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第8話:さよなら、パンの味
パンを食べてから数分後。二人の前に、空中に浮く「見えない階段」が現れました。
『上へ行きたければ、汝がいま持っている、一番新しい「満足」を差し出せ』
「あ、これ。またお支払いのやつだねっ」
ぽこは、迷うことなく階段に手を置きました。
「ねえ、ぽこ。いいの?」
くうが階段の手前で立ち止まり、ぽこの袖をぎゅっと引きました。
「うん。でもね、くう。階段の先には、もっとキラキラしたものが待ってるかもしれないよ? それに、パンはもうお腹の中に入ったから、大丈夫だよ」
ぽこが目を閉じると、さっき覚えたばかりの「パンのおいしさ」が、キラキラした湯気になって吸い込まれていきました。
「……あ。いまね、頭の中が『ふわっ』てしたよぉ!」
二人は、「おいしい」が何だったか分からなくなってしまいました。
それでも、ぽこに手を引かれ、くうは空っぽになった心で階段を登り始めました。




