第80話:はじめましての、あした
まほうの泉から、ぽこん、と二つの泡がはじけました。
「……ふぁ。よく寝たねぇ」
「うん。……ねえ、キミ、だれ?」
白い毛並みの「ぽこ」と、青い帽子の「くう」が顔を見合わせました。
彼らの背後には、動かなくなった黄金の機械がそびえ、足元には、一冊のぼろぼろになった「手記」が落ちていました。
「わかんない。でも、キミ、とってもいい匂いがするよ」
「ふふふ。キミもだよ。お日様の匂いだねぇ」
二人は、その手記を「面白い模様の石ころ」だと思って、大切にポシェットにしまいました。
そこへ、一人の銀色の髪の女の子が、少し疲れたような、でも晴れやかな笑顔で歩いてきました。
「ねえ、くう。あの子、だれだろう。……迷子かなぁ」
「わかんない! でも、なんだか胸が『きゅん』とするから、一緒に遊ぼうよって言ってみようよ」
二人は女の子に駆け寄り、声を合わせました。
「「ねえ、はじめまして! いっしょに冒険、いかない?」」
女の子は一瞬だけ、泣きそうな顔をして、それから世界で一番優しい声で答えました。
「……ええ。はじめまして。行きましょう、どこまでも」
二人は手を繋ぎ、女の子を真ん中にして、トコトコと歩きだしました。
どこへ向かうのか、どうして歩くのか。そんなことは、もうどうでもいいことでした。
「ねえ、ぽこ」
「なに? くう」
「ふふふ。……なんでもない」
「ふふふ。なあんだ」
三人の影は、新しく生まれ変わった眩しい太陽の光の中に、ゆっくりと溶けていきました。
(完)




