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第20話 魔改造の一端

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 え?


 なんだ…何が起こっている?


 ってか、誰の声?


 近くに誰かいるのか?


 いや、違うな。

 近くに誰かいるというよりは直接頭の中で喋っているような。

 それに、人の声というには無機質でどこか機械的…そう!ボーカロイドみたいな合成された音声って感じだ。


 突然、バチッという音と共に目の前が真っ白になる。


《本人と肉体との視界の共有を完了しました。聴覚の共有を開始…》


 声の後に続いて視界が回復していく。

 俺は結構混乱していたらしい。今まで目の前が真っ暗だという事に気づきもしなかった。


 徐々に晴れる視界。

 そこへ最初に飛び込んできたのは、飛竜ワイバーンの太っい牙で貫かれた自分の身体だった。


 な゛っ!?

 コレ、ヤバいんじゃね?

 どう見て致命傷だよね?

 俺、オレ・・・オワター!! アハッ、アハハハハハハ!!


 あまりにショッキングな光景に暴走件崩壊する俺を声が遮った。


《肉体の損傷度は危険域ですが問題ありません》


 ア、ソウナンデスカ・・・デモ、血とかめっさ出てるんですけど。

 しかも、そのピンクの奴って内臓だよね。

 それに痛みもないし、身体も全く動かないし…それでも?


《肉体の損傷は再生可能です。痛覚はダメージが規定域を超過したと同時に切ってあります。また現在、身体はワタシの管理下にあるため、肉体の操作はできません》


 へ、へぇ~そうなんだ~・・・・・・で、君は誰?


《私は、肉体が危険な状態に陥った場合のバックアップ用疑似人格プログラム『人工精霊殺戮01』です。“さっちゃん”と気軽にお呼びください》


 そっか…君は疑似人格さんなんですか。

 それで、名前が『人工精霊殺戮01』…。

 うん、物騒だから愛称のさっちゃんで呼ぶことにするよ…。

 ちなみにだけど、君をボクノカラダニシコンダノハ・・・シャルロッテさん?


《肯定します》


 だよねー聞かなくってもわかってたけど。ホラ、一応ね・・・ orz


《聴覚の共有が完了しました》


「グルルゥゥゥ…」


 おわっ!

 いきなり大音量の唸り声に驚く。

 一瞬、何事かと思ったがすぐに理解した。

 言わずもがな、飛竜ワイバーンのものだ。

 そりゃ、こんだけがっつり噛まれてたら唸り声だって大音量で聞えますとも。

 

 それにしてもこの状況は違和感ありまくりなんだよな。

 痛みもなく身体も自分で動かせない。でも、視覚と聴覚は状況の変化を伝えてくる。

 なんだか現実感が薄い。バーチャル的な…一人称視点のゲームを他人がプレイしている動画を見ているって感じが一番近い気がする。


《脅威からの緊急避難行動フェーズ1を開始します》


 声が頭に響く。

 まあ、さっちゃんはシャルロッテさん製のAI?みたいなものっぽいから悪いようにはならないだろうし、せっかく助けてくれるみたいだからここは大人しくしておこう。

 え、受け入れるの早すぎだって?

 半年も彼女の非常識に付き合っていたら諦めますよ~人間、諦めることも重要です!

 ……まあ、俺は人間なのか疑問ですけどね~ orz

 

 さあどうやるのか、お手並み拝見って感じで映し出される光景に意識を向ける。

 映し出された映像では、ちょうど身体を貫いている飛竜ワイバーンの牙へ拳が振り下ろされるところだった。

 

 拳と牙の衝突する。

 ハンマーで鉄塊を撃つように重々しい音。


 だが、その音に反してヤツの牙はビクともしていない。

 さすが竜の牙、高品質の武器や防具の素材として重宝されるだけあって頑丈だ。


 ってか、いくらなんでも裸拳じゃ無理だよ、さっちゃん。


 現状から脱出する手段として選んだのが素手で殴るとか、さっちゃんは少々脳筋気味のようだ。このまま任せていいものか、心配になってきた。

 さっちゃんにお任せすると決めたばかりだが、これは少し口を出した方がいいかもしれない。殴りつけている拳も血だらけだし、骨も少々とび出てるからな。

 しかし、俺が声をかけるより先にさっちゃんの声が響く。


《現状、脅威からの緊急避難にパワー不足と判断します。解決手段検索…検索完了。両腕限定での封印術式“鬼”を解放します》


 封印解放?

