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異世界で魔改造された俺が、orzってる!  作者: 香しい肉球
俺、遺跡(仮)に立つ!!
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幕間②【魔女さんの執事】

セバス視点。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 私の名は、セバス・アハト。


 唯のしがない執事でございます。


 お嬢様の身辺の御世話、屋敷内の庶務雑務が主な仕事です。


 時には、お嬢様の命により外への使いもありますが…


 たかが大きな蜥蜴(上位竜)の素材を狩ってくる程度の小用に過ぎません。


 私は、主に仕えるしか能のない不器用者。


 唯の忠実なる下僕でございます。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 カツーン カツ―ン

 

 魔法灯が淡く照らす石畳の階段を下り、重厚な黒鉄製の禍々しい扉の前で足を止める。

 竜を始めとした様々な魔物の頭蓋骨で装飾された扉は、もちろんお嬢様の趣味。私には少々理解しがたいのですが、主の意向故に目を瞑ります。プライベートな場所ですから・・・問題ありません。


 コンコン


 強過ぎず弱過ぎず絶妙な力加減で扉を叩く。決して大きい音でもありませんでしたが、人気のない広い地下では妙に響きました。


「・・・・・・」


 おやおや、また…のようですね。


 内心で溜息を吐いてから、気配はするものの返事がない扉を開け部屋の中へと入った。


「失礼します。お嬢様、御食事の準備が整いました」


「う~ん…なるほどなるほど・・・回転する槍?…いいわ、燃えるわね~」


 お嬢様は、すっかり自分の世界に入り込んでいる御様子。


 こうなったら私の声は届きません。


「お嬢様?」


「ふむふむ…人が搭乗する人型兵器・・・非効率だけど…それを無視しても抗えない魅力を―――――」


 もう一度声をかけますが、やはり駄目ですね。

 仕方がありません。後ほど、作業しながらでも摘まめる食事をお持ちしましょう。


 一抱えはある水晶に照らし出された映像を食い入るように見つめたままの主人を前に、すぐさま予定を修正する。


 お嬢様が夢中になっておられるソレは、三ヶ月程前に当家へと迎え入れた異世界の客人が齎したモノ。正確には、客人の記憶から抽出した異世界の視覚情報。提供した本人は、預かり知れないところなのですが。


 異世界の客人の名は、ユーマ・カンザキ様。

 退屈に溺れるお嬢様の生活に潤いを与えた御人でございます。


 怠惰に半分死人のように暮らしていたお嬢様に活力を与えて頂いた事には感謝致しておりますが、如何程か劇薬だったようで・・・もう随分とこの地下研究室に引きこもっておられます。 


「うん! この発想はなかったわね。資材は…足りてる。でも、自重の問題が…試作機は―――――」


 と、お嬢様は映像媒体から顔を上げるや否や独り言を呟きながら作業台へと向かいます。


 どうやらまた『あにめ』から新たな創作のインスピレーションを得たようですね。


 私の前を、お嬢様が指をクイッとする度に、様々な金属や魔物素材などが自ら浮かび上がり行儀良く整列して運ばれていきます。並行して加工台の上では、運搬されてきた物が次々と”分離””融合””成形””研磨”され一つの形へと組み上がっていました。

 この間、お嬢様も何やら設計図の作図をなさっていましたので、視線は作業台に固定されたままです。


 今回は……9時間程で完成でしょうか。


 現実離れした作業光景を前に作業終了時間を予想してみたものの、何を作っておられるのか自体、私如きでは到底理解できませんので、当てにはなりません。


 ユーマ様の記憶を覗いては、魔道具?を製作する。これが、最近のお嬢様の活動サイクルでございます。

 放っておくと食事も睡眠も忘れて製作作業に没頭してしまう始末で、世話をする身としては気が気ではありません。

 しかし、執事の私が主人の成す事を邪魔立てするわけにもいかず、出来る事と言えば体調などを崩されないよう陰ながら補佐をするまで…。なんとも歯痒い思いです。

 



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 お嬢様が本格的に引きこもりになられてから、私に新たな仕事が追加されました。

 本格的というのは、ユーマ様の記憶を魔道具制作に参考なさるようになってからの事です。それまでは、お嬢様が進んでなさっていました。


 そういえば、その頃はお嬢様も外に散歩に出る事もありましたね。

 実に健康的な生活で…。


 と、少し遠い目をしてしまいました。


 『新しい仕事の内容は、旅立ちなされたユーマ様の監視と報告でございます。』


 ユーマ様が可愛くて仕方のないお嬢様の愛故に、もちろん24時間体制です。

 監視には、お嬢様が少し前…約200年程前に製作なされた上空2000㎞に浮かぶ魔導衛星を使用しています。


 元々は戯れに開発した軍事衛星なので、望遠・暗視・透視・収音といった監視に便利な機能の他に、いざという時の為の戦略級魔術兵器も搭載されています。

 戦略級魔術兵器は、過去に使用した記録によりますとその名に恥じない結果を残しているようです。具体的には、アロメニア王国東部に広がる領土の半分を占める荒野でしょうか。王国史にも『神々の怒り』『終焉の光』といった感じで登場します。


