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第79話:お支払いは「すべて」


二人の前に、最後の「出口」が開きました。そこは、新しい世界へとエネルギーを還すための、真っ白な虚無の穴でした。


『通行料:汝らが今持っている、最後の一片の「自己」を捧げよ。さすれば、世界は再び、新しい朝を迎えるだろう』


「あ、これ。最後のお供えだねっ」


ぽこは、穏やかに笑いました。


「……ねえ、ぽこ。本当に、いいの?」


くうが、泣きじゃくる女の子を見つめながら、最後に一度だけ問いかけました。


「せっかく思い出したんだよ? 僕たちの名前も、この子が僕たちをこんなに愛してくれたことも……。これを捨てちゃったら、僕たちはもう、僕たちじゃなくなっちゃうんだよ?」


「いいんだよ、くう。だって、僕、なんだか、とっても『自由』になりたい気分なんだもん。この重たい名前も記憶も全部あげちゃえば、僕たちは本当の『風』になれる。それにね、くう。僕たちが僕たちじゃなくなっても、また明日、この子と『はじめまして』って言えるなら……それって、とってもワクワクしない?」


ぽこが目を閉じると、さっき獲得したばかりの「本当の名前」も「罪」も「彼女への愛」も、すべてが真っ白な光に変換され、出口へと吸い込まれていきました。


「……あ。いまね、全身が『ふわっ』てしたよぉ!」


二人の体から、最後の重みが抜け、世界へと還元されていきました。二人は、自分が誰だったのか、目の前で泣いている子が誰なのか、完全に、永遠に、忘れ去りました。


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