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第9話:しずかな足音
トコトコ。トコトコ。
二人が歩く後ろで、もうひとつ、小さな足音が聞こえました。
「ねえ、くう。いま、誰かいた?」
「わかんない。でも、風が『大好きだよ』って言った気がするよぉ」
二人が振り返ると、そこには誰もいません。
ただ、そこには二人が忘れてしまったはずのマフラーの結び目を、もっと暖かくなるように直してくれた「銀色の髪の女の子」の、指先の残り香が漂っていました。
「ふふふ。気のせいかなぁ」
「気のせいだねぇ」
二人はまた前を向いて歩き出します。
影から見守る彼女が、泣きながら二人の背中を見つめていることなんて、もう一欠片も思い出せないままでした。