 ナニ、ソレ…


 告げられた言葉を問う間もなく映し出される光景。

 

 ボンッと爆発したように両腕の布が弾け飛び、袖が無くなった代わりに現れる二回りほどでかくなった赤黒い自分の腕。

 二、三度確かめるように左右の拳を開け閉めしている。さらに、肘を曲げた状態から筋肉が盛り上がるとその先からバシュッと角まで飛び出た。


《作業を再開します》


 ポカーンとする俺を華麗に放置するさっちゃん。


 頭上で組まれた拳が先程と同じ様に飛竜ワイバーンの牙へと振り下ろされる。


 今度はハンマーなんて生易しい音ではない、まさに爆音。


「グギャァァァアアアアアアア!!!!」


 狙い通りに牙は折れた・・・というか、飛竜ワイバーンごと吹っ飛んだ。


 俺の身体は、飛竜ワイバーンの顎門からずり落ち地面へ落下した。

 グチャッと生々しい着地?を決める身体。

 重傷を超える重傷を負った状態で受け身なしに落下したのだが、さっちゃんは何事もなかったように立ち上がり、未だ腹部に突き刺さっている牙をグリグリしながら抜き始める。


グチッ ブチブチッ ブシュッ ヌチャ グチュ


 痛みはない、痛みはないけど…もう少し丁寧に作業してもらえないだろうか。変な音を出しながら、内臓も少し出しながら見せられるグロ作業はなかなかクルものがある。しかも、自分の身体だし。


《異物の摘出完了。肉体再生、開始……》


 肉体再生の開始の合図で、牙が抜かれた腹部を中心にシューという音と立ち籠める湯気。


 今の俺は、他人様には見せられない格好だろう。

 血だらけの全身から湯気を立ち昇らせ、コパーッと開いた口から煙を吐き出す姿は、どこからどう見ても魔物だ。しかも、両腕は人外のモノ…これ、見られたら絶対に緊急討伐組まれるよ orz


《…完了。これより緊急避難行動フェーズ2に移行します》

 

 肉体の再生が完了した事を告げらた。

 ここまでに所要した時間、約一分。ドン引きな再生力だ。

 しかし、僅かな時間とはいえ交戦中には確保が難しい長さである。相手が飛竜ワイバーンなら尚更だ。

 ではこの時間、ヤツはどうしていたかというと・・・完全に伸びていた。脱出の時の一撃が思った以上に強力だったみたいだ。ハハッ…ハァ~。

 

 でも、これで安全に逃げられる状況になったわけだ。

 一時はどうなるかと思ったけど助かった。なんだかんだでもさすがシャルロッテさん製のAI?といったところか。これは、勝手に仕込んでいた事を差し引いても感謝すべきだろうか、いやでも…しかし―――――――


 ん?


 ここで、俺はあるおかしな事に気付いた。


 あれ、なんで失神している飛竜ワイバーンに近づいて行ってるのかな?

 森は反対方向ですよ~ねーさっちゃん、おーい。


《これより脅威の駆逐を開始します》


 なん…だとっ!?


 俺をスルーしたままさっちゃんは、飛竜ワイバーンの尻尾を掴んで背負うとそのまま逆方向に投げ飛ばした。


ズゥーン


 地面が揺れる。

 視界も揺れる。


「ガァッ!!!???」


 今の衝撃で飛竜ワイバーンは目を覚ましたようだ。


 だが、何もできないだろう。

 なぜなら、さっちゃんはワイバーンを投げ飛ばした後も尻尾は以前掴んだままであり、もう既に背負い直していたのだから。


ズゥーン ズゥーン ズゥーン ズゥーン―――――


 そこからは同情するくらい酷い光景だった。

 投げられては、すぐ逆方向に投げられるの無限投げ地獄。

 最初の方は投げられる度に苦痛の咆哮が聞こえていたが、それも投げの回数が二桁になった頃にはただ肉の潰れる音だけになってしまった。


《脅威の駆逐完了。封印術式“鬼”解放を解除します、…解除完了。これより緊急避難行動最終フェーズに移行します》


 無限投げ地獄は終了した。

 辺りに静寂が戻る・・・俺を中心に変わってしまった地形を残して。


 目の前で繰り返された暴力の嵐に思考が追い付かない。

 

