それぞれの時間
曇り空の中、一台の自転車が
川沿いの道を走っていた。
髪を一つにまとめて風になびかせながら、
雲の切れ間から差し込む日差しが
サングラスに反射する。
いつも通り、彼女は走っていた。
ただひたすらに。
何かを吐き出すように、汗をかき、ペダルを回す。
あの日以降、他の三人と走ることもなくなった。
それでも一人自転車に乗り続けてきた。
しかし。
それでも、気分は晴れない。
なぜだろう。
あの日、四人で杉山へ向かった。
その先の記憶は曖昧だった。
数日間、どこかにいた気がする。
だが、その間のことは何一つ思い出せない。
ただ、胸の奥に言いようのない
空白だけが残っていた。
三人とは、しばらく一緒に走っていない。
カズキは自転車を辞めてしまった。
「これからはバイクで楽しむことにしたよ。」
ミノルも同じく、
全く別の趣味に熱中するようになった。
ミズキもまた、自転車を辞めてしまった。
彼女は今度、結婚して会社も辞めるらしい。
三人ともあれ以降、連絡も取ることすら無くなった。
「私は......。」
自転車は乗っている。
今日も、一人で川沿いを走る。
川の流れを見つめながら、時計を見る。
「そろそろ、戻らないと。」
そう言って跨る自転車は、
スポーツ自転車ではなく、シティサイクルだった。
四人を知る者たちは首をかしげた。
あれほど自転車に夢中だった四人が、
まるで申し合わせたかのように
別々の人生を歩み始めたのだから。
理由を知る者はいない。
本人たちでさえ。




