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もう1つのロストテクノロジー  作者: 維岡 真
第1章 周期と位相

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13/81

短縮

周期は、23時間48分。


一日ごとに、十二分ずつ前倒しになる計算だった。

もう「少しずつ」ではない。露骨な加速だ。


揺れは10:28。


五秒。


教室の霊気灯が、はっきり揺れた。明滅というより、光量が波に合わせて脈を打つ。

床が鳴り、机の脚が微かに擦れる。空気が沈み、耳の奥が詰まる。


数名がその場にしゃがみ込み、ひとりは椅子からずり落ちた。

医療班がすぐ動く。担架ではない。まず呼吸と脈と、霊気過敏の兆候を拾う。手順が、もう慣れているのが怖い。


都市ニュースは、まだ触れない。

発表は短い。


「一時的な出力変動」


それだけ。原因も、影響も、塔の名前も出ない。


志乃は揺れの直前に、立ち上がっていた。


自分の波が来るのがわかる。

時計を見るより早く、胸の奥の“型”が先に立ち上がる。


塔より早い。


もう隠せない。隠す意味も、薄れていく。


神代教官が近づいた。教壇から降り、志乃のすぐ前で止まる。視線は逃げない。


「自覚はあるな」


肯定も否定もできない。

志乃はただ、小さく頷いた。


神代は声を落とす。


「お前は塔と“接続”している可能性がある」


接続。


その単語が、初めて言葉として刺さった。

志乃は否定しなかった。もう否定するための材料が、自分の中に残っていない。


媒介じゃない。偶然でもない。


霊気は、力そのものだ。

ならば同じ力が共鳴することは——あり得る。


問題は、ひとつ。


どちらが主か。


夜。


中央塔内部。


西野の父が端末を睨みつけていた。無数のログの中から、ひとつの表示だけを拡大する。


「逆位相、拡大」


塔内部の波が、外部出力の波とずれ始めている。

戻るはずの流れが戻らない。行くはずの流れが行き遅れる。


制御が追いついていない。


「このままでは循環が乱れる」


誰かが呟いた。小声だったが、室内の全員に聞こえる小声だった。


まだ崩壊じゃない。

警報を鳴らす段階でもない。


だが初めて――


「停止」の可能性が議題に上った。


都市を止める。

それは禁句に近い。口にしただけで責任が生まれる言葉だ。


揺れは毎日早まる。

志乃は塔より早く波打つ。

塔は志乃を追う。


あるいは、志乃が塔を引く。


都市はまだ平穏だ。人は生活し、灯は灯り、空は均質を装っている。

けれど均衡は、もう崩れ始めていた。

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