 今回のユーマ様を見守るに於いては、その戦略級魔術兵器の使用も認められました。

 私的には一体何を想定して使用するのか見当もつきませんが……それが、お嬢様の愛なのでしょう。




「これは、いけませんね」


 今日も監視業務に勢を出していたところ、雲行きが怪しくなってきました。

 監視対象のユーマ様は、現在、冒険者ギルドの命により遺跡調査を行っているのですが…調査中の遺跡内部のマナ濃度がどうにも不穏です。




「やはり・・・ですか」


 私が危惧していた通りになってしまいました。

 即ち遺跡の迷宮化です。


「滅多に起こる事象ではないのですが……今回はお嬢様も引きこもり中で暗躍してませんし」


 遺跡の迷宮化に立ち会うのでさえ万が一の可能性、よもやそれに巻き込まれるとは…。


「ユーマ様は、運が悪いのでしょうか」


 まあ、その事に関する検証は後にしましょう。

 とりあえず、遺跡内部を光学スキャンして危険度の算出…それから対応を決めましょうか。



「少々厳しいようですが、同行している冒険者も考慮に入れますと問題ありません。なにせ魔眼と固有能力【ユニークスキル】持ちの方々ですからね」




 幾つかの部屋を突破して最初の安全エリア…ユーマ様のお仲間である魔術師様が暴走したようですが概ね無事に辿り着いたようです。


「なかなか順調な迷宮攻略です」


 ユーマ様もここにいた時に比べ成長なされたようで、師事していた者としては感慨深いものです。休憩中にゴーストとの初遭遇で色々と慌てるユーマ様には、少しだけ笑ってしまいました。




「なんとか攻略できましたか」


 映像には、迷宮の守護者ダンジョンボスを見事撃破したユーマ様の姿が映し出されています。最後は、泥臭い戦いでしたが勝利には変わりありません。もう少しだけ戦況が傾いていれば、ユーマ様に内蔵されている人工精霊を起動しましたが…。


「さて、お嬢様へ報告に行きましょうか・・・・・・っ!」


 これは、魔術トラップ……転移魔法陣っ?!


「魔法陣の解析開始…完了。隣界転移と判明。行先は…98.6%の確率でウィリデルパと推測。術式発動まで残り5.32秒…」


 時間圧縮通信出力最大で開始!!




「おや? そろそろ時間ですか。それでは、ユーマ様…良い旅を」


 混乱した表情を浮かべたままユーマ様が監視映像から消えます。どうにか転移するまでに出来る限りの事はしましたが…。


「まずは、お嬢様に報告するのが先ですね」




「隣界?」


「はい」


「私の目の届かない所にユーマがいるなんて…」


「どうなさいますか?」


「ボリスに行かせ…いや、待って。頼りたくはないんだけど…アレの眼を借りるわ。一応、用意していた最新のパッチを送信しているのでしょう?」


「はい。私の手元にあった分は全部送りました」


「なら、中位竜程度までなら余裕で蹴散らせるわ~安心した~」


 気を張っていた反動でしょうか。お嬢様は、ポスンとソファーに身体を沈めるように身体を預けなさいました。


「安心したら少しお腹が空いたわね」


「すぐに御食事を用意いたします」


 ユーマ様には悪いですが、隣界転移の件には感謝しなければなりません。こうしてお嬢様にまともな御食事を取っていただける機会を得られましたので。


「そうだ! セバスは米を知ってるかしら?」


「コメですか……確か隣界の一つルブレスにそういう名の穀物がありますね」


「そうそれよ~ユーマの世界では、それが主食みたいなの。でね、―――――」








 早急に隣界まで届く遠距離通信を用意して、ユーマ様に米の入手をお願いしなければなりません。お嬢様が米を御所望なのです。


「米自体は、帝都でも手に入りますが……産地直送の新米となりますと勅命であっても難しいでしょう。下手すれば、御不満を買ったとして責任者の首が並ぶ事になるやもしれません・・・お嬢様の意思とは無関係に」


 ユーマ様が送られた隣界とは異なる隣界ですが、ついでに旅をしてもらいましょうか。もう一つ世界を渡るだけです…ユーマ様ならやってくれます。


 私もその間、『丼』なる料理を極めなければ…。


「最初は出汁の取り方から…いや、出汁を取れる食材の吟味からですね」


 執事たるもの主人の望みを叶える為に全力を尽くすのも仕事の内なのです。











お読み頂きありがとうございます。

次で間幕も最後。

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