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第29話 欲望
その夜。
ベッドに入ってからも
俺はなかなか寝付けなかった。
あの時、
もし奥川が抵抗を続けていたら。
俺の醜い欲望は暴走し、
彼女に一生消えない心の傷を
残すことになっていたかもしれない。
そうならなかったことに
俺は一先ず胸を撫で下ろした。
今回はギリギリのところで俺は踏みとどまった。
しかし今後、
何かの拍子に一線を越えてしまうかもしれない。
目の前にぶら下がった禁断の果実を口にするのは
太古から定められた人間の運命だ。
欲望に貴賤はない。
いや高貴だからこそ・・。
欲望に堕落した社会的身分の高い屑共を
俺は嫌というほど見てきた。
このまま奥川の側にいたら・・。
いずれ俺は彼女を・・。
そう考えると恐怖だった。
俺の体は呪われている。




