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条例都市  作者: こころ
13/45

自転車乗り

「二つの条例違反を確認。」

少女の言葉にアカネは一つは思いあたる事があった。

道路工事中の場所の走行だ。

自転車は軽車両扱い。

走行時は車と同じ車道を走らないといけない。

あの時砂利道を避けて反対側へ渡り走った。

それが逆走している、と判断されたのだろう。

そうだとしてもあの辺り4人以外誰もいなかった。

少なくともアカネ達はそう思っていた。

ミノルも同じ事を考えていたようだ。

少女へ弁明を始める。

「確かに一部逆走をしたかもしれない。

しかし、道路の状況から致し方ない事だった。

それを連行する、は横暴すぎじゃないか!」

ミズキはカズキの後ろに隠れるようにしながら

うんうん、と相槌を打っている。

カズキは周りを警戒していた。

周りには既に目の前の少女と同じ格好の数名、

立っており、逃げ出せない状況になっていた。

その異様な光景に4人に緊張が走る。


「それに、二つと言ったな?

仮に逆走が違反の一つとして、

他は何もしてないぞ。」

ミノルが反論する。

アカネももう一つの違反が思いつかない。


「道路の状況が悪かったから、仕方ない、か。」

少女の眼光が一段と強くなった気がした。

「危険と判断できたのなら、降りて歩けば良い。が」

一歩ミノルの前に出る。

「この街では、軽車両による道路上での追い抜きを

禁じている。」

淡々と語る少女に、1台の自転車を追い抜いた事を

思い出した。

「いや、あれは・・・・」

言いかけるミノルの言葉を遮るように、

少女が冷たく問う。

「あれも致し方ない、と?」

「貴方達の反論など意味も無い。」

「条例に違反した者は誰であれ、

如何なる理由であれ、連行する。」

言い終わると、その場から立ち去ろうとした。

何か、理由をつけて反論しないと。

アカネ、ミノル、カズキは思考を巡らせていた。

その中、ミズキ1人、消沈している。

「ミズキ!大丈夫!?」

アカネのかけた言葉も届いていないようだ。

「何でよ!?」

突然ミズキが叫んだ。

「何なのよ、これ!!」


ミズキの肩が震えている。

恐怖か、怒りか、それとも理不尽さへの反発か。

ミズキが少女へ掴みかかろうとする。

次の瞬間だった。

少女の身体が僅かに動いたように見えた。

確実に、その動きを確認できたわけではない。

ただ、気づけばミズキの身体は宙を舞っていた。

「えっ?」

ミズキ自身も何が起きたか理解できていない。

そのまま地面へ叩きつけられる――

かと思われた。

少女は途中でミズキの腕を掴み直し、

勢いだけを殺す。

ドン、と尻餅をつく形で地面へ落とされた。

「いったぁーい!!」

叫ぶミズキにアカネは駆け寄る。

「大丈夫!?」

ミズキに手を差し伸べる。

「抵抗は無意味だ。」

振り向きもせず、少女は続ける。

「次は手加減しない。」

「ま、待って!」

アカネは叫んだ。

だが、少女は振り返らない。

黒い髪だけが風に揺れた。

「連行しろ。」

冷たい声だけ残して、その場から立ち去っていった。



黒い軍服を纏った少女は振り返らない。

彼女にとって連行は日常だった。

喫煙者も。

低速運転の男も。

バイク乗りも。

そして今回の4人も。

全て同じ。

ただの条例違反者。

少女は振り返らない。

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