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異世界で魔改造された俺が、orzってる!  作者: 香しい肉球
俺、遺跡(仮)に立つ!!
39/62

第12話 迷宮踏破③

よろしくお願いしますm(__)m




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 魔物の死骸消失イリュージョンの驚愕から3時間が経過した。

 迷宮踏破への道のりは順調だ。あの部屋以外にも同じようなモンスターハウス的部屋を7つ程過ぎたが、大した被害もない。あるとしたらトアのレヴィに対する愛の鞭だけだ。何故、彼は未だに動けるのだろうか。


「にゃ~迷宮が若くて助かったぜぃ!」


「罠は少ないし、出てくる魔物も数だけの雑魚中心だしね。その代り、落とす魔石も相応の物だから稼ぎも微妙だよ~」


 確かに、準備しない状態で迷宮に放り込まれた割には余裕だな。

 ここまで、俺とエルにとっても比較的楽な魔物ばかりだし、罠も落とし穴ぐらいだもんな。しかも浅いだけの穴。

 …まあ、銀色ランクの二人が一緒というのが大きいと思うが。

 


 蟻の魔物を相手にした部屋の次の部屋も蟻の魔物が相手だった。その次からはナメクジみたいな魔物と初顔合わせし、蟻、ナメクジ、蟻、蟻と続いた。群れの数は最初の部屋ほど多い部屋もなく、一部屋につき精々10~15匹といったところだ。余談だが、ナメクジの魔物に塩を振りかけたら縮みながらのた打ち回り死んだ。半分冗談でやったんだけどな…。

 部屋と部屋の間の通路にも魔物が潜んでいたが、種類が変わる事はなく、単独もしくは2匹でしか襲って来なかったので余裕を持って対処できた。


「おっと…この先にまた部屋があるな。じゃ、偵察に行ってくるにゃ~」


「りょうか~い」


 先行していくレヴィを見送った後、おそらくまた戦闘になるだろうから装備の確認を始める。

 『イルリヒト』をホルスターから抜き、装弾などを確認する。再装填が素早く出来るように予備の弾丸もズボンのポケットに幾つか入れておく。


 若干、残弾が気になるが…まだ大丈夫だろう。


 相棒の剣を鞘から抜き刃を一通り眺める。硬い甲殻を持つ蟻を多く相手にしたおかげで、損耗が激しいようだ。やはり、刃毀れが何箇所か見られる。


 予備の剣を用意しとくべきだったな…。

 次の戦闘からはガントレットのギミックを活用した殴打を積極的に使用していこう。

 

「よし、確認完了」


 自分の装備確認を終えたが、まだレヴィは戻って来ないようだ。

 何気なく隣のエルに目を向け・・・様子が変だ。何故かバックに暗い炎のエフェクトが見えた気がする。背中に冷たい汗が流れた。


「エル、どうした?」


「臭いがする」


「は?」


「・・・下等な単細胞生物の分際で、私を汚した奴らの…。・・・この世で最も価値のない命であるゲル畜生共の…」


 どう見てもイケないスイッチが入っていた。


「・・・殺す。・・・いや、殺さなければ!!」


「お、おいっ!」


 落ち着かせる為に声をかけるが、自分の世界へと沈んだエルに俺の声は届ない。

 そうこうしている内に、エルの周りで風が渦巻き出す。


「うわわっ?! な、何?」


 トアが風に煽られ、こちらの異変に気が付いた。

 すぐにエルの様子がおかしいとわかったようだが、戸惑いを浮かべるだけで固まっている。


「見敵必殺!」


 エルが俺達を置き去りに走り出す・・・いや、滑り出した。


 地面に足が…浮いてるのか?!

 

 ホバー仕様のエルは、そのままグングンと加速していき、あっという間に姿が暗闇の先へと消える。


「「・・・」」


「・・・お、追いかけるぞ!」


「えっ? あ、わかった!」


 先に、我に返った俺が叫び、すぐに反応したトアと共にエルの後を追う。途中、何かに撥ねられたかのように壁に埋まっているレヴィを見た気がするが・・・きっと気のせいだ。疲れてるんだよ…俺。



「【凍れる世界(フロスト・ノヴァ)全力全開フルスロットル】!!」


 暗闇の向こうからエルの声が響く。まだエルの姿は見えないが、有り得ないほどの冷たい風が奥から顔に吹き付けてきた。

 自然と・・・足が止まった。この先に行く事を本能から拒否しているようだ。

 そんな俺に並走していたトアも釣られて足を止め、こちらの方を訝しげに振り返る。


 ああ、トア…君はエルと一刻も早く合流すべき時に、何故立ち止まるのかと不思議なんだね?

