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条例都市  作者: こころ
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執行部隊

国内にある小さな街。

そこは、法律とは別に条例が定められた街であった。

そこの住人はもちろん、通り過ぎる者や、

その街に入った者、全てにおいて、

条例が適用される。

一見、理不尽な街のようではあるが、

条例に触れさえしなければ、住みやすい街であった。

街は、カメラが設置され、空はドローンが飛び交う。

それ以外は他の街と何ら変わりない、普通な街だ。

他の街と違うとすれば、この街は警察がなかった。

変わりに、取り締まる部隊が存在している。

部隊の名は【執行部】。

数は不明ではあるが、街の条例を正義とし、

条例に触れた者を処罰する。

それはいかなる場所であっても、

いかなる者であっても、等しく対象とされてしまう。

この街の治安を守る、集団。

部隊は全員が上下黒の軍服。

左腕に【執行部】と書かれた腕章をつけ、

帽子を被り、白い手袋を身につけている。

そんな【執行部】とこの街にはいくつもの

噂話が出ている。

[連行された人達は生きて戻ってきたことがない]

[この街の地下には、処罰された人達の亡骸が埋められている]

[連行された人達は、新薬の実験にされている]


はぁ。

と、ため息をつき部屋の窓から外を眺めていた少女は

椅子に座ると報告書に目を戻した。

部屋には机が5つ。

一つは他のよりサイズが大きく、その目の前に

向き合うように4つ並んだ机。

壁際には書類棚が置かれてあり、脇には小さな

給湯室への小部屋へ続いている。

「お疲れですね、隊長。」

その少女のそばに、1人の女性が近づき

「どうぞ、コーヒーです。」

と、マグカップを机の上に置いた。

「疲れもするだろう。見てみろ、カナメ。」

机の束になっている報告書をチラリ見て、

持ってきたコーヒーを一口飲んだ。

カナメと呼ばれた女性は視線の先の書類束を見て、

あはは、と愛想笑いを返す。

少女より高い背丈、茶色に染めた短い髪。

右側の髪を月の形をしたヘアピンで留め

片耳を出している。

少女より大人のような雰囲気だが、

表情には若干幼さが見える。

「なんなんだ、この報告書は。

私はこんな噂話まで報告しろとは言っていないが?

ヨシキ?」

ドアの入り口脇に立っている1人の男へ視線を向けた。

「一応、全て報告した方が良いかと。

最近はSNSにも書き込まれていますので」

ヨシキと言われた男は直立不動のまま、

少女へ怯えたように答えた。

背丈はカナメと同じくらい。

ほんのり金髪かかった短めの髪。身体も細く、

まだまだ鍛え足りない感じではある。

顔はカナメ同様、幼さを残しているが、

目には強い意志が感じられるほど、

しっかりと少女を見返している。

「そうは言っても、限度はあるだろう。」

呆れたように少女は報告書を机に置き、立ち上がる。小さな身体に長い黒髪がサラリと揺れる。

カナメやヨシキよりさらに幼く見えるものの、

立ち振る舞いはどこか大人気である。

整った顔立ちではあるが、切目のせいか、

初対面だと冷酷な印象を持たれやすいようで、

自分の目と身体に関してはコンプレックスを

抱いていた。

「これでは猟奇殺人集団のようではないか。」

はぁ、とまた一つため息をついた時、

トントン、とドアを叩く音とともに、ガチャ、

と開き、1人の女性が中に飛び込んできた。

「お疲れさまですー!たいちょー!」

と、少女に駆け寄り抱きつく女性。

「相変わらず、鬱陶しい!離れろ!」

少女に言われるが、

抱きしめている力が弱まることはない。

「んー。可愛いですー、たいちょー。」

といい、スリスリと頬を擦り付ける。

女性は170近くあり、少女より背が高い。

抱きしめられる少女の頭は丁度女性の胸あたりに

ぶつかる格好となっていた。

そこには少女には無い、望むべく大きな二つの山。

髪は長いが団子のように片側で一つにまとめてる。

クルリとした大きな目で、少女を覗き込む。

「いい加減、離れろ。マユミ!

これ以上は痛い目を見るぞ!」

少女の言葉に、ビクっとして、

マユミは抱きつくのをやめて、少し離れた。

「ははは、嫌ですよー。メグミたいちょー。

そんな事言わないでくださいよー。」

ポユン、と二つの膨らみを揺らしながら

マユミは戯けた。

「部下の可愛い、挨拶じゃないですかー」

「貴様のは挨拶ではない!ただの嫌がらせだ!」

と、マユミの山を指差して叫んだ。

「隊長はそのままで、十分にステキです!」

カナメがフォローするが、そこにも山。

メグミには無いものが付いている。

チッ、と軽く舌打ちすると恨めしそうに

マユミを睨み返し尋ねた。

「何用だ。

わざわざ戯れる為にここに来たわけでも無かろう。」

「そうでしたー。」

両手をパンっと胸の前で一つ叩き、マユミは続けた。

「タクロウさんから、連絡がありましたー。」

「タクロウから?」

部屋に緊張が走る。

「はいー。今しがた街へ入る対象が数名あり、

至急出発の準備を、と伝えて欲しいとの事ですー。」

「ほう。」

マユミの連絡に、メグミの目付きが一瞬鋭くなった。

「未だ、違反者が絶えぬな。この街は。」

と、壁際にかけてある帽子へ手を伸ばし、

深く被りながら、ニヤリと笑う。

「さて、戯れ合うのもこの辺りとして、諸君!

楽しいお仕事の時間だ。」


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