自転車乗り
街の中を4台の自転車が走り抜けて行く。
先頭をミノル、後をアカネ、ミズキ、カズキが
キレイな列をなし、走っていた。
「道はキレイだし、走りやすい。」
アカネの率直な感想だった。
他の3人もそれを感じていただろう。
しばらく走ると前方を走る1台の自転車に捕まった。
ミノルは後ろへ手信号を送り、後方を確認する。
安全を確かめると、前を走る自転車を追い抜いた。
アカネ達も続く。
天候に恵まれたせいか、
今日はいつもより走れる感じだ。
少なからずテンションが上がっていた。
あと数キロほどで目的の山の入り口というところで、
ミノルが止まった。
道路工事だろうか。
進行方向が砂利で埋め尽くされており、
真っ直ぐに進めない状況だった。
「ありゃーこれは進めないねぇ。」
ミズキが後から様子を見て、
「反対側なら舗装されているし、
走れそうじゃない?」
と、舗装された側を指差して3人に尋ねた。
「でも、反対だと進行方向と逆走にならない?」
アカネは心配そうに、同意を求めるが、
「でもここしか行ける道はないぞ。」
ミノルはミズキの提案に乗り気だった。
「うーん、確かに。」
ミノルの言う通り、目的の[杉山]の入り口は
この道を進むしかない。
だからといって目の前の砂利道を進むなんて、
無謀な挑戦だ。
タイヤはパンクするかもしれないし、
最悪落車して大怪我するかもしれない。
悩んでいるアカネをよそに、ミノルとミズキは
反対側へ渡ってしまっていた。
後ろのカズキも
「車も来ないし、短い距離だ。
反対側から行ってしまおう。」
と、言い2人に続く。
アカネも仕方なく後に続いて、走り始めた。
距離にして数百メートルほど反対車線を走る。
対向車が来ないことを確認しながら進み、
砂利道を抜けたところで元の車線へ戻った。
その後無事に山の入り口に着いた4人は、
本格的に山道へ入る前に、道路脇のスペースに
自転車を停めて、一息入れた。
「ここから先が[杉山]だ。」
ミノルも息を整えながら、山頂を見据えた。
「距離にしたら5キロほどだけど。
結構激坂だから、ここからはマイペースでいこう。」
これから来るであろう疲労に対抗すべく、
入念に柔軟をしている3人に向かってそう告げた。
「OK!」
「了解。」
「はいよー」
各々、登る準備を始める。
「さて。じゃぁお先に。」
と、アカネがペダルを踏見込む。
その瞬間だった。
視界の端で黒い影が動いた
「わわっ!」
間一髪。
片足だけしかクリートが付いてなかったのもあり、
ぶつかることなく、また転ぶ事もなく、
アカネは停まる事ができた。
「危なかったー。」
黒い影の正体を確認したアカネは息を呑んだ。
目の前には上下黒の軍服姿で帽子を深く被った、
白い手袋の格好をした女の子が立っていたからだ。
「アカネ、大丈夫?」
3人もアカネに近づき、目の前の1人の少女を見て
同じように驚いていた。
「申し訳ない。」
少女はそう言った。
「貴方達をこれから連行させてもらう。」
帽子の下から黒髪が流れている。
切れ長の目だけが冷たく4人を見ている。
少女は感情のない声で続ける
「我々【執行部】に従ってもらう。」
少女の言葉に4人は耳を疑って、
お互いに顔を見合せた。
噂話で聞いた事がある。
法律とは別に条例を掲げた街がある。
その街には違反した者を処罰する部隊、
【執行部】が存在する。
ただの噂話だと思っていた。
だか、目の前の少女は確かに【執行部】と。
4人には信じられないといった状態で固まっていた。




