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もう1つのロストテクノロジー  作者: 維岡 真
第1章 周期と位相

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共鳴点

屋上。


風が強い。フェンスが低く唸り、制服の袖が引っ張られる。いつもなら誰かが冗談を言って場を緩めるのに、今日はそれが出てこない。風の音が会話の隙間を埋めていた。


古本が言う。


「仮説がある」


志乃を見る。視線は淡々としているのに、言葉だけが慎重だった。


「塔と志乃の間に、“共鳴点”がある」


「共鳴点……?」


志乃が繰り返すと、古本は手帳を閉じたまま続ける。


「霊気は万物に備わるエネルギーだ。なら、同質の波が一定条件で一致したとき、閉じた循環ができる可能性がある」


西野が顔をしかめる。


「閉じた循環って、何だよ」


「外部制御を通らない、二点間の直接共振」


古本は言い切った。


つまり――塔と志乃が、都市の制御を介さずにつながっている。

スカイ・ピラーの循環系から見れば“外部”。学院の安全設計から見れば“盲点”。どちらにとっても、想定外だ。


志乃は塔を見る。


距離はある。都市の中心と学院屋上。目測で届くはずがない。

だが波は距離を無視する。霊気は配線ではなく、空気でもない。だからこそ、どこまで届くのか誰も確信できない。


今日の揺れは10:19。

周期は縮み続けている。


このままなら、数日で昼と夜が重なる。


一日に二回ではなく、境界が溶ける。

揺れが「来る」のではなく、「途切れなくなる」。


都市はまだ立っている。灯も戻る。人は働き、笑い、ニュースは言葉を選ぶ。

けれど初めて、学院の正門前に記者が現れた。


制服ではない。カメラとマイク。目線の鋭さだけが、風より冷たい。


「異常」という言葉が、ついに外へ出始めた。

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