 うん、普通ならそう思うよな。


 だが、少しだけ待って欲しい。

 ほんの僅かで良いから…心の準備をする時間を俺にくれ。


 俺とエルってさ、互いに相手がどんな行動をとるか予想できるぐらいの時間は一緒に過ごしているんだよね。

 ・・・でさ、わかるんだよ

 ・・・・・・この先で、エルが絶対やらかしてるって。




 そこは、ここまでで一番広い部屋だった。

 構造自体は、これまでと同じく剥き出しの岩肌である壁や床、天井から垂れ下がる照明付き鍾乳石だ。

 ただ、今やそのどれもが厚さ数センチの氷に表面を覆われ、全く違う印象を与えてくるけど…。暗い紫の照明も覆われた氷により乱反射して、凄く幻想的である。そうだな、一言に言い表すとしたら……かのギリシア神話にある地獄の最下層コーキュートスが一番合致するんじゃないだろうか。


 罪人は、部屋の中央で転がる氷漬けのスライム一匹か。

 ・・・一匹だけだな、スライム。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「エルちん、大丈夫?」


 心配そうな顔をしたトアがクッション(・・・・・)に埋もれながら尋ねてきた。


「ああ、気にしないで良い、いつものことだから。今は、それよりも…」


 現在、盛大にやらかしたエルはロープで簀巻きにしたうえ適当な布で猿轡を施してソファー(・・・・)に転がしている。ついでに、杖と魔法の鞄も取り上げた。目を覚まし次第、速やかにかつ確実に『デコピン100連続のお仕置き』もしくは『ほっぺたがどこまで伸びるかの人体実験』を執行する為だ。尚、刑の執行は確定事項であり、反論は認めない所存である。


「これは、何なんだ?」


「んにゃ~?」


 俺の問いに何を言ってるのかわからないという感じで、カーペット(・・・・・)に寝転がったままレヴィが顔を向ける。


「俺達は、迷宮にいる・・・ここまではいい。で、ここは何だ? どこの民家だ? ってか、何故こんな所に普通の家がある?」


 一部屋を丸ごと意味もなく氷漬けなったのを目撃した後、俺達は魔力切れでグデーッと脱力したまま気絶中の自爆魔女娘ことエルを回収しつつ、同じ部屋の隅に立っていた建造物・・・民家に避難している。 先導したレヴィとトア兄妹両名は如何にも普通な事であるかのようだったが、迷宮の中に佇む極一般的な家が醸し出すバリバリな違和感が俺を呆然自失に陥らせたのは言うまでもない。


「にゃ~ユーマはもう忘れたのかにゃ? 迷宮は滅んだ世界の記憶って言っただろ。当然、家なんかがあっても不思議じゃないにゃ~」


「いや、そこは不思議だろ! って、これも世界の記憶から顕現した物なのか」


「この迷宮はまだ階層に分かれていないくらい若いからな…ほぼ洞窟と変わらない構造のところに、家があると……確かに少しだけ違和感があるかもしれないな。でもにゃ~、こんな事に一々驚いていたら迷宮探索なんて出来ないぜ。時間が進めば進むほど迷宮は拡大するし、変化していくんだからよ。その内、街や山、草原なども出現するんじゃないかにゃ~? トアと普段潜ってる迷宮なんかも、ほとんど別世界?異界?って感じだにゃ~」


「だね~。階段を下りたら広大な砂漠とかだった事もあるよね。回収するもんが何もなくって、その迷宮探索は赤字だったけど」


「・・・」


 迷宮は予想よりずっとファンタジーなようだ。深く考えるだけ無駄な気がする。よし、これから迷宮内で起きる不思議現象は全て『迷宮だから…』って事で処理するとしよう。


「あ、ゴーストだ」


 トアが指差す方向を見ると半透明の人影がいた。


 さっそく処理不良が起きそうだ。


 その人影は背格好や雰囲気まではっきりと認識できるのに、人相だけが朧げで良くわからないという不可思議なものだった。ただ、台所のような場所に立ってマゴマゴ揺らめいている。というか、どう見ても亡霊です…ホントウニアリガトウゴザイマシタ。


