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その男、神になる  作者: ヒデス


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3/5

【神々の畏怖】

ルシファーが堕とされた地獄の最下層――NEZARION(ネザリオン)。


そこは、一度足を踏み入れれば二度と抜け出せないとされる場所だった。



地獄の底から地上へ至る道は果てしなく長く、進む者の生命力を容赦なく奪っていく。


たとえ脱出を試みたとしても、その多くは道半ばで力尽きるという。



さらに、地獄には七つの門が存在する。


それぞれの門には強大な力を持つ番人が配置され、脱出を試みる者の行く手を阻んでいた。



つまり、地獄からの脱出はほぼ不可能。


しかし、ルシファーはその常識を覆した。



わずか三日。


たった三日で七つの門を突破し、地獄からの脱出を果たしたのだ。



「ふっ……こうも容易く地獄を抜け出せるとはな。拍子抜けというべきか、それとも……」



ルシファーは何か腑に落ちないものを感じながらも、考えを巡らせた。



「まあ、ケルベロスには少々手を焼いたが……所詮、このルシファーの敵ではなかったということか」



そう呟くと、目の前にそびえる巨大な扉を見上げた。


それは、地獄と現世を隔てる最後の扉だった。


ここを越えれば、いよいよ人間たちの暮らす世界へと辿り着く。



だが、ルシファーには一つ、果たさねばならない目的があった。


神々への復讐を遂げるため、どうしても手に入れたい力があったのだ。



その力とは、地球の深部に封印された邪神――Verios(ヴェリオス)。


血を司る神であり、通称「血の神」と呼ばれる存在だ。



ヴェリオスには明確な肉体も、生命の源となる核も存在しない。


その存在自体が意思を持つ血であり、他の神々とは根本的に異なっていた。


太古の昔、人々はその恐るべき力に畏怖しながらも、神として崇めていた。



ヴェリオスが持つ能力もまた、極めて異質だった。


変質した血は、持ち主の意思に応じて自在に形を変える。


剣や槍、盾といった武具はもちろん、あらゆる形状へと変化させることが可能だった。



だが、ヴェリオスの力はそれだけではない。


ひとたびその血が他の生物の血に触れれば、相手の身体的特徴や能力を読み取り、自らに再現することができる。


つまり、相手の持つ力を自分のものにできるのだ。



さらに恐ろしいのは、他の生命体を支配する能力だった。


ヴェリオスの血が一定量、他の生物の体内に入り込むと、その意識を奪い、完全に支配することができる。


一度支配されれば、もはや自分の意思で身体を動かすことはできない。


その行動はすべてヴェリオスの意思に委ねられ、生かすも殺すも思いのままとなる。



しかし、神々がヴェリオスを最も恐れた理由は、別にあった。


それは、決して滅びることのない不死の存在だということだ。



ヴェリオスには破壊すべき肉体も、生命の源となる核も存在しない。


どれほど強大な力をぶつけようと、その存在を完全に消し去ることはできなかった。



神々は幾度となく討伐を試みた。


だが、ついに滅ぼす方法を見つけることはできなかった。



そこで神々は討伐を断念し、封印する道を選んだ。


複数の神々が力を合わせ、ヴェリオスを地球の深層へと封じ込めたのだ。



それから悠久の時が流れた今も、血の神は地の底に封印され続けている。



「……ヴェリオスか」



ルシファーは静かに呟いた。


あの力を利用できれば、人間を意のままに操ることもできる。



神々が愛し、庇護する人間たち。


その人間を支配できれば、神々への信仰を根底から揺るがすことも不可能ではない。



そして、信仰を失った神々は力を衰えさせていく。



「この力こそが、人間の信仰を神々から奪う鍵となる……」



だが、問題が一つあった。



ヴェリオスの力はあまりにも強大だ。


その血を取り込んだからといって、誰もが力を得られるわけではない。


あの力を宿すには、それに耐えうる器が必要だった。



「……人間の中に、あの力を宿せる者がいるとすれば……」



ルシファーは六枚の翼を畳んだ。


やがてその姿は変わり、端正な顔立ちをした一人の人間の男へと変貌する。


そして、目の前にそびえる巨大な扉を押し開いた。



その先に広がるのは、神々が愛してやまない人間たちの世界。


ルシファーは静かに、現世へと足を踏み入れた。

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