内部共振
周期は、23時間57分前後。
揺れは毎日、少しずつ早まる。
一分のときもあれば、二分寄る日もある。誤差と呼ぶには、並び方が整いすぎていた。
古本は計算する。机の上に走り書きした時刻列を、指先で追いながら。
「このままだと、三週間で授業時間の枠を外れ始める」
志乃は机に座ったまま、返事をしなかった。
昼の揺れ。
夜のざわめき。
二重に刻まれる周期が、胸の奥で絡み合う。塔のリズムと、自分のリズムが、同じ拍で脈打っている。
(私だけじゃないはず)
そう思うのに、周囲に同じ症状は見えない。
息が乱れる生徒もいない。指先が光る生徒もいない。
見えているのは、志乃だけ。
演習中。
出力は制限されている。最大値の六割。安全の名のもとに、全員の手足が揃えられる。
その最中、一瞬だけ。
志乃の足元の床が、きし、と軋んだ。
古い木材が鳴く音ではない。校舎の“構造”が鳴いたような、鈍い抵抗。
同時に、空気の密度が変わる。局所的に霊気が濃くなる。肺に入る感触が重くなる。
志乃は反射で抑え込もうとして、遅れた。
神代教官の視線が、そこで止まる。
初めて、はっきりと。
見ている。
見抜こうとしている。
偶然ではない、という目だった。
志乃は掌を握り、光が滲まないように息を沈めた。
夜。
都市中央・観測室。
担当者は、今日の波形をもう一度拡大してから、報告を上げた。
「減衰なし。振幅、増大傾向です」
返答は短い。
継続監視
それだけ。
まだ動かない。
まだ、動けない。
モニターの隅で、グラフの山がわずかに高くなっていく。
時間軸の上を、毎日少しずつ前へ削っていく。
“たった数分”が、確実に未来をずらしていた。




