第11話 迷宮踏破②
なろう先達の作家さんからメールを頂きました。
この感情の高ぶりをなんと言って良いか、もうね・・・「感動した!!」。
…ネタが古すぎるな orz
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「くっ・・・硬い、なぁぁああああ!!」
振り下ろした剣が敵の外骨格に一旦阻まれるも、刃を止められた姿勢のまま全身の力と体重を加え無理矢理に圧し切った。
「関節部位でも、これかよ!」
予想以上のバカ気た硬さについ辟易した悲鳴を上げてしまう。
既に、俺は“鬼”の力を使っている状態だ。それにもかかわらず一撃では敵の装甲を突破できないのだから弱音を吐いても仕方ないと思う。
力を使っていると言っても、他人の目がある以上は半端な解放状態での結果である。それでも普段の1.5倍の力は出ているはずなのだが…。
群がる虫共との戦端はエルの先制魔法から始まった。
エルの氷結魔法で敵集団を分断して、さらにこちらへの侵攻経路を限定してもらった。一匹一匹は大した事なくとも、相手の数は十倍以上なのだから一度に相手をするのは拙い。
虫共の姿は蟻そのもので、その習性も軍隊蟻に似ていた。個より群を芯に、犠牲を厭わず集団で敵を襲って来る。
エルの先制で工夫しなければ、即座に押し切られていたと思う。この作戦を決定した俺とレヴィに拍手を送りたい。
ちなみに少女組の発案した作戦は・・・ガンガンいこうぜ!だった。
「ユーマ~剣よりも銃を使えにゃ~。すぐにナマクラになっちまうぞぃ~」
振り向かず飛んできたアドバイスにすぐさま従い、剣を左手に持ち替えホルスターに手をかける。
声のした方から銃声が続いているので、言葉通り有効なのだろう。
抜いた『イルリヒト』を目の前の蟻共に紹介がてら三発撃ち込む。
一発が蟻の頭部を弾き、残り二発は別個体の胸部と腹部にそれぞれ着弾して地面を滑らせた。ヘッドショットされた蟻以外はダメージもそこそこといった感じだが、後続の仲間からあっという間に錐揉みされていたので止めは不要だ。
「っと!」
一息着く間もない。
右手から新たな蟻の顎が迫っていた。
左の剣を開かれた顎に滑り込ませ受け止め…勢いを殺しきれない。身体ごと押され、足が地面を引き摺った。
相手の体格は大型犬ぐらいだが、その全身は重厚な甲殻に覆われている。天然の装甲兵みたいなものだ。重量の関係上、正面からの押し合いでは相手に軍配が上がる。
ギチギチと剣ごと閉じようとする顎に銃口を突っ込み引き金を引く。顔に近い所での発砲で耳がキーンとする。でも、齧られるよりはずっとマシだ。
頭を跳ね上げた蟻は、全身を脱力して俺の体から滑り落ちた。
これで視界が確保されっ?!
…後続の蟻が見える。
屍が纏わりついて移動は……無理だ。
その場での迎撃に意識を切り替える。
乱暴に屍から銃口を引き抜き、続けて弾丸を撃ち込む。
カチッ
「ちぃい!」
弾切れだ。
再装填しなければ…だが…。
「【無慈悲な雹弾】」
突如、左後方から届く援護射撃。
ばら撒かれる氷弾…一つ一つは小粒のようだが、物量は圧倒的だ。
一斉掃射。
エルを起点で扇状に次から次へと全身を穴だらけにされた蟻が屍の山に変わっていく。
俺は纏わりついていた屍を蹴って退け、一度エルの隣まで下がった。
『イルリヒト』のシリンダーをスライドし素早く排莢させる。
弾丸の再装填だ。
左腿装備のポーチから新しい弾丸を適当に掴み、一つ一つ確実に空の弾倉へ込めた。
物量で攻めてくる相手だと再装填の時間は致命的だな。
何と言ったか…スピードローダー?を用意すべきだな、やっぱり。
弾丸の再装填も完了し、すぐに前へと出る事も考えたがエルの魔法に巻き込まれかねないので撃ち終わりまで待つ事にした。ほんの少しだが息を着ける。
ついでに、この暇を利用して他の二人にも目を向けた。
トアは、やはりショートレンジでの戦闘を繰り広げている。
攻撃手段自体は夕闇から這い寄る獣の時とは違っていた。今回は、ガントレットによる拳撃ではなく、両腕に握られたトンファーの打撃だ。
拳士である彼女でも、この外骨格持ちの魔物相手に肉弾戦は遠慮したいのだろう。