「ユーマ、あれは無害だからそんな警戒しないでも良いぞ~。滅びた世界の記憶から顕現した家屋にこびり付いた住人の残留思念ってヤツだ。ただ見えるだけのちょっと奇抜なオブジェと変わらないにゃ~」


「・・・」


 咄嗟に九字印を切ったり、聞きかじりの「ナウマクサマンダ…」と真言を唱えたり・・・とにかく御乱心姿で固まる俺は沈黙するしかなかった。それは、俺がこの世界の迷宮という存在にホールドアップで考える事を完全に放棄した瞬間でもあった。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 俺の常識を完全に崩壊させた民家での休憩からさらに3時間が過ぎた。相変わらずの魔物がたむろする部屋から部屋への迷宮道中だ。変化があるとすれば、遭遇する魔物が蟻やナメクジの上位種や爬虫類系、両生類系と少々厄介になってきた点だろう。負傷する場面も出てきている。俺自身は使う機会のない(だって、再生しますもん)手作り魔法薬ポーションは、レヴィにもトアにも評判が良かった。


 そんなわけで、一部屋を突破するのにも結構時間を取られ、同じ3時間でも部屋の突破数はこれまでの半分以下の3部屋と攻略ペースが確実に落ちている。


「っと!」


 先頭のレヴィが手を上げ、制止をかけた。


 まだ少ししか進んでないのに、また部屋があるのか?


「イタ兄、どうしたの?」

「……マジなトラップだな、ちょっと待ってろ」


 レヴィを除く俺達三人は、指示通りに大人しくする。はっきり言って、どこに罠があるのかもわからない・・・どこも同じ岩肌の地面だよな?


「んにゃ~・・・これで、いいか」


 目の前で、レヴィの手から拾ったばかりの石が投じられると地面に着くや否や急速に上昇し、そのまま天井の鋭利な鍾乳石によって砕かれた。もし、上昇したのが石じゃなく人だったら確実に串刺しだっただろう。


「こっから先は、ただ俺の後を付いてくるだけじゃなく俺の足跡をなぞって来いよ~」


 俺は頷きだけを返して了解の意を示した。それに続き、少女組も…


「りょうか~い」

「・・・了解した」


 トアは、いいだろう。普段から迷宮に潜っているから語調の割にちゃんとわかっていると思う。

 だが、エルは・・・ということで、背負う。ほっぺたを両手でガードしながら警戒されたが関係ない。無理矢理にでも負ぶる。これは、決定事項だ。主に俺の精神の平穏の為に。



 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 エルの氷結魔法で動きを封じられている巨大猪の懐へと潜り込み、俺渾身の斬り上げで四肢の一本を飛ばす。自重に耐え切れずバランスを崩し地面に転がったところに上空から落ちてきたトアがガントレットの拳で頭部を破壊して止めを刺した。


 ふぅー、なんとか倒せたな。


「そっちが済んだんなら、早くこっちを手伝うにゃ~」


 っと! レヴィが一匹を足止めしてたんだっけか・・・忘れてたぜ。


 この部屋にいた魔物は、体格が中型トラック並にある巨大猪二匹だ。しかも、体に小型犬ぐらいの大きさの蛭を寄生?共生?させていて、事ある毎にこちらへ飛ばしてきた。キモいことこのうえない。



「お疲れにゃ~」

「そっちもお疲れ様」


「うぇ~返り血でベタベタだよー」

「蛭、許すまじ」


 即死トラップが出現し始めてから、ここは4つ目の部屋だ。銀色ランクコンビ言うには、例の民家のような休憩が取れる場所がそろそろあるらしい。迷宮では常識だそうだ。もう、つっこみはしない。

