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条例都市  作者: こころ
11/45

自転車乗り

「アカネ、何怒ってるの?」

ショートカットのミズキがペットボトルを手に

店内に入ってきたアカネの方に振り向く。

専用のシューズの足音がカツカツ、

と店内に音が響き渡る。

頭にはサングラスをのせている。

「んー、ちょっとねー。」

と、アカネは言いながらドリンクを選びながら、

「ミズキなら、言わなくてもわかるんじゃない?」

と答えた。

「さっきのバイクでしょ。」

ミズキはそう言って、笑った。

「相変わらず、アカネはバイク嫌いなんだな!」

と、ミズキの後ろから男が顔を出す。

2人より背が高い。

日焼けの黒い顔から白い歯を見せて笑う。

ミズキ同様、サングラスを黒い短髪の頭に

のせている。

「カズキはバイクも乗っているもんね。」

「別に嫌いって訳じゃないけど、、」

アカネの言葉に、カズキと呼ばれた男は

「わかっているよ」と、答えた。

「俺もバイクも乗るけど、アレはやり過ぎだな。」

と、先程走り去って行った騒音のバイクを思い出す。

「でしょ、五月蝿いし、煙いし!」

カズキに同調するようにアカネは続けた。

「さっきのタバコ吸っていた男もそうだけど、

あんなの公害でしかないよ。」

と、買う物を決めてレジへ向かう。

「公害って笑」

ミズキとカズキは顔を見合わせて、笑った。

「ひどいねぇ。」

レジを終えていた別の男が笑いながら

3人のそばへ近づいてきた。

カズキと同じくらいの背丈だが、

こちらは細身だった。

鍛えられてはいるが、無駄な肉がない。

決してカズキが太っているという事でもないが。

「ミノル、それだけ?」

アカネに言われ、

「カズキほど食べないよ。」

と、笑いながら先に店から出ていく。

「確かにカズキは食べすぎ?」

アカネとミズキもそれには同意して笑った。

「ひどいな、3人とも。」

カズキも笑いながら、続いて店を出た。

アカネとミズキも買い物を済ませて、店を出ていく。


今日はすごく天気もいい。

これから向かおうとしている方角を見ながら

アカネは心踊っていた。こんな日は自転車に限る。

日頃のストレスも汗と一緒に吹き流してくれる。

そんな自転車がアカネは好きになり、

のめり込んでいた。

「目的の[杉山]まで、あと10キロくらいかな。」

ミノルの言葉に、ミズキは少しテンションが下る。

「まだ、そんなに走るの?」

落胆したミズキにカズキは追い討ちをかけるように

「走った後は楽しい山登りだぜ。」

と、ニカっと笑った。

うへぇ、と嘆くミズキ。

たいしてアカネはどこか嬉しそうだ。

「大丈夫、大丈夫。行けるって。」

と、ミズキのコシをパシっと叩き、喝を入れた。

「アカネみたいな山登り好きにはわからないよ。」

ミズキは叩かれた腰をさする。

「さて、そろそろ出発しようか。」

ミノルは言いながら、3人に振り返り、

「この先、十分に気をつけて走ろう。」

と、声をかける。

この先、橋を越え市内を抜けると目的の

[杉山]と呼ばれる山道に入る。


目指す[杉山]は人気のコースだった。

景色も良い。

道も走りやすい。

だから休日には多くのサイクリストが集まる。

──もっとも、最近は違った理由でも

名前が知られていたが。


「大丈夫だって。噂話くらいは知っているし。

私も気をつけるわ。」

とアカネは言いながら、ミノルについて行く。

「アレ、噂でしょ。ホントかどうかもわからない。」

ミズキの不安そうな声が後から聞こえる。

「それでも用心にこしたことはないさ。」

ミズキの後ろからカズキの声が飛ぶ。

4台の自転車は直列で走り、

橋を越えて街へと入って行った。


杉山へ向かう道は快晴だった。

だからだろうか。

彼らはまだ、

自分達に降りかかるものに気づいていなかった。



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