トンファーの扱いは熟練したもので、クルクル回しながら連撃次々と屠っている。既に彼女の周りは、ベコンベコンに自慢の装甲を凹まされた蟻の死骸が積み上がっていた。
レヴィの方は、銃とダガーナイフを使ったミドルレンジでの戦闘だ。
使っている銃は……水平二連式のショットガンだ。確かソード・オフと呼ばれる物だったと思う。
銃を持っていたのは知らなかったが、腰に装備しているポーチに収納していたのだろう。多分、あのポーチは魔法の鞄の類だから…遺跡調査用の道具とかも出していたしな。
レヴィの戦い方は、一言で表せば技巧派だ。
逆手に持ったダガーナイフで相手の攻撃を器用に受け流しながら擦れ違い際に銃で一発だ。カウンターで近距離から放たれた散弾は綺麗に蟻の頭部を吹き飛ばしていた。
さらに、敵の攻撃を避けながら再装填も行っている。いくら再装填が楽な中折れ式のソード・オフ・ショットガンでも器用すぎる。
・・・凄いな。
っと! そろそろエルの魔法が途切れるか。
「休憩」
氷の弾丸を撃ち尽くしたエルがテクテクとこちらへ歩いてくる。
そのまま俺の傍にある小岩に腰かけ、いつものドライフルーツを齧り始めた。
戦闘中に足をブラブラさせて休憩するのはどうかなと思うのだが、エル曰く「魔法と魔法との間に必要」とのこと。
「あいよ。安心して休んでろ!」
入れ替わりで、また俺が前へと出る。
左手に片手剣、右手に銃を持ち、仲間の屍を越えてくる蟻共に突っ込んだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ラストォー!!」
トアの元気ハツラツな声の後で、轟音と衝撃波が俺達を襲う。
舞い上がる土煙で視界が遮られ、視線を地面に向けると近くまで亀裂が走っていた。
顔や頭に降ってくる細かい石片と蟻の死骸の欠片が微妙に痛い。
視界が晴れてくると土煙の先で、人影が揺れていた。
「フゥー… フゥー…」
肩を上下させた息遣いが聞える。
「ふぅー…・・・よし!」
「『よし!』じゃないわ、こぉの脳筋娘がぁぁぁあああ!!」
満足気な表情をするトアの後頭部にレヴィの高速ツッコミが炸裂した。
「いった~い!! 何すんのよ、イタ兄ぃ~」
「じゃかましい! この有様を見てわかんねえのか?」
ビシッと指差す先には、小クレーターの中で原型すら留めていない蟻?の死骸を中心に荒れ放題な光景だ。俺達も含めて。レヴィなんか、頭に蟻の脚先?が刺さってる。・・・ギャグ風味だけど。
「う゛っ・・・ちょびっと力んじゃったかな、テヘッ」
「何が『テヘッ』だ、何が!!」
「で、でもさ…最後は少し派手に決めたいのが、人の性じゃん?」
「同意」
少しなのか?!
エルも同意するんじゃない!
ちなみに、エルは俺を盾にしたおかげで無被害である。衝撃波の最中に俺を両手で前に出しながら「ユーマシールド!」とかほざいていた事に関しては、後で説教する予定だ。
このまま兄妹の二人を放っておくと時間がかかりそうなので、無理矢理に話を変える事にした。
「とりあえず! ・・・蟻の死骸をどうするか決めよう」
「当然、換金できる所は全部確保でしょ!」
「問題ない。私の鞄に全て入る」
「おいおい、これ全部をか? さすがに時間が……って、あれ? 少し減ってないか、死骸の数…」
トアの一撃の所為で軒並み壁際まで様々な残骸と共に吹き飛ばされているが、ざーっと見ただけでも数が少ないとわかる。
「ああ~!! そうだった…忘れてたにゃ~」
「えっ?! 遂に自分の頭が沸いてるって事を思い出してくれたの? …大丈夫だよ! イタ兄が施設に入っても、年に一度は面会に行くから安心して!!」
「・・・妹の言葉の暴力に心折れそうにゃ…。うぅぅ」
またしてもトアにレヴィが凹まされている。
この時、俺は異世界でも元の世界でも兄より妹の方が強いという結論が出したり「妹萌とかフィクションだ!!」と熱弁していた懐かしい友人の顔を思い出したりしていたのだが・・・現状、全く関係ない事である。
「で、本当の所は何なの?」
地面に膝を折り手を着いた状態のままで、レヴィはある場所を指差す。
・・・っ?!