 ちなみに、そのような部屋では、稀にスライムが沸くぐらいで他の魔物はいないらしい。・・・つっこまない、つっこまないゾ。



 彼らの予測通りだった。また民家だ。

 今回の民家は、前回の平屋建てからランクアップして二階建の住宅である。何故か、稀なはずのスライムもおまけでいた。


「ゲル…」

「エル、暴走するなよ」


 スライムを見た瞬間、暗い炎と灯しかけた魔女娘に釘を刺す。お仕置きの『ほっぺたにゅ~ん』が未だ堪えているようで、暴走はしなかった。仕留める魔法も【氷結フリーズ】と相応のものである。まあ、凍ったスライムに杖でポコポコ追撃を加えていたが…。



「ああ~ダメだ~。色々と良さそうな物があるのに・・・回収できないよぉ…」


「無駄だって言ってるにゃ~。存在が定着しない内は触れないし使えないぜ」


 普通、迷宮内の建造物内にある物は失われた文明の遺物として回収するのだそうだ。むしろ迷宮探索はそれがメインで、ギルドなどに持ち込んで買い取ってもらるとか。もちろん有用そうな物ほど、それだけ高額に取引される。


「これとか…きっと凄い武器とかだよ!」

「にゃ~こっちの方が凄そうだろ!」


 見慣れない失われた文明の遺物を前にテンションアゲアゲな二人。だが、そんな二人を俺は達観した目で見ていた。

 この迷宮の元となった世界・・・科学一偏等の文明は、どうやら俺の懐かしき元の世界とかなり近いもののようだから…。


 トア・・・それは、多分武器じゃないよ。熱い風や冷たい風を起こせるけど、そこまで傷付ける効果はないはずだ。髪を整えるのに丁度良いぐらいで、マイナスイオン付きかな。


 レヴィ・・・ある意味、それは凄い物だよ。短時間の内にスッキリとさせ、魅力的スマートにしてくれる。そのうえ、肌負けさせることもない。おそらく三枚刃だね、剃り残しもきっとないよ。


 何故か同じように洗面器具周辺の物にばかり興味を取られているあたり、やはり兄妹だな。

 

 そんな感想を抱きつつ、俺はレヴィに借りた魔道具版携帯コンロで軽い食事を準備を始める。摂れる時にしっかりとした食事はするべきだ。ここまでの食事は、小休憩中にパンを齧ったり干し肉を噛み千切ったりと味気ないものだった。・・・ってか、そろそろ限界だと思うんだ、うちの魔女っ子が! 今も無言のまま、じーっと鍋から目を離さないし…少し恐いんだけど圧力が。


 一通り物色(触れないけど)を終えた二人が落ち着いた雰囲気で腰を下ろした。散々騒いだ後にやはり回収できないという現実に戻り、少し気分が落ちているっぽい。そっと二人分のスープを追加で器に注いだ。




「やっぱり美味いにゃ~ユーマの料理は」


「それはどうも」


「・・・」


 お褒めの言葉に礼を返した後も何か言いたい事でもあるか、レヴィは視線を俺の顔から動かさずじっと見つめている。

 

「ん? 何だ?」


「魔物や罠の傾向からな…そろそろ、迷宮の守護者(ダンジョンボス)が近いと思う」


「やっとか・・・ふぅー」


 ここまでの苦労もあって、自然と溜息が漏れた。


「にゃはは、やーっとだな」


 皮肉気味の笑いと言い回し方のレヴィだが、気持ちは同じようだ。


「で、その迷宮の守護者(ダンジョンボス)なんだが・・・総じて強い。余裕を残して相手できる奴じゃない…たとえ、若い迷宮の守護者でもな。だから・・・腹を割って話をしないか?」


「腹を割って?」


「そうだ。互いの手の内をな……例えば、ユーマが状態異常耐性や超再生能力…あと多分、変身系の力?を持っているとか」


「っ!?」


 言葉が詰まった。


 ・・・何故、レヴィが知っている。


 彼は、俺の怪訝な表情にも飄々とした態度を崩さず、ただ相変わらずの人を食ったような笑みを浮かべている。

 一瞬だけサングラスを直す指の隙間から覗いた彼の眼が妖しく輝き、俺を捉えているのが見えた。












巨大猪のイメージは、「おっことぬし(浸食バージョン)」です。


それでは、また来週~。

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