撃師団は機能不全になっていると、楽観視しています。ですが、樺太に駐留するのは、帝国陸軍は、歩兵師団1個と機甲旅団1個、独立警備旅団が2個だけで、帝国海軍は、沿岸警備のための海防艦と沿海駆逐艦が4隻、水雷艇部隊が1個隊あるのみです。飛行隊に関しては、陸海軍及び航空予備軍を合わせても制空戦を行うのが精一杯です」


 第2科長が続ける。


「自衛隊の戦力ですが・・・陸上自衛隊は第11機動旅団1個旅団のみで、即応予備自衛官と正規自衛官出身の予備自衛官で編成された北部方面警備隊警備中隊2個だけです。海上自衛隊は即応予備自衛官で編成されている大湊海上警備隊分遣隊所属のミサイル艇隊が、1個隊と沿海護衛艦が1隻だけです。航空自衛隊は、施設のみと最低限の人員がいるのみです」


「貴官の言いたい事はわかる。大本営陸軍部の希望を叶える事は出来ない・・・」


「そうです。ただでさえ樺太南部の沿岸部にはソ連軍海軍歩兵部隊が上陸し、これの対応が出来ていません」


「・・・・・・」





 菊水総隊自衛隊施設・松本駐屯地。


 地下施設に設置されている菊水総隊自衛隊統合防衛総監部に、破軍集団司令官付高級副官兼特別監察監の石垣達彦1等陸佐が、統合防衛総監部陸上総監の御蔵(みくら)(りゅう)陸将を訪問した。


「石垣1佐。遠路はるばるご苦労だった」


 御蔵は、自身の執務室に石垣を通し、労いの言葉をかけ、緑茶を勧めた。


「いただきます」


 石垣は、緑茶を一口だけ飲む。


「貴官がここに来た理由はわかる・・・大本営陸軍部から提出された、ソ連領サハリンへの侵攻だろう・・・」


「そうです」


「だが、樺太には、侵攻するための部隊が無い。第11機動旅団から戦車隊及び特科隊、高射特科隊、施設隊を組み込んだ状態で第18普通科連隊を基幹とした第18普通科戦闘団を組織する。帝国陸軍から第81歩兵師団を中核とした独立旅団を組み込んだ状態で、サハリンに侵攻する・・・そういう事か?」


「その通りです」


「在日米軍及びスヴァボーダ連合軍ロシア連邦軍からの、援軍は?」


「在日米軍は、三沢基地を拠点とした状態で、在日米空軍がF-16及びF-35を発進させて、制空権を確保します。スヴァボーダ連合軍ロシア連邦軍は、増援部隊として2個旅団と連合支援軍に属するロシア連邦軍も投入されます」


「・・・・・・」


 石垣からの説明に、御蔵は指をトントンと鳴らす。


「何か、気に病む事が・・・?」


「あのお花畑思想の君の弟は、大本営陸海軍部が樺太を統一する案を蹴った。ソ連は、太平洋でアメリカに勝利を続ける限り、不可侵条約を破る事は無い・・・と、主張していたが、実際は違った・・・貴官が、弟の意見に何も言わなかったのは、初めから、この計画があったからだろう?」


「否定はしません。スヴァボーダ連合軍ロシア連邦軍の基本方針として、サハリン侵攻及びカムチャッカ半島への侵攻は、事前に計画されていました。ソ連軍は自ら墓穴を掘ったのです」


「確かに・・・第18普通科戦闘団の防衛力なら、国境方面に展開している4個狙撃師団を壊滅させる事は出来る。兵站司令部と兵站拠点が壊滅した今なら、効果的な打撃を与えることが出来る」


「ですが、北海道及び北方領土に米ソ連合軍上陸している状況下では、攻勢に転じるのは危険と・・・」


「そうだ。樺太南部の沿岸部には、ソ連軍海軍歩兵部隊が上陸している。さらに、空挺部隊の残存部隊が合流している。いくら防衛陣地を維持するのが精一杯と言っても、ウラジオストクから増援部隊が派遣されたら、不利は変わらない」


「総監の危惧は、ごもっともな事です。ですが、ソ連軍にそれほどの余力がありますかね・・・?」


「と・・・言うと?」


「ソ連軍は、東部戦線で、ナチス・ドイツ軍を基幹とする枢軸国軍と戦っています。西部戦線では、満州の攻略に大規模な兵力を投入しています。旧中華人民共和国国民派人民解放軍、[司馬懿(スゥマーイ)]軍と、在中米軍、中華民国軍、[孔(コン)(ミン)]軍による三軍共同での防衛線を展開していますが、その規模は強大です。恐らく、ソ連軍が極東及びエルキア公国に侵攻したのは、我々から攻める事を回避するためでしょう」


