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2-2

 二階建ての少し大きい建物の前に来た。壁には、剣と槍の前にペガサスが描かれたレリーフが飾られている。ここが冒険者ギルドなのだろう。

 冒険者といえば、荒くれ者。今から、このヤンキーの巣窟(そうくつ)に足を踏み入れるのか。まだ学生だった頃、ヤンキーにカツアゲされたことを思い出す。殴られて、お金も取られて、最悪だった。

 俺はテオの肩あたりの服を掴む。手が少し震えてしまう。


「おい、大丈夫か?」


 両開きのドアを開け、中に入る。

 中は、役所のような作りになっていた。受付があって、長イスがいくつか置いてある。壁には掲示板があり、何枚か紙が貼られている。受付で話している人、掲示板の前で話し合っているグループ、イスに座って紙を見ている人。いきなり喧嘩(けんか)を売ってくるような人はいなかった。




 テオは慣れているのだろう、スタスタと空いている受付に向かう。

 二十代前半くらいの若い女性だ。肩までの長さの黒いストレートの髪をいじりながら、下を向いて何か書いている。


「すみません、冒険者登録をしたいのですが」


 テオが声をかけると、女性は手を止め顔を上げた。俺と目が合うと、勢いよく立ち上がる。ちょっとビックリした。


「冒険者登録ですね。そちらにおかけください」


 フードを被ったままなのは失礼かな、とは思ったが、何か怖いのでそのままにした。テオと二人で丸イスに座る。受付の女性も座り直した。


「新規での受付、ということでしょうか」


 声をかけたのはテオなのに、俺の顔をジッと見ながら聞いてくる。目を逸らしテオのほうを見ると、死んだような目になっている。見た目が子供だから仕方ないかな。でも俺はわからないから、テオと話をしてもらいたい。


「新規で、オレとこの人の二人でお願いします」


 テオは淡々とした口調で話している。


「わかりました。紹介状はお持ちですか?」


 ニッコリと俺の方を見る。


「あ、はい」


 俺はマントの内ポケットから、メリアが書いてくれた紹介状を取り出す。手渡そうとして、メリアに手を握られたことを思い出す。そっと受付台の上に置き、すぐさま手を引っ込める。


「こちら、お預かりしますね」


 女性は、横に置いてある別の机で封を切り、中身を確認する。その紹介状を見ながら、別の紙に何かを書き写している。

 この世界では、紙やペンが普通にあるんだな。


「こちらにお名前をお願いします。テオさんはここに、保護者となるユウトさんのお名前も書いてください。あと、パーティーの名前をここに書いてください」


 目の前に、二枚の紙が置かれた。テオと俺の分。剣と槍とペガサスのマークのついた紙に、いろいろと書いてある。読めるな、うん、読める。

 紹介者のところには、メリアとオレシスの名が書いてあった。

 テオは台に置いてあったペンを持ち、指示された箇所に『ユウト』『テオ』と記入する。


「パーティー名……考えてなかったな。何がいい?」


「なんでもいいよ」


「銀翼の剣でいいか? テオの日記に書いてあった。冒険者になって最強パーティーを目指すんだって」


 ちょっと恥ずかしい。しかし、別の案があるわけではない。


「いいよ」


 テオは、書き終わると俺にペンを手渡してくれた。


「名前、書けるか?」


「大丈夫そう」


 ボールペンだろうか。淡く光る黒い石が付いている。普通に書くことができた。


「では、少々お待ちください」


 受付の女性は、紙を持って奥の部屋に入っていった。




「それも魔導具だよ」


 テオが小声で教えてくれる。


「模造品だけどね。さっきの噴水みたいに、インクが減らないペンがあって、それを真似て作った物だよ。これはあまり複雑な造りじゃないから、そこまで高価ではないよ。インクは補充しないといけないし」


 万年筆みたいなものかな。

 形はよくあるボールペンみたいだ。石の部分が少し重いかな。

 つい、ペン回しをしてみた。親指の周りをクルッときれいに回る。学生時代、授業中によくやっていたな。クルクルと何度か回す。


「ど、どうやっているんだ?」


 テオが俺の手元を凝視している。


「お待たせしました」


 受付の女性が戻ってきた。持っていたペンを台に戻す。


「手続きは完了しましたので、冒険者証をお渡しします」


 紐の付いた金属の板だ。カードサイズの半分くらいか。

 俺に向かって差し出されていたが、テオがサッと取る。女性はテオをにらんでいる。


「あと、冒険者の基本的なことについての説明を……」


「知ってるんで、大丈夫です」


 テオが食い気味に答える。


「ほら、行くぞ」


「あ、ユウトさん、何かありましたら遠慮なく聞きに来て下さいね」


 名前を呼ばれる。少し怖い。


「あ、ありがとうございました」


 お礼だけ言って、すぐにその場を離れた。


「これ、首から下げておいてくれ」


 冒険者証を渡される。冒険者ギルドのシンボルなのだろう、剣と槍とペガサスのマークと名前、Eの文字。Eランクってことかな。


「こっちだ」


 テオはスタスタと歩いていってしまう。入ってきた扉とは違う所に向かっているようだ。いろいろな紙が貼ってある掲示板が目に入る。


『東北の森で魔獣の目撃多数。ランクD以下の者は立ち入り禁止』

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