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もう1つのロストテクノロジー  作者: 維岡 真
第1章 周期と位相

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17/81

二重波

周期は23時間32分。


揺れは10:16。

七秒半。


志乃の先行は1.6秒。


塔は明確に遅れて応答する。もはや「同調」ではない。追従だ。志乃の波が先に立ち、スカイ・ピラーがそれを追いかける。


だが問題は、それだけではなかった。


古本が示した予測が、現実になり始める。


夜の揺れが、昼の揺れに近づいている。


22:48。

夜の波。五秒。


そして翌日。


10:16。

昼の波。七秒半。


間隔が縮んでいる。二つの山が、同じ一日の中で互いに寄っていく。


西野が呟いた。


「一日に二回、強い波が来るようになる……」


冗談の調子では言えない。言った瞬間に現実が確定するみたいで、声が小さくなる。


体調不良者が増えた。

立ちくらみだけじゃない。吐き気、過呼吸、意識の混濁。医療班は常駐から増員へ切り替わり、保健室は臨時の観測室みたいになっていく。


学院は午後の授業を短縮した。理由は「生徒の安全確保」。誰も反論しない。反論する余裕がない。


都市ニュースも、ついに言葉を変えた。


“霊気循環異常の可能性”


「可能性」という逃げ道を残したまま、異常の存在だけは認めた形だ。視聴者が欲しいのは結論なのに、出せる結論はまだない。


志乃は教室で、机に手を置いた。


胸の奥が重い。波が消えない。

揺れが終わっても、内側に“残響”が残るようになった。次の揺れの予兆ではなく、前の揺れの残り滓。身体が平常に戻れない。


塔は応答する。

けれど遅い。


どこか、ぎこちない。


完璧だった直線が、少しずつ人間くさい遅れ方をし始めている。

それがいちばん不安だった。



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