 そんな俺を知ってか知らずか、さっちゃんはいつの間にか回収していた片手剣を手にテクテクと飛竜ワイバーンの屍に近寄っていくと自然な動作で剣をワイバーンの腹側に突き立てそのまま引き裂き始めた。


ズッ ズッ ザクッ ブシュッ グチャックチャッ ズルッ


 本日、二回目のグロ光景を見せられる。

 全身、返り血ですっごい事になっているだろう。

 もちろんこの間も、何も言えないでいる俺は放置されたままだ。

 そうこうしている内に剣を握っていた手が止まると今度は、分厚い皮を裂いた箇所に手を突っ込んでなにやら掴んで引き抜き出した。


 それは新鮮な生肉だった。

 血も滴るほどの新鮮さでだった。

 さっちゃんは、そのまま手で口元へと――――――――


 あのさっちゃんさん、何をなさってるんで?


《肉体再生を多用したため、自食作用オートファジーの進行が危険域に達しています。現在、外部からの食物補給が最優先事項です》


 そうだよね。再生の後ってお腹空くよね~

 それに今日は再生一杯したから、多分すっごい空腹なんだろな~

 でも、それ生肉だよね。

 しかも、モツの部分じゃね、ソレ。

 そのまま食べたらお腹壊しちゃうよ?


《問題ありません。この肉体は耐状態異常性能が十分備えられています》


 だ、だとしても竜のお肉だよ!

 ホラ、色々処理しないと噛み切れないくらい硬いんじゃないかな?


《既に対処済みです。先程の駆逐過程で肉の繊維質を十分に破壊しています》


 え!?ワイバーンが息絶えても投げ続けていたのって・・・


《肯定します》 


 ・・・O、OH!ダイナミッククッキング!!

 そ、それでも殺した魔物を生のまま食うとか、人としてどうなのって気がしない?

 ホラ、人として尊厳を失うとかね?


《…………解。味覚、嗅覚及び触覚の共有を開始します、…完了。お食事をお楽しみください》


 ちげぇぇえええ!!別に味わいとかじゃなくって!!

 って!?ぐはっ!くさっ!生臭っ!!鉄の味が口一杯にっ!おえっ!!

 ち、ちょっと、待って―――――――


~10分後~


《…栄養飢餓状態を脱しました。緊急避難行動全行程終了。身体の管理者権限が本人へ戻されます。3…2…1、お疲れ様でした》


ブツン!



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ここからは、後日聞いた話だ。

 ん、いきなり何だって?

 仕方ないじゃないか、俺はこの時の事を覚えてないんだから。 


 俺は治療を終えたロデリックさん達によって飛竜ワイバーンの屍の隣に座っているところを発見されたらしい。ロデリックさんが緊急用に高品質の魔法薬ポーションを所有していたおかげでバトスさんも無事だったみたい。

 それで発見時の俺なんだけど、全身血まみれで目は開いてるのに魂が抜けたように何をしても反応しない状態だったからかなり心配したってさ。それから、ここじゃ手の施しようがないからということで、街までロデリックさんが運んでくれたそうだ。

 ああ、飛竜ワイバーンの死体は、エルが魔道具を使って全部回収したとも聞いた。便利だよな~魔道具。

 んで、俺は街に運び込まれてから三日ぐらいして正気に戻ったんだ。

 状況を理解できてないのに半泣きのエルや男泣きした親父さんにいきなり抱きつかれてかなり困惑したな。


 え、具体的にどんな様子だったかって?


 う~ん、俺は覚えてないし…思い出そうとすると変なスイッチが入って大変だから本当かどうかは知らないけど。


 周りの人達が言うには――――――――

 







 ――――――――虚ろな目で体操座りしながらひたすらブツブツ呟いていたそうだよ、「生肉は嫌だ、生肉は嫌だ、生肉は嫌だ、生肉は嫌だ、生肉は嫌だ、生肉は嫌だ、生肉は嫌だ、生肉は嫌だ、生肉は嫌だ、生肉は嫌だ、生肉は嫌だ、生肉は嫌だ、生肉は嫌だ、生肉は嫌だ、生肉は嫌だ、生肉は嫌だ、生肉は嫌だ、生肉は嫌だ、生肉は嫌だ、生肉は嫌だ、生肉は嫌………」ってね。

 


 


 

お読み頂きありがとうございます。


これで、第一章本編は終了です。

次回から幕間となります。内容は、本編の裏話など。


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