自分の眼に映る光景を疑った。
そこには、首から上が無い蟻の死骸がある・・・いや、あった。
俺達が見ている目の前で、死骸は徐々に存在を薄れさせ、あっという間に虚空に溶けたのだ。
残されたのは、仄暗い紫の照明に反射する魔石だけだった。死骸は欠片すら無くなっている。
「「「・・・」」」
「この迷宮じゃ、魔物の剥ぎ取りは不可能だ」
「・・・剥ぎ取り不可能」
「ユーマ、創世の物語を知ってるかにゃ?」
目の前で起きた現象に未だ思考が追い付かない俺にレヴィが問いた。
急な話題に訝しげながらも答える。
「創世って、アレだろ…双子の神様が喧嘩して―――――」
シャルロッテさんから創世の物語は教えらている。
この世で、最も有名な神話だ。
遥か太古の時代に双子の創造神が宇宙を二つに分けた凄惨な戦争を起こした。永きに渡るこの争いは、この世の全て…それこそ、この宇宙の何もかもを混沌に沈めていった。
だが、目前まで迫っていた終焉は訪れなかった。
自らの行いを悔いた両軍の主力であった龍王と魔王が双子神を見限り、滅びゆく世界を救ったからだ。
神を信仰するのを止めた竜王と魔王は協力し合い、未だ無事な世界の保護と滅びた世界の欠片を集めて新たな世界を創造する。
その保護された世界が、現在の隣界と呼ばれるルブレス・ウィリデルパ・ラーウムラル・レウムフォンスの四つの世界で、新たに創造された世界が俺達の住んでいる世界アルブーム・・・だとか。
「そうそう、それだ。滅びた文明の遺跡ってのは、その物語にある滅びた世界の欠片の事だ。で、迷宮てのは、世界の欠片を媒体に顕現した世界の記憶なんだにゃ~、これが」
「ここで問題にゃ、記憶が顕現するように仕向けた物は?」
「……マナだろ」
「正解にゃ~。生物を魔物に変えたり、精霊を狂わすあのマナだ。さらに、付け加えるなら禍々しく濃縮されたマナだな……ユーマも良い物だとは思わなかっただろ? あれを見て…」
あの黒くて蠢いてた靄みたいなヤツか。
確かに気持ち悪かったな、あれから発生した風も匂いも音さえも。
「んなもんに呼び起こされ顕現する記憶は……想像できるだろ?」
「恐怖、苦痛、悲しみ…愉快な記憶じゃないのだけは、確かだな」
「にゃ~」
「でも、イタ兄。それが、死体の残らない魔物とどう関係がしてくんのよ?」
「言っただろ? 迷宮は顕現した記憶だって。中にいる魔物も同じだ。というより、負の記憶から生まれた悪夢かな。まあ、魔物はどこの世界でも脅威の代名詞だしにゃ~。悪夢は覚めれば何も残らにない・・・記憶も忘れれば消える」
「存在が不安定だから消え、残るのは顕現をさせたマナの塊・・・魔石」
「エルっちは賢いにゃ~。うちの脳筋妹にも見習ってほしいにゃ!」
「ぐぬぬぅ。人が大人しく聞いてれば、頭に乗って…。あれ?・・・でも他の迷宮じゃ、ちゃんと死骸も残るよね」
「そりゃ~いくら記憶から顕現した存在でも、それなりの時間を過ごせば存在は安定するからにゃ?」
「なんで、最後は疑問形なんだ?」
「にゃはは。ここまで全部、同志の学者の爺さんからの受け売りにゃ~。・・・そこら辺の話は、居眠りしてたから曖昧にゃ~」
「同志の学者の爺さんって、猫耳付きのカチューシャをいつもしてる変態の…」
は? 猫耳の変態??
「ユーマ、今の話は本気にしないでいいよ! 変態の戯言の可能性大だから!!」
「なっ?! 妹っちは、わかってないにゃ! どんなに歳をとっていても獣耳への愛は永遠にゃぁぁあああ!!」
「黙れ変態!!」
「へぶしっ!?」
なんだと?! 三連コンボから空中コンボへ繋ぎ、叩き落としからの馬乗りラッシュ…。
これは・・・死んだな、レヴィ。
目の前の極技に驚愕しているとクイクイ服の裾をエルに引っ張られた。
「・・・魔石集める」
…だな。
その後もしばらくの間、聞こえてくる苦痛の叫びや聞こえてはいけない破壊音をBGMに俺とエルは散らばっている魔石集めに勢を出した。
変態爺もその内…。
その変態と同志なレヴィ・・・語尾の「にゃ~」・・・謎が深まるばかりだ^^