「・・・・・・」


 御蔵は、言葉を失った。


 彼の元にも中国の情勢については届けられているが、石垣程では無い。





「そろそろ朝食の時間だ」


 御蔵が壁に掛かった時計を見て、つぶやいた。


「そうですね・・・」


「どうかね。一緒に食事でもしないか?」


「はい、いただきます」


 御蔵が、立ち上がった。


 続いて、石垣も立ち上がった。


 松本駐屯地の地下施設には、統合防衛総監部としての機能はもちろんの事、地下施設に勤務する自衛官、防衛事務官の生活機能を維持するための、インフラ等が整備されている。


 統合防衛総監部は、大日本帝国本土の防衛のために設置された機関であるため、同じく大日本帝国の防衛を任されている在日米軍司令部からも要員が、派遣されている。


 必要に応じて、韓半島及び台湾の共同防衛も任務の1つであるため、韓国軍(未来勢力)、台湾軍(未来勢力)からも、武官と文官が連絡要員として派遣されている。


 地下施設にも食堂が設置されているため、御蔵と石垣は、その食堂を利用した。


 有事下であるため、地下施設に勤務する自衛官、防衛事務官は厳戒態勢下であるため、食堂の利用は、交代制だ。


 そのため、混んではいない。


 石垣は、トレイをとった。


 コップを手に取り、給水機から麦茶を淹れる。


 自分でご飯を注ぎ、トレイに乗せる。


 手際よく食堂のスタッフが、豆腐の味噌汁を渡す。


 石垣は受け取り、トレイに乗せる。


 おかずとして、焼き鮭と卵焼きがあった。


 石垣は、それも受け取り、トレイに乗せる。


 デザートとしてフルーツヨーグルトもある。


 石垣と御蔵はデザートを受け取ると、空いている席についた。


「いただこう」


「いただきます」


 石垣は、豆腐の味噌汁を啜る。


 程よい塩味が効いているため、徹夜の身体に染み渡る。


「うむ・・・徹夜だったから、味噌汁の味がいい」


 御蔵が頷く。


「はい、疲れが癒されます」


「うむ。これからも長い、長い日が続く。食事だけが、身体を癒し元気の源になる」


 石垣は、焼き鮭を箸で一口サイズにして、それを口の中に入れ、咀嚼する。


 適度な塩味が、食欲を刺激する。


 松本駐屯地は、元の時代では陸上自衛隊の駐屯地であったが、統合防衛総監部や在日米軍連絡部が置かれてからは陸上・海上・航空自衛隊及び在日米軍の施設として運用されている他の陸上自衛隊の駐屯地と違って予算が充実している。


 そのため、食事も味がいい上に、売店も品揃えがいい。


「石垣1佐」


「はい」


「サハリン占領の件だが・・・第11機動旅団・旅団長を統合任務部隊の指揮官として、陸上・海上・航空自衛隊の部隊を指揮下に置く。在日米軍、大日本帝国陸海軍及び航空予備軍、スヴァボーダ連合軍ロシア連邦軍、連合支援軍傘下のロシア連邦軍による5軍共同でのサハリン占領を容認する。しかし、ソ連の国土とは言え・・・日本主導で行う・・・そのため、総指揮官は第11機動旅団・旅団長が兼任する。これが私の譲れないものだ。石垣1佐、容認してもらえなだろうか?」


「わかりました。在日米軍、スヴァボーダ連合軍、連合支援軍、大本営陸海軍部は、私が説得します。しかし・・・第11機動旅団長は陸将補・・・諸外国では少将に相当するため、在日米軍はともかく、他の軍に関しては反発が予想されます。特に大本営陸軍部は、特に・・・」


「了解している。樺太に駐留する帝国陸軍の最上位者は中将だ。中将が少将の下につくのは、帝国軍人は、いい顔しないだろうな」


 問題は山積みである。


(気は進まないが、彼女の協力を仰ぐか・・・)


 弟の教育を頼んだ人物の顔を思い出しながら、石垣はこれからの事を考える。

 本土防衛戦開始その1 第9章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

 次回の投稿は3月7日を予定しています。

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