アルバイト
「何ですか?」
警戒しつつも彼女は男に答える。
「ええ、申し訳ないですが、連行します!」
男から出てきた言葉に、
一瞬何を言われたのか理解できずにいた。
「あなたはこの街の条例に反した行為をされました。
これよりあなた達を連行するので、
よろしくお願いします。」
丁寧に伝えてくるが、言葉の内容に理解できない
単語が混じっているせいか、余計に困惑していた。
「あの、連行って?、え?条例?」
未だ困惑中の彼女に、男が続ける。
「先程のあなた達の行為は、[売春]に当たり、
条例の「街中での売春行為を禁ずる」に当たります!ですので、お二人連行します!」
「え?売春??」
「ええ、そうです。あなたたー」
「ちょっとまって!」
自分に言われた事に驚きつつも、男の言葉を遮る。
「私はー」
駅の行き交う人の中、自分が考えていたより
大きな声を出していた事に気付き、少し小声になる。
「私は、売春なんてしてない!」
彼女の反論に不思議そうな表情の男。
「先程、○○○ホテルから出て来られましたよね?」
先程と変わらぬ音量に、慌てて
「ちょっと!声!!大きい!」
周りの人から見られている気がして、恥ずかしさと
デリカシーのかけらもない目の前の男への怒りで、
顔を赤らめ男を睨む。
「何を怒っているのです?
私は事実を確認しているだけですが?」
この男は。
配慮が足りぬのだろう。
見た目良いのに言動はとても残念な男だ。
先程から話しかけてくる声も変わらず、大きい。
公衆の面前で、これだけ大きな声なのだから
通る人は何事かと見るのがわからないのか?
そもそも、異様な格好はどこにいても
目に付くものだというのに。
男への怒りを感じつつ、
「と、とにかくそこから出てきて、何が悪いの?
普通に男女がホテルから出てきただけじゃない!」
男に向かい、小声で反論する。
「普通、か。」
突然、彼女の後から声。
振り向くとそこには自分より小さな少女が
男と同じ格好をして立っていた。
キレイに整っている顔立ちだが、
男以上に、異様な雰囲気を醸し出している。
その姿に言葉を失った。
「普通、ならそれを貰うのか?」
彼女の鞄へ視線を向ける少女。
「な、何?」
鞄を身体の後ろへ隠すようにしながら、
少女を見返す。
「普通の男女は、金銭を渡すものなのだな。」
フッと笑う少女に、先の男が強く否定する。
「そんな事はありません!」
ビックリしていると、
「隊長!普通の愛し合う間柄では
金銭のやり取りのある行為はないと!
そう、思います!」
ビシッと、姿勢を正し少女へ向き直る。
そんな男の言葉に少女は
「カナメ・・・、皮肉だよ。」
呆れるような表情をして、そう告げた。




