二重波
周期は23時間32分。
揺れは10:16。
七秒半。
志乃の先行は1.6秒。
塔は明確に遅れて応答する。もはや「同調」ではない。追従だ。志乃の波が先に立ち、スカイ・ピラーがそれを追いかける。
だが問題は、それだけではなかった。
古本が示した予測が、現実になり始める。
夜の揺れが、昼の揺れに近づいている。
22:48。
夜の波。五秒。
そして翌日。
10:16。
昼の波。七秒半。
間隔が縮んでいる。二つの山が、同じ一日の中で互いに寄っていく。
西野が呟いた。
「一日に二回、強い波が来るようになる……」
冗談の調子では言えない。言った瞬間に現実が確定するみたいで、声が小さくなる。
体調不良者が増えた。
立ちくらみだけじゃない。吐き気、過呼吸、意識の混濁。医療班は常駐から増員へ切り替わり、保健室は臨時の観測室みたいになっていく。
学院は午後の授業を短縮した。理由は「生徒の安全確保」。誰も反論しない。反論する余裕がない。
都市ニュースも、ついに言葉を変えた。
“霊気循環異常の可能性”
「可能性」という逃げ道を残したまま、異常の存在だけは認めた形だ。視聴者が欲しいのは結論なのに、出せる結論はまだない。
志乃は教室で、机に手を置いた。
胸の奥が重い。波が消えない。
揺れが終わっても、内側に“残響”が残るようになった。次の揺れの予兆ではなく、前の揺れの残り滓。身体が平常に戻れない。
塔は応答する。
けれど遅い。
どこか、ぎこちない。
完璧だった直線が、少しずつ人間くさい遅れ方をし始めている。
それがいちばん不安だった。




