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条例都市  作者: こころ
19/45

迷惑停車

カナメは女性に向かい、一枚の写真を見せた。

「先日、このビルの前に停車していたのは、

この車ですよね?」

「似てるけど、私のじゃないわ。」

「そうなんですか?

私は間違いなくそうだと思うんですけど。」

「しつこいわね、知らないわよ。」

写真に映るのは一台の車。

斜め上から撮影されたものであり、

運転席の姿や、車のナンバーは確認できない。

「そうですか?間違いなくあなたですよ、これ。」

カナメは笑顔のまま、女性に写真を突きつけた。

「何を証拠にそんなこと言えるの?

【執行部】は捏ち上げで、拉致でもするのかしら?」

「拉致なんて、酷いですね。」

ふふふ、とカナメは笑った。

「ほんと、いい加減にして!

遅刻しちゃうから、失礼するわ!」

怒った女性はカナメを押し除け、車に乗ろうとした。

「証拠ですか?この日声をかけたの私なんですよ。

この車であなたが運転席に座っていたのを

私が見ています。」

「え?!」

カナメの言葉に女性の手が止まる。

「覚えていませんか?

あの日声をかけたの、私ですよ。」

ニッコリと、カナメ。

「し、知らないわよ。」

女性は動揺した。

「それに、車内の顔まで見えるわけないじゃない。

その日は雨で視界が悪かったのだからー」

はっ、として女性はカナメに振り返る。

「そうですね、この日は確かに小雨でした。

視界悪かったです。でも、どうして?」

「この場にいないあなたがそれを知ってるんです?」

「そ、それは。」

カナメの追及に言い淀む。

「私、雨のこと話してませんよ?」

「・・・・じゃない。」

ボソボソと答える女性。

「え?なんです?」

「私だけじゃないでしょ!!」

カナメを、キッ、と睨み、女性は叫んだ。

「私だけが悪いの?違うでしょ!

他の車もあったでしょ!!

塾に通う子供を迎えに行っただけよ!!」

「夜道の心配をしない親なんて、いないでしょ!

受験に頑張る子供のため少しの時間、

待っていただけじゃないの!」

叫ぶ女性だったが、笑顔のままカナメが答えた。

「近くに専用駐車場ありますよね?

しかも、ここ駐停車禁止の区間ですよ?」

「だから!」

「すぐに移動したでしょ!!」

絶叫に近い声で、カナメに言い返す女性。

「貴方は何か勘違いをされているようだ。」

2人のやりとりを聞いていた少女が口を開いた。

「すぐに移動したから、問題ない。

そんな道理は通じない。」

「[少しの時間だから]、

[すぐに移動したから]、

[子供のため]、

色々と貴方の言い分はあるだろうが、

ここでは条例が法だ。」

冷たい声で続ける。

「貴方は、駐停車禁止の場所で車を停車させた。

近くに駐車場があるのにも関わらず、だ。」

「さらに、我々が声をかけた時、

その場から逃げ出した。

これは悪質極まりない。」

「だから、それは私だけじゃー」

言いかける女性だったが、

それを少女が手を掲げ、制した。

「先程、言った通り貴方に拒否権はない。

これより【執行部】が連行する。」

いつの間にか周りを軍服姿の人達に囲まれていた。

「と、言うわけでなので、来てもらいますね。」

カナメは女性の腕を掴もうとすると、

それを払いのけるように、かわす女性。

「ちょ、やめて!触らないで!!私は悪くない!!」

抵抗する女性だったが、

「抵抗すると、少し痛い目にあいますよ。」

カナメの笑顔で話す言葉に、畏怖したのか、

スッと力が抜けたように抵抗するのをやめた。

「貴方だけ?そんなわけなかろう。」

女性に向かって少女の目が光る。

「違反者は全員だ。」

女性を見上げる少女の目は笑っているようだ。

その笑顔に背筋が冷えるのを感じた。

「ちなみに、あの日いた他の四台も、

もう連行済みですよ。」

「え・・・・?」

カナメの言葉に、女性の顔から血の気が引いた。

「貴方だけ、狙ったわけではありません。」



「私だけじゃない。」

連行される女性の口からポツリと溢れる。

その言葉が聞こえたのか、少女は女性に向かって

「条例の前では皆平等だ。」

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