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条例都市  作者: こころ
15/45

執行部隊

メグミ達の部屋から伸びる廊下の先に、

小さな監視室がある。

壁一面を埋め尽くす巨大モニターには

街中の映像が映し出され、

無数のウィンドウが現れては消えていた。

慣れていない者なら数分で目が疲れるだろう

そのモニターの前で1人の男が椅子に座っている。

細身の身体ではあるが、服を着ていてもわかる、

鍛えられた感のある体格。

それとは裏腹に、どこかやる気のない目。

顎には無精髭を生やしている。

一見、やる気の無さそうに見えるが、

その目は目の前に映し出されるモニターを鋭く、

見つめている。

「いつもながらこの部屋は疲れますね。」

後から声をかける男がいた。

そして、その脇に1人の女性。

モニターを見ている男と同じくらいの背丈。

華奢な身体、目が糸のように細いが、その瞳は

獲物を逃さないと言わんばかりの鋭さを持っていた。

「ああ、コウジか。」

後ろを振り向かず男は答えた。

「まぁ、これはこれで大変だけど。

お仕事だからね。仕方ない。」

ボリボリと、顎髭を掻きながら続けた。

「今日も、忙しくなりそうだよ。」

モニターはいくつかのウィンドウが

枠を黄色に光らせている。

「これは、橋の手前の所ですかねー。」

コウジは男の脇に近づき、画面を見つめた。

「そうだねー。この感じだと4件は出るかな。」

「え?」

「条例違反がね、4件」

やれやれ、と言うように頭を掻きながら呟く。

「隊長へ、報告しないとな。」

「タクロウさん、どう振り分けますか?」

モニターを見ているタクロウに、コウジは訊ねた。

「うーん、そうだねぇ。」

「最終的な判断は隊長に任せるけど。

コウジとマユミはバイクとこの車かな。

こっちは俺と隊長、あと2人。

その後隊長がこっちに向かう、

といった感じだろうね。」

言いながら、

「申し訳ないんだけど、隊長へ報告してくれる?

マユミ。」

もう1人の女性に向かって伝えた。

「了解ですー。副隊長ー。」

言うと目を輝かせながら部屋を走って出て行った。

「直接行かなくても、

ここからコールで連絡すれば良いのに。」

コウジはマユミの行動に呆れた。

「確かにそうだね。」

言いなごらタクロウはまた、モニターへ目を向けた。

「でも、まぁ。あれだ。

いつものように、抱きつきたいんだろうね。」

顎髭を弄り、コウジに答えた。

モニターには、コンビニの駐車場の様子が

映し出されていた。

黄色に点滅するモニターは現在4つ。

車の脇でタバコを吸っている男、

そしてその近くにやってきた自転車乗りの4人、

コンビニに向かってくる1台の車、

赤信号に捕まっている1台のバイクが

それぞれ映し出されている。


「しかし、本当に怖いですよね。」

「何が?」

「このシステムですよ。街へ入る前から人物を追跡して、行動予測までしている。」

「ああ。」

タクロウは苦笑した。

「俺もそう思うよ。」


これから待ち受ける出来事を知らぬ、

モニターの中の者達へ、哀れみながらも笑っていた。

「怖いよね。

このシステムを作った人はー」

モニターに目を向けていた。

『危険視予測演算処理システム』が、

この街を監視し、管理している。

そして、条例に触れた者を確保、

連行し処罰する部隊が彼ら【執行部】である。

「化け物だね。」


「さて、そろそろ騒ぎも終わるかなぁ。

という事で、我々も向かいますか。」

タクロウはそう言い、部屋を出ていく。

「そうですね。行きましょうか。」

コウジはタクロウの後を付いて、部屋を出る。


モニターは静かに街を映し続けていた。

その中で黄色で点滅する四つの画面だけが、

これから起きる出来事を知っているかのように

光を放っていた。


まだ誰も条例を犯していない。

だがシステムは、既に「候補者」として

選び出